278章 孤独に強い? 孤独に弱い?
夕食の準備をしていると、扉をノックされる音がする。
マツリかなと思っていると、予想していなかった人物が立っていた。
「カスミン、どうかしたの?」
カスミはいつにもなく、どんよりとした顔をしている。パワフル、ポジティブをモットーにしていただけに、意外な一面を見た気がする。
「家庭内の寂しさを紛らわせるために、アカネさんの家を訪ねました」
カスミは長女、次女がいる、三人で生活を送れば、寂しさを吹き飛ばすことができる。
「カスミンには、二人の子供がいるんだよね。二人と一緒に生活していないの?」
カスミは軽く瞬きをする。
「長女は結婚相手に住んでいます。次女は交際相手のところに、身を置いています」
長女だけでなく、次女も相手のところで生活する。男性方の家に嫁いでいくのは、現実世界との共通項である。
カスミは胸に手を当てた。
「ぼっちで生活をしていると、強烈な孤独を感じることがあります。あまりの寂しさに、涙を流すこともあるくらいです」
人間には孤独に強い人、孤独に弱い人がいる。カスミは後者のようだ。
アカネは一人生活が長いからか、孤独を苦にしないタイプである。魔物退治のときは、1年にわたって、誰とも顔を合せなかった。
「カスミン、今日は泊っていく?」
「アカネさん、宿泊してもいいんですか?」
「うん、いいよ」
「アカネさん、ありがとうございます」
テオスのために準備した、「セカンド牛+++++」が大量に余っている。カスミには、こちらを提供しようと思った。
「カスミン、おなかはすいている?」
カスミはおなかに手を当てる。
「ばっちりと食べてきたので、満腹に近い状態です」
飴、バナナ生活を送っていた住民が、ご飯を満足に食べるようになった。住民の生活水準、確実に向上している。
「ご飯を食べられるようになっても、バナナをきっちりと食べています。これがなくなると、食
事をしている気になりません」
裕福になっても、バナナに愛着を持ち続ける。「セカンドライフの街」では、バナナ愛が根付いているのかもしれない。
満腹に近いといった女性は、フライパンに視線を送る。
「アカネさんは、何を食べるつもりですか?」
『幻といわれている、「セカンド牛+++++」だよ』
「セカンド牛+++++」であることを知ると、瞳がキラキラとしていた。
「カスミンも食べてみる?」
「食べたいです」
「カスミン、おなかは問題ないの?」
「たくさんは無理ですけど、ちょっとくらいなら食べられると思います」
カスミが食べられなかった場合は、残り全部を食べればいい。無尽蔵の胃袋ゆえに、好きなだけ食べることができる。
「カスミン、最高級の肉を準備するね」
カスミは瞳を輝かせていた。
「とっても楽しみです」
アカネは肉を焼くために、フライパンのある所に向かった。