45章 乗車
ミサキ、マイはみんなのいるところに合流する。
「みんな、お待たせ」
「ミサキさん、空腹は解消された?」
シノブの質問に、笑顔で答える。
「うん。おにぎり10個、ポテトチップスを食べてきたよ」
ナナは食べ物の量に、驚きを隠しきれていなかった。
「ミサキさんの胃袋はすさまじいね」
「これくらい食べても、2~3時間くらいでおなかがすきそう」
摂取カロリーからすると、3時間以上持つことはない。3時間後には、大量のおにぎり、から揚げを食べることになりそうだ。
体内脂肪の少なさゆえに、食いだめはできない。こまめに食事をとる必要がある。
ツカサは唐突に、おなかを触ってきた。予想していない行動だったので、頭が真っ白になってしまった。
「おにぎり10個を食べたばかりなのに、おなかは膨らんでいないね」
アオイがおなかの肉をつまもうとする。圧が強いのか、ちょっとした痛みを感じる。
「本当だ。脂肪分はどこにあるの」
妖精によって、脂肪分、糖分の吸収を抑えられている。余計な成分を取らないことで、理想の体の維持につなげる。
「ツカサさん、アオイさん、許可なくおなかに触らないで」
アオイ、ツカサはスキンシップが好きで、ちょくちょく手を出してくる。嫌いではないものの、一声かけてからにしてほしい。
「ホノカも触ってみようよ?」
慎重をモットーとする女性は、たじたじになっていた。
「ミサキさんに悪いよ」
アオイ、ツカサにその精神を持っていてほしかった。同性であっても、無秩序に触るのはいただけない。
「ミサキさんのおなかに触れると、心がとっても癒されるよ」
触っているほうは癒されても、触られているほうは癒されていない。その部分をしっかりと理解してほしいところ。
ホノカはおなかをじっと見つめている。口では悪いといったものの、触りたいという気持ちがあるようだ。
「ホノカさん、少しだけなら触っていいよ」
「ありがとうございます。おなかに失礼します・・・・・・」
ホノカの掌が触れると、くすぐったさよりも温もりを感じる。
「ミサキさんの温かさが伝わってくる」
「ホノカさんの手もとっても温かいよ」
「ありがとう・・・・・・」
女性同士でじゃれあっていると、小学校低学年を思い出す。スキンシップと称して、いろいろなところをくすぐりあっていた。
スキンシップを取っていると、シノブがみんなに声をかける。
「みなさん、普通電車に乗りましょう」
目的地は友達駅。超光特急を使用すれば、30分ほどで到着する。時間を短縮したいときは、超光特急一択だ。
普通電車を利用するのは、座る座席を確保するため。超光特急は指定席を除いて、着席するのは不可能である。ゆったりとした旅を過ごしたいときには、他を利用したほうが無難だ。
電車に乗ろうとしていると、ハプニングが起こった。
「切符がない。さっきはあったはずなのに」
シノブから切符の代金を受け取り、1枚ずつを購入することになっている。
「アオイさん、切符をなくしたら自腹だよ」
友達駅までの切符代は、片道で13ペソである。結構な距離を走るからか、電車料金はそれなりの値段がする。
切符を探している女性に、マイから指摘があった。
「アオイさん、ポケットに入れているんじゃないの?」
ポケットに手を入れると、電車の切符が姿を現した。
「あった。マイさんのおかげで助かったよ」
「アオイさん、切符入れ、財布の中に入れたほうがいいよ」
ポケットの中に入れると、紛失のリスクが高まる。見つかりやすい場所で、保管したほうがいい。
「みなさん、電車に乗りましょう」
発車時刻の4分前であるにもかかわらず、電車はすでに停車していた。超光特急、普通の緩急接続をするため、11分にわたって停車する。1つの駅の停車時間にしては、かなり長めである。
友達駅の停車時間はさらに長く、普通列車は18分間停車する。あまりの停車時間の長さから、「渋滞電車」の異名をつけられている。