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300 そういえば?

結局、麦茶を水筒ごと奪われたニャーニャにゃん。ただいま泣いてます。マジ泣きです。

『にゃいにゃ……ニャーニャの麦茶、一滴もにゃいにゃ』
うっうっうっ
『ニャーニャ、元気を出してくださいませ。(あとで私の分を分けてさしあげますわ。今は出せませんけれど)』
後半はコソッと伝えるアイナ様。バレたら、きっとこちらも奪われる⋯

そして今、奪われたボトルはドワーフ夫婦により分解の危機にあった⋯

『すごいね。これ。冷たいままだなんて』
上を下に覗きまくり触りまくるドワーフご夫妻。

『う~む。どうもここが二重になってそうだな。ここに水を入れて凍らせたのか?ちょっくら割ってみるか』
これはまずい!

『わ~!ダメにゃ!これはゲンさんがニャーニャの為に作ってくれた水筒にゃ!おいしい麦茶を冷たいまま飲めるようにしてくれた特別なものにゃ!返してにゃ~!』
ばっ!と奪い返すニャーニャにゃん。肩でゼーゼー息してます。涙でお顔はぼろぼろにゃん。

『『あっ!』』

『あっ!じゃないにゃ!』
ニャーニャにゃん、水筒を抱きしめて死守!

『ちっ!仕方ねえな』
『そうだね。作った本人に問い詰めよう』
言ってることが物騒です。

『ん?そういやチビちゃんはどうしたんだい?一緒じゃないのかい?』
『あっ、そうだよ。俺に相談もあるって言ってたな。なんだ?』
今になってやっと思い出したようです。

『その事なのですが、実は…』
『あの子はここへは戻って来れないにゃ』
申し訳なさそうに話すアイナ様たちに

『な、なんでだい?何かあったのかい?』
『無事なのか?』
ガタッ!ドンッ!と二人テーブルを壊さんばかりにアイナ様たちに詰め寄るおふたり。

『落ち着いて下さいませ。あの子は無事ですわ。というより』
『大丈夫になったって言うべきかにゃ?』
困ったように言う二人に

『いったいどういうことだい?』
『大丈夫になったって言うのは?』
少し冷静になり、座り直した親方夫婦

『実は…』
アイナ様とニャーニャが聖域で分かったこと、起こったことを説明する。

『そうだったのかい』
『まさか生まれつきの病気だったとはなぁ』
は~とため息をつきながら親方夫婦が続ける。

『それで、もう大丈夫なんだね?』
『間違いないんだな?』
みんながココロを可愛がり心配していたのだ。

『ええ。サーヤちゃんのおかげですわ』
『病気を見つけてくれたジーニ様とゲンさんのおかげでもあるにゃ』
『そうですわね』
『今は、サーヤちゃんたちと仲良く遊びまくってるにゃよ』
『もう、突然倒れて眠ることもありませんわ。ただ、サーヤちゃんと契約することで治ったので』
『しばらくはサーヤちゃんの傍から離すのはやめた方がいいだろうってジーニ様がおっしゃってるにゃ』
『皆さんにろくにお話もご挨拶も出来ずに申し訳ありませんでしたが』
『ココロも泣いてたにゃ』

アイナ様とニャーニャにゃんも、ココロと仲の良かった人たちを引き離すようなことになってしまったことを、申し訳なく思っていた。

『気にする事はないよ。命に関わることだったんだ。みんな分かってくれるよ。もちろん、寂しい気持ちはあるけどね』
『そうだ。命より大事なもんはねえさ。みんなも助かったと知ったら喜ぶさ。きっとな』

親方夫婦は申し訳なさそうにしているアイナ様たちに伝える。その顔はとても優しいものだった。

『ありがとうございますですわ』
『ありがとうにゃ』
親方夫婦の優しい言葉は、ありがたくも嬉しい言葉だった。

『そうだ。チビ…今はココロだったな。ココロが無事なのはよかったが、相談てのはなんだ?』
いよいよ本題だ。アイナ様とニャーニャにゃんに緊張が走る。

『実は、ココロが仲良くなった子たちの中にモール属の上位種の子がいたのですが、親方たちと別れるのが寂しくて泣いていたココロに言ってくれたのです』
『すごいドワーフの中には気に入った土地に自由に道をつなげる人がいるって聞いたことがある。地の精霊王様の土地の長となれば、ドワーフ属の長なんじゃないかってにゃ』
『だから、寂しがらなくても案外早く会えるかもしれない。と、あやしてくださったのですわ』
そこまで話し、一度様子を伺ってみるアイナ様たち

『ふん。中々見所のある奴じゃねぇか。ドワーフロードのことを知っているのも大したもんだが、会ったこともない俺が長だと見抜くとは大したもんだ。どんなジジィだ?』

ジジィ?
『『……』』
ジジィ、ぽぽちゃんが…じじぃ
『『ぐふっ』』
『あははははは』
『にゃははははははは』
あんなに可愛いぽぽちゃんが、ジジィ!

『な、なんだ?』
『それだけの知識があるんだ、じぃさんじゃないのかい?』
突然笑いだしたアイナ様たちに戸惑う親方夫婦。

『あはは……ふぅふぅ』
『あ~おかしいにゃ』
おかしすぎて涙が止まらないアイナ様たち。

『な、何だってんだよ?』
『何がおかしいってんだい?』
あまりに笑われてちょっとムッとする親方たち

『はぁ~、も、申し訳ありませんですわ。ぽぽちゃんは、そのモール属の子は』
『まだ八歳のちびっ子にゃ~』
言いながらもまだ笑いが治まらないアイナ様たち

『八歳!?』
『まだ赤んぼも同然じゃないかい!』
びっくりする親方夫婦。

『ぽぽちゃん、たんぽぽちゃんと名付けられたのですが、みんな、ぽぽちゃんと呼んでますわ。まだ八歳ですけど、すごくしっかりしたお兄ちゃんなのですわよ』
『三歳と二歳の弟と妹のいいお兄ちゃんにゃ!体の色のことで仲間外れにされてたんだけどにゃ、優しい心を持ち続けた強い子なんだにゃ~』
『きっと親方たちも気に入りますわよ』
『絶対にゃ!つくしちゃんと、なずなちゃんもいい子たちにゃ!』

ぽぽちゃんの素晴らしさを伝えるアイナ様たち。使命も忘れて嬉しそうに話します。

『そうかそうか。見所のある若造なんだな』
『仲間はずれだなんて、酷いことを⋯頑張ったんだね』
うんうんと腕を組んで頷く親方たち。すでに気に入り始めてるようだ。

『だが、ドワーフロードは確かに使えるが、あくまで気に入るかどうかだ。俺たちはいい石がないとこには行かねぇよ』
予想通りの言葉が返ってきた。

アイナ様とニャーニャにゃんが見つめ合って決意を新たにする。

『親方、これを』ことっ
アイナ様が小さい石をテーブルに置く。

『ん?なんだ?』
何気なくその石を手にした親方は
『な!?こりゃ!?』
驚いてアイナ様とニャーニャにゃんを見る親方。目が開ききってすごいことに。

『そう。ミスリルですわ。しかも…』くっ
親方を直視出来ず、横を向くアイナ様

『な、なんだよ?』
『なんなんだい?』
訳が分からない親方夫婦。

『しかも、それ、聖域にコロコロ転がってた小石にゃ』くっ
同じく目をそらすニャーニャにゃん。

『『は?』』
何言ってんだ?って心の声が……

『ですから、それは』くっ
『落ちてたのを拾っただけにゃ』くっ

『『はああああああ!?』』
顎が外れんばかりに驚き叫ぶ親方夫婦。あぁ⋯⋯

そうですよね。そうなりますわよね。毎回、苦労なさって鉱石を集めていることを知っているだけに、なんだか、とてつもなく申し訳ないですわぁ。くうっ!

ニャーニャもにゃぁ。くうっ!

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