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33.予定外と想定外(***視点)

「おい…、何で綺麗さっぱり魔法陣が消えているんだ!!」

 騒ぐのはまずいと思いながらも。俺は叫ばずにはいられなかった。

「これは一体どういうことなんだ!! おい、お前!! 奴らと行き違いで確認しにきたんじゃなかったのか!!」

 俺はこの場所へ確認しにきた2人の前に行くと、2人を殴り倒した。倒したと言っても、1人は向こうの木の方まで吹っ飛んだがな。この2人は約1ヶ月前に、俺達のチームに入ったが。それなりに動いていたから、そこまで心配はしていなかった。しかし今の状況。やはりもう1人、ゴザックでも付けるべきだったか?

「おい、奴等を縛り上げろ。後で詳しく話しを聞く」

 タノリーが俺に殴られて気を失っている2人の元へ行き、素早く魔法のかかっている縄で縛り上げる。これで奴らは気がつき逃げようとしても、魔法で縄を切ることはできない。

「リーダー、見てください」

 魔法陣について1番詳しいビケットに呼ばれ、俺は深く深呼吸してビケットの所に。

「魔法陣が発動した形跡があります」

 ビケットによると、一応魔法陣自体はちゃんと発動したようだった。しかも何かがここで魔法陣に捉えられていた感覚も残っているらしい。それが例のあの鳥だったかは分からないが。
 
 しかし何かの力が加わり、魔法陣が無効化されたようだ。一体誰がそんな事を? この森の守りのあの忌々しい魔獣か? だが、ここへ来て魔法陣を張り、それからも数回にわたって確認しに来ていたが、見つかった様子はなかった。まぁ、今縛られている奴らが、後半は確認していたからな。奴らが嘘を付いている可能性もある。
 が、もしバレていなかったと考えて、誰が魔法を。この魔法陣は特別な物で、そう簡単に消せる物ではない。まだ俺達とこれを教えた奴らしか知らない、作られたばかりの魔法陣。
 
 これを俺達に教えてきたのは、ある貴族の男と、そいつに付いている闇ギルドの魔法師だった。ある日突然俺達の所へ、仕事があると話しを持ちかけてきたのだが、最初その話を聞いた時、どうにも信じる事ができず。しかも殺される可能性があったから断ったのだが。

「試してみれば良い」

 それを試して成功した場合、その戦利品は全て俺達が好きにして良いと。そう言われた事もあり、ここへ魔法陣を張る前に、別の森で試す事にした。
 魔法師に特別な魔法陣と、誰にも気配を気づかれない、そう、あの魔獣にも気付かれない秘薬という物を与えられ、俺達は近くにある、ペガサスがいる森へと入った。狙いはペガサスの子供だ。貴族の男に他のペガサスと毛色の違う子ペガサスがいると情報を与えられ、その子供を捕まえる事に。

 だがペガサス達は警戒心が強い。森に入った途端、俺達の気配は気づかれてしまう。そこでこの秘薬を使った。気配が完全に消えるという物だったが、そんな事があるのか?と、警戒しながらそれを飲み森に入る。そしてこれまた、誰にも魔法陣の存在が分からないように、魔法師によって新しく作られた魔法陣を、子ペガサスがよく来ると言われていた場所へ仕掛けると。俺達は森でその様子を見張った。

 結果、俺達は子ペガサスを捕まえる事に成功し、また最後まで他のペガサス達に気づかれる事なく、森から出る事ができた。子ペガサスは魔法陣で捕まえた際に、魔法陣の作用ですぐに気絶したため、助けを呼ぶ事もできなかったのも良かった。

 作られたばかりの魔法陣に秘薬。これさえあれば、今後楽に仕事ができる。すぐに俺は貴族の男に連絡を取った。ところがだ、やはり問題が。魔法陣に使う特別な鉱石も、秘薬に使う薬草も、とても珍しい物ですぐには作れないのだと。そして今ある物は、今回俺達があの鳥を捕まえた分しかないと言うのだ。

「なに、今回お前達が、小鳥を捕まえてくるのなら、また用意ができ次第、お前達に回してやろう。だが、それは私の依頼と引き換えだ」

「どこまで話を信じろと? 俺達が裏切らないとも限らないんだぜ」

「こんなに楽をして、貴重な獲物を捕らえる事ができる。そんな物を、お前達のような者が、手放すわけがない。そうだろう? 私は私の手に入れたい物を手に入れる。お前達はその報酬以外にも、色々と手に入れる事ができるのだ」

 それから数日、俺達は話し合いをした結果、貴族の男の話しに乗る事にした。そして貴族の男の依頼で、この森へあの鳥を捕まえにきたのだ。瑠璃色の鳥を。

 魔法陣を仕掛けるまでも、仕掛けた後も順調だった。秘薬を飲み、あの守りの魔獣が出てくる事もなく。貴族の男に言われた場所に鳥を確認し、すぐに魔法陣を仕掛けた。そして鳥が捕まるまでの間、ずっとここにいて、秘薬の効果が切れてもいけないし、そんなに量もなかったため、数回に分けて確認しにきたのだ。

 が、結果はこれだけ。魔法陣は何者かによって消され、鳥も姿を消し。魔法陣を仕掛けた場所には何も残っていなかった。途中で魔法陣の隠蔽の効果がきれ、あの守りの魔獣に気づかれ消されたか。それとも他の何かも力が働いたか。どちらにしても大問題だ。貴族の男との関係、俺達の今後に関わる大問題。何かあった時のために、対策を考えなければ。下手をすれば、あの貴族の男に、俺達が消されかねない。あの変な魔法師を従えている奴に。

「おい、もう少し調べたら、すぐに森から出るぞ。何故かサザーランドの奴らもいるからな。長居は無用だ」

 まったく、何だってこうも、色々な事が重なるのか。簡単な金儲けのはずが。

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