62章 摂取カロリーの差
7人は高級寿司店をあとにする。
シノブ、マイ、ナナ、ホノカは、うどん、てんぷら、かっぱ巻き、かんぴょう巻きなどを食べていた。予算の関係上、魚のネタを注文することはほとんどなかった。
アオイ、ツカサはトロ1貫+かんぴょう巻きだった。おなかを満たすために、炭水化物をたっぷりととれるメニューを追加注文する。
「寿司屋に入ったのに、うどん屋にいた気分だね」
ナナはうどん中心だったことに、納得できていない。彼女のプランでは、サーモン、マグロなどを食べるつもりだったと思われる。
「次に寿司屋に行くときは、お手頃なところに行きたいね」
マイはこっくりとうなずいた。
「そうだね。次は寿司をたくさん食べたいね」
寿司屋は寿司を食べる場所であり、うどんを食べる場所ではない。
「うどんはとってもおいしかったよ」
マイは持ち味のポジティブ思考で、プラスにとらえていた。
「うん。うどん専門店よりも、よかったんじゃないかな」
ホノカもうどんに対して、高評価をしていた。
「てんぷらが入ることによって、うどんの味が引き立っていた」
シノブもうどんに、プラスの評価をした。
「財布がトホホだよ・・・・・・」
アオイはトロを食べたことで、40ペソを失った。最高級の食材には、強烈な棘があるようだ。
「トロ一貫を食べただけで、お金のほとんどが吹き飛んだ」
ツカサも最高級食材の餌食となった。
「給料をもらうまでは、塩雑炊生活が続きそうだよ」
給料をもらうまでは、10日間くらいある。それまでの間、白米、塩、水だけの生活を送ることになる。
「シノブちゃん、給料アップしてね」
焼きそば店は大繁盛で、たくさんの客でにぎわっている。あれだけの人数なら、大量の利益が上がっていると思われる。
「ツカサさん、善処しますね」
善処するというのは、最初からやるつもりのない人の発言だ。今回については、給料アップは見込めそうになかった。
シノブは話題を寿司屋に戻す。
「ミサキさんは、寿司屋でしっかりと食べましたね」
「しっかりと食べておかないと、すぐにエネルギー不足になるから」
ミサキはてんぷらうどん5杯、トロ、マグロ、ウナギ、サーモンなどを食べる。大量のカロリーを摂取しておくことで、空腹を防ぐのを狙いとしている。
「ミサキさん、トロ、マグロはどうだった?」
マイからの質問に対して、
「とってもよかったよ」
と答えた。値段に恥じない一品だったのは、れっきとした事実である。
アオイ、ツカサはおなかを抑えていた。トロ、かんぴょう巻きだけでは、おなかを満たすのは難しいようだ。
「アオイさん、ツカサさん、おにぎりを食べる?」
おにぎりの残数は30個ほど。旅行をするにあたって、十分な残数を確保している。
「ミサキさん、ありがとう」
アオイはおにぎりを受け取ると、勢いよく食べ進める。ミサキはその姿を見て、意地汚いと思ってしまった。
「ミサキさんに感謝だね」
ツカサはおにぎりを受け取ると、ゆっくりと食べ進めていく。おっちょこちょいの性格とは、イメージがかけ離れていた。
1個目のおにぎりを食べ終えた2人に、2つ目のおにぎりを渡そうと思った。
「もう1個食べる?」
アオイは右手で静止のポーズをとった。
「これくらい食べておけば、夜までは十分に持ちそうだよ」
ツカサも同じだった。
「私も1個でOKだよ」
おにぎり1個食べるだけで、夜までもたせることができる。1日20000キロカロリー少女にとっては、うらやましい光景だった。