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34.初めてのプレゼント

 そんなこんなで、順調に森の中を進んだ僕達。スノーラやローレンスさん達が考えていたよりも早く、森の中の最後の休憩場所に着きました。森に泊まるのも今日が最後。明日も朝早くから出発して、少しすると大きな道に出るみたいです。その大きな道をずっと進んでいくと、ローレンスさんが暮らしている街に着くんだよ。
 所々に大きな道より少し狭い道があって、そっちは小さい街へ続く道。さらに狭い道は村に向かう道なんだって。
 ローレンスさんの街へは、色々な街で泊まりながら行きます。何日くらいかかるのかな?

「さぁ、明日からは私達以外に、沢山の人や獣人に出会うだろう。驚いてしまうかもしれないが、私達がいるから大丈夫。何か気になる事があったらすぐに聞きなさい」

「具合が悪くなったらすぐに教えてね。馬車で気持ち悪くなる人、けっこういるのよね。変な揺れ方をして」

 僕達は明日からは馬車で移動だからね。今まではスノーラに乗って移動。しかもスノーラは僕達のために、揺れないようにしてくれてたから。始めての馬車がちょっと心配です。外を眺めていれば、初めての物ばっかりだろうから、そっちが気になって、揺れとか気にしないでいけるかもだけど。

 でもあんまり人が多い時は、外は見ない方が良いって、スノーラとローレンスさんがさっきお話しをしていました。この前話してたやつ。目立って大変な事になるかもしれないから。
 騒がれるのは嫌だもんね。珍しい鳥のルリ。今は仮のペンダントはしているけれど、やっぱり僕、まだちょっと心配。だから僕はルリとお話し。ローレンスさん達に外を見ちゃダメって言われたら言うこと聞いて、馬車の中で静かに遊んでようねって。ローレンスさんの街で、自由に行動できるようになると良いなぁ。

「それとだ。森の魔獣達がお別れに来ていたし、私達にも慣れてもらおうと思って出さなかったのだが。これから馬車に乗って、外を見ることができないといけないからな。遅くなってしまったが、私達からプレゼントがあるんだ」

 え? 何々? いきなりどうしたの? スノーラが僕達に並べって言って、僕とルリはローレンスさん達の前にピシッと並びます。

「私からはこれ、絵本よ」

 フィオーナさんが差し出してきた、2冊の絵本を2人で受け取ります。ルリは絵本の端っこを上手に掴んでたよ。本当はもっと色々と持ってきたかったのに、みんなに止められたって、フィオーナさんがブツブツ言ってたよ。僕達は大きな声でありがとうをします。

 ルリがこれなぁに?って聞いてきて、フィオーナさんが絵本の説明をしてくれました。説明を聞いたルリは絵本に興味深々。ローレンスさんからもプレゼントがあるから、スノーラが絵本を持っててくれるって言ったんだけど、なかなか離れようとしませんでした。なんとか絵本から離れると、また2人でピシっと並びます。

「次は私だな。私からはこれだ」

 ローレンスさんが洋服の中から、お友達になったリス魔獣さんそっくりな、ぬいぐるみを出してきました。僕の顔くらいの大きさなぬいぐるみと、ルリよりちょっと大きめのぬいぐるみです。

「お揃いの方が良いかと思ってね」

 わあぁぁぁ!! 可愛いい! そっくり!! みんなとお別れしてちょっと寂しかったから、僕とっても嬉しいよ! ルリもぬいぐるみを貰って、最初どういう物か分かってなかったけど。またまた説明を聞いて、ぬいぐるみを持ったまま、僕達の周りを飛び回ります。

『2人とも、喜んでいないで、もう1度ちゃんとお礼を言え』

「ありがちょ!!」

『ありがとう!!』

 僕達は絵本とぬいぐるみを持って、すぐにテントの中に入りました。

「あんなに喜んでもらえるとは。用意してきて良かった」

「本当に。でもやっぱりこんなに喜んでもらえるのなら、もっと色々持ってくるべきだったんだわ」

「いや、だから、君が用意したあの量のプレゼントを持って来たら、荷馬車が増えて大変だと言っただろう」

 その日は少し絵本を見て、ぬいぐるみで遊んだあと、森での生活を楽しみました。本当は絵本とぬいぐるみも、もっと遊びたかったんだけど、最後の森の日だったからね。ぬいぐるみとかはこれからいっぱい遊べるし。

 そして次の日、いよいよ今日から馬車で移動です。フィオーナさんとスノーラが乗って、僕のことをローレンスさんが抱き上げて乗せてくれて。最後にローレンスさんが乗り込みました。

 馬車の中、とっても綺麗だったよ。椅子はふかふか。クッションも置いてあって、床も絨毯が引いてあるの。カーテンもゴージャス。それに思ったよりも中は広くて、小さい部屋がそのまま馬車になってるみたい。僕は酔わないようにって、進行方向を向いて椅子に座って、隣にスノーラが人型で座りました。

 ローレンスさんが窓から出発するぞって声をかけると、ちょっとだけ揺れて馬車がカタ、ガタって動き始めました。思わずルリと一緒に変な声をあげちゃったよ。

「ににょおぉぉぉ!」

『ぬにょおぉぉぉ!』

『何だその声は、驚いているのか、嬉しいのかどっちなんだ?』

 僕達の顔見てよ。どっちもだよ。

「はは、面白い声だな」

「そういえばあの子達も初めての時、変な喜び方をしていたわね」

「そういえばそうだったな。懐かしいな」

 僕とルリはニコニコです。始めての馬車、話に聞いていたよりもあまり揺れている感じがしません。森の中だからけっこう揺れるかな?って思ったんだけど。あんがい道が整備されてなくて、道の方が揺れたりして。でも今ぐらいだったら大丈夫。

 すぐにローレンスさんが窓を開けてくれて、僕達は最後の森を見ながら進んで行きます。少しして急に木がなくなってきました。そして…。

「さぁ、この細い道を抜けたら、大通りに出るぞ」

 いよいよ大通りに。ローレンスさんが窓を閉めます。もう外見るの終わり? 少ししか進んでいないのに。そう思ってちょっとしょんぼりの僕。ルリもそう思ったみたいで、窓の縁にとまっていたんだけどしょんぼりしてます。

「ふふ、2人とも、そんなにしょんぼりしなくて大丈夫よ。まだ完全に窓を閉めるわけじゃないわ」

 ローレンスさんが窓をガタガタ。そうしたら窓が、木の窓と透明な窓に別れて、透明の窓の方を閉めました。2重窓になってたんだ。僕は窓をちょんと触ってみました。そうしたらガラスと同じ感触。この世界、ちゃんとガラスがあったよ。

 そんな事をしているうちに、馬車はついに大通りに。まだこの辺は人の行き来が少ないから、完全に窓を閉めなくて良いって。道に出たとたん、僕はこの世界にきて初めて、ローレンスさん達以外の、たくさんの人を見る事になりました。
 人だけじゃないよ。まだ見たことのない魔獣さんや、その魔獣さんに乗って移動している人達、荷物を運んでもらっている人達。色々な人達と魔獣さんがいました。

 僕とルリは、窓にペタッと張り付きます。あっちにいる魔獣さんは何て名前の魔獣さんなんだろう? それにあっちの魔獣さんは? あの人が持っている、カッコいい杖は魔法の杖? どんどんスノーラに質問しちゃいます。

『お前達、初めてだらけで騒ぐのは分かるが、今からそれでは、すぐにバテてしまうぞ』

「しゅのー、あのちと、にゃにもっちぇるの?」

『スノーラ、その魔獣、変な洋服着てるよ。何で?』

『はぁ、これは当分止まらないな』

「『ねぇ、しゅのー! スノーラ!!』」

『はぁ…』

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