32.冒険者ギルド?
「おい! 何でいるんだ! お前、奴らの調査は終わったと言ってただろう!!」
「ああ、確かに俺達は見た。奴らが街へ戻って行くのを。確認もしたんだ」
「じゃあ、なぜここに居るんだ! しかも今度は奴自ら来ているじゃないか!」
「草と木で顔しか見えないが、あれは確かにローレンス・サザーランドだ」
「どうして居るかなんて、そんな事分かるわけないだろう!」
「お前達、静かにしろ。あの方から特別な秘薬を貰って飲んでいるからといって、この森は奴が守っている森なんだぞ。少しの騒ぎで気づかれたら元も子もない。今はあれを確認する方が先だ。効果が切れないうちに確認しに行くぞ」
まったく何でここに奴が。早く移動していなければ危なく鉢合わせする所だった。顔しか見えないくらい、距離も離れていた事も良かったな。早くあの場所へ行き確認しなければ。失敗したら大変な事になる。
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テントを張り終わって、夜のご飯を食べて、僕達は大きなテントに。今日一緒にテントで寝るのは、僕達とローレンスさんとフィオーナさん。他の人達はテントで寝たり、そのまま外でごろ寝をしたり。あとは見張りの人達がいたり。
「さぁ、そろそろ寝ましょうか。明日も朝早くに出発よ。レン達はそのまま寝ていても良いけれどね」
ダメダメ、ちゃんと起きるよ。見送りに来てくれてるみんなにバイバイしなくちゃ。あっ、テントを張っている時に応援してくれた魔獣さん達は、一緒に夜のご飯を食べた後、みんな帰って行きました。
「おやちゅみなしゃい!」
『なさい!』
「はい、おやすみなさい」
「おやすみ」
みんなにおやすみなさいをしたら、薄い敷物に寝転がります。もちろんスノーラに寄りかかりながら。
「しゅのー、おやちゅみ!」
『おやすみなさい!』
『ああ、おやすみ』
これで、すぐに寝られれば良かったんだけどね。この日はなかなか眠れなくて。それはルリも一緒で。最初は2人でゴロゴロしていたんだけど、あんまりゴロゴロしていたらスノーラが話しかけてきました。
ちょうど良いと思った僕。スノーラに小さいテントの話しをします。そうしたらスノーラが、街だったら売ってるかもしれないって。
『でも確か金が必要だな。もし買えないなら、我が森で同じような素材を探してきて、それでテントのような物を作ってやる。それで良いか? 確かこれから行く街の近くの森に…』
これから行く街の近くの森に、人や獣人、それから魔獣さん達に危害を加える、とっても迷惑な魔獣が住んでいるんだって。名前はダークウルフ。僕がこの世界に来るちょっと前に、別の森から移動して来て、スノーラが守っている森を通過。その群れが今向かってる街の近くの森に住み着いた事を確認したみたい。
群れで行動して、出会った人も魔獣も、誰でも襲うんだ。それはスノーラが守っていた森を通った時も一緒で。スノーラは何匹かダークウルフをやっつけたって。
だからもしテントを買えなかったら、そのダークウルフをやっつけて、その皮でテントを作ってくれるって。
『我も何十年と街へは行っていないが、あれはまだあるのだろう? 冒険者ギルドと商業ギルドだ。あいつと行動していた時はあったが』
「ああ、もちろん。前よりも使いやすくなった部分と、面倒になった部分があるがな」
『そうなのか? まぁ、あるのならばそれで良いが。良し、ローレンスの街へ着いたら行ってみよう』
ルリが小さいテントがあるかもしれない、それかスノーラが作ってくれるかもしれないって聞いて、喜んでステップを踏みます。僕も拍手。でも僕の拍手はテントの事だけじゃないくて。
今なんて言ったの! ここにも冒険者ギルドや商業ギルドがあるの!? わぁ、本物だぁ。本と同じ感じかかな? 小さい僕でも入れる? よく冒険者ギルドだと、何歳以上じゃないとダメみたいな決まりがあるよね。商業ギルドの方は、あんまり年齢制限とか聞いたことないけど。わぁ、わぁ。僕早く見たいなぁ。
があんまり喜んで、ルリだけじゃなくて僕まで小躍りし始めちゃったから、スノーラがしまったって。僕の小躍りもルリのステップも無意識なんだけどね。嬉しくて。
『はぁ。おい、そのままはしゃいでいたら、本当に明日起きられなくなるぞ。確かこんな事もあるかと持ってきていたんだ。さっそく使う事になるとは』
スノーラが魔法でとっても可愛い、黄色の花をだしました。なかなか咲かない花らしくて。でもたまたまいっぱい咲いている場所を見つけたみたい。半分摘んで持ってきたんだけど、このお花の匂いを嗅ぐと、ぐっすり眠れるんだって。しかも簡単に枯れないから、何回も使用できるんだ。
スノーラがテントの真ん中に花を置くと、すぐにとっても爽やかな香りがテントの中を満たして。僕達は踊るのをやめてスノーラに寄りかかります。スノーラの言った通り、すぐに気持ちが落ち着いてきて眠くなってきて、そしていつの間にか寝ちゃってました。
次の日、スノーラのおかげでぐっすり眠った僕とルリは、朝から元気いっぱい。今日も朝のご飯を食べたら、すぐに街に向かって出発です。もちろんテントの片付けも僕達お手伝いしたよ。
今度はテントのシートを畳むお手伝い。僕が左の端っこをスノーラと持って、反対をルリとアンジェさんが持って。とっても綺麗に畳めて僕もルリも大満足。昨日の小躍りとステップをしました。そしてまたいつものクスクス。でも振り向くとみんな反対を向いていて。もう、本当に誰がいつも何でクスクス笑ってるの?
出発する時、昨日バイバイした魔獣さんが、もう1度バイバイしにきてくれました。そしてローレンスさんの掛け声で出発。
僕、街に行く楽しみが増えたよ。街も楽しみだったけど、テントと冒険者ギルドと商業ギルドね。どのくらい本と一緒かな? 全く違う物だったりして。もしかして地球と同じでビルが建ってたり? う~ん、とっても楽しみ!!