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35.初めての街でおいしご飯

 外を見ながらどんどん馬車は進んで、最初に寄った場所は、小さな小さな街。それでも僕とルリには始めての街で、馬車から降りた途端に走り出そうとする僕達をスノーラが止めます。それでルリはスノーラの洋服のポケットに、顔だけ出す感じで入って、僕はスノーラがしっかり、僕の洋服の襟の所を掴んで。

『良し、これで良いな』

 いや良くないよ。でもルリは珍しい小鳥、今はまだ隠れていないと。頭くらいなら出していても大丈夫だとは思うけど。僕だけが街の中を歩き回るのはダメ。ルリだって今我慢してるんだからね。

 キョロキョロ周りを見る僕。ポケットの中でルリもキョロキョロ。今日のお昼のご飯はこの街で食べるんだって。騎士さん達も僕達と今一緒にいる人達以外、各自自由にお昼ご飯です。

 あっ、街の建物はみんな木やレンガでできていました。大きさも色々ね。4階建くらいの建物があったり、とっても小さい建物も。家が半分に割れているような建物もあって、そういう建物は物を売っているところが多かったです。もちろん普通のお店もあったけど。
 でも、僕が見たことのない物ばかり。やっぱりここは地球とは違うんだって、改めて思いました。

「今日はここで食事だ。ここは私が調査に出たときに、良くよるお店なんだ。ここならルリをポケットから出して、一緒に食事ができる個室があるからな」

『ルリ、出られる?』

「ああ。ルリ用の、魔獣用のご飯もあるからな」

『やった! ルリのご飯!!』

 良かったねルリ。お店に入るとすぐに、ちょっと太ってるおばさんが寄ってきて、ローレンスさん達を見ると、2階の部屋に案内してくれました。ローレンスさんが言っていた通り個室で、でも8人は座れるくらいの個室です。
 順番に椅子に座ったら、おばさんが大きな縦長の椅子を持ってきてくれて、僕はその椅子に。うん、子供用の椅子ね。そしてローレンスさんが何を食べて良いか分からないだろうからって、僕達のご飯を注文してくれました。もちろんルリのご飯もです。

 注文を聞き終えると、部屋から出て行くおばさん。おばさんがいる間にルリはポケットから出たんだけど、おばさんはニコって笑うだけで、何も言わなかったよ。

「彼女は昔冒険者をしていてね。珍しい魔獣にはなれているし、昔はそういう魔獣を保護する活動もしていたんだ。だからルリを見ても驚かないんだよ」

 冒険者!! 冒険者ギルドに続いて冒険者って言葉が。そりゃあ冒険者ギルドがあるんだから、冒険者がいるのは当たり前だけど。でも始めての冒険者さんです。エプロン付けてて、お店の人そのままって感じだったけど。

 料理はそんなに待たずに運ばれてきました。僕の前には大きなお皿に、サンドイッチが1個、小さなハンバーグみたいな物が1個、それからスパゲッティのような物が少し。あとはゼリー?のような物が乗っていて。ハンバーグみたいな物には旗が刺さってたよ。うん! これは完璧なお子様ランチだね。

 ルリは僕の肩に乗っていたんだけど、ルリの前にもお皿が。ステーキが乗ってて、木の実と果物も乗っていました。ステーキには僕と同じ旗が。僕とルリは顔を見合わせてニッコリです。

 スノーラの前には、大きな僕の顔と同じくらいのお肉の塊が、ドンドンドンッ!て、5個並んでいたよ。それからローレンスさん達の前にも同じお肉の塊がドンッ!て1つずつ。あとは僕と同じスープです。僕の顔と同じくらいのお肉、フィオーナさんもアンジェさんも食べられるの? ローレンスさんやケビンさんは食べられるかもしれないけど。

 そう思いながらいただきますをして食べ出す僕達。とっても美味しいご飯でした。ハンバーグもスパゲッティみたいな物も、見たままの物で。始めての食べ物だったけど何も気にすることなく食べる事ができました。それからサンドイッチもパンがふわふわで、具の野菜とハムも美味しかったし。スープの中身はよく分からなかったけど、トマトスープ味で、とっても美味しかったです。

 そしてようやく食べ終わって横を向くと、ローレンスさんとケビンさん、それからスノーラが僕とルリを見ていました。お皿の上にはもう何も残っていなくて。それはフィオーナさんもアンジェさんも同じ。それどころか2人の前には、ケーキらしき物が5個。それを平気な顔してパクパク。あれだけ大きなお肉を食べて、スープまで飲んだのに、まだたべられるの?

 僕もルリも、じっと2人を見ちゃったよ。そんな僕達を見ていたローレンスさん。クスクス笑いながら僕達の方へ。スノーラが浄化するから良いって言ったんだけど、ローレンスさんはやりたいって。何かと思ったら、僕の顔もルリの顔も、タレでベトベト。お化粧したみたいになっちゃってたみたい。ローレンスさんがハンカチで優しく拭いてくれます。

「こんな事をしたのは何年ぶりか。久しぶりでなんだか楽しいね。うちの息子達の小さい頃を思い出すよ」

 ローレンスさん息子がいるんだね。これからローレンスさんのお家に行くけど、僕達大丈夫かな? 何で来たって言われたらどうしよう。ローレンスさんもフィオーナさんもみんな優しいから、大丈夫だよね?

 顔を拭いてもらって少しして、フィオーナさん達がケーキを食べ終わって、僕達は馬車に戻ります。ハンバーグとお肉についてた旗を振りながら。ルリもポケットの中、咥えた旗をフリフリ。
 帰りにおばさんが僕達にクッキーをくれました。馬車の中で食べてねって。クッキーをもらって、またまたニコニコの僕達は、馬車に乗ったらさっそく窓に張り付きます。

 それでね、馬車の所へ戻ってくる騎士さん達を見ていたんだけど、みんな窓の前を通ると笑うんだ。どうしたのかな?ってルリと話していたら、馬車の扉を叩く音が。ローレンスさんが返事をするとスチュアートさんでした。少し困った顔で僕とルリを見てきたスチュアートさん。そして。

「失礼します。レン様、それにルリも、少し窓から離れてもらっても良いですか?」

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