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27.スノーラの災難、怖いフィオーナさん

 今僕とルリの横で、スノーラが魔獣の姿で、とっても小さくなっています。大きさが変わるはずないと思っていた僕。それは間違いでは、スノーラは魔獣の時その大きさを変える事ができたんだ。それで今は僕と同じくらいに小さくなっていて。
 それからスノーラの前には、とっても怖い顔をして怒っているフィオーナさんとアンジェさんが、ドンッ!!と立っています。

 そう、あれからスノーラは、僕のここでの生活を話していたんだけど。ご飯のお話しになった時に、最初は普通に聞いていたフィオーナさん。でもだんだんとおっかない顔になってきて、途中で体がふるふる震え始めました。気づいていたのは僕とルリとローレンスさんと。というか、スノーラ以外みんなフィオーナさんの変化に気づいていたと思うよ。だって何かこう圧を感じたんだ。

 ローレンスさんは時々、フィオーナさんに声をかけようとしていたみたいだけど、なかなかそれができなくて。すぐに手を引っ込めたり、ちょっとあたふたしてたり。ケビンさんとアンジェさんは完全に知らん顔って感じで。あっ、でもアンジェさんもさっきまでのニコニコ顔が、ピクピクしていたような。

 スノーラに質問するフィオーナさんの声が、ちょっと低くなりました。

「それでスノーラ様、食事は木の実と果物だけでしたの? お肉類や野菜、きのこなどは?」

『そっちはどう食べさせれば良いか分からなくてな。街へ行くと思っていたから、その時で良いと思っていた。まぁ食べなくとも…』

 バンッ!!と立ち上がったフィオーナさん。その少し後ろにアンジェさんもドンッと立っていて。人の姿で座っていたスノーラが少しだけ後ろに下がりました。

『な、何だ? どうしたのだ?』

「スノーラ様、何だ?ではありません!! どうしてもっと早く私達に知らせなかったのですか!! いいえ、私たち以外でもかまいません。あの方の関係者に連絡を取るなど、なぜもっと早く、知らせなかったのですか!!」

 それからずっとスノーラは怒られているんだ。木の実や果物をきちんと僕に食べさせていた事については問題ない。木の実にも果物にも栄養はたっぷり入っているから。でもお肉も食べないと栄養が偏ってしまう。僕くらいの小さい子供は、成長のためにもきちんとした栄養を取らなければいけないのに、後でで大丈夫だなど。って、もうねフィオーナさん止まらないの。そんなフィオーナさんの言葉の間に、アンジェさんがまた追撃するって感じで。

 もうね、凄かったよ。迫力のあるフィオーナさん達に、スノーラは途中でトラの姿になって、どんどん小さくなっていきました。それで今では僕と同じ大きさに。
 確かにお肉を食べないと、栄養は偏るかもね。でもそれは仕方ない事で。スノーラは僕達のことしっかり面倒見てくれてるよ。いい加減、これ以上怒ったらスノーラが可哀想。

 どのくらい怒られていたのか、実際にはそんなに時間がたってきなかったかもしれないけど。僕はスノーラのことを抱きしめました。それからルリがスノーラの前に立って。ルリはちょっと震えていたよ。

「えちょ、しゅのーいっぱいごはん。ぼく、おにゃかいっぱい。しゅのーおこっちゃめ」
 
『僕もいっぱいご飯食べた。怒るのダメ』

『レン、ルリ…』

「…2人共」

 フィオーナさんが止まります。ふぅ、止まってくれた。これで止まってくれなかったらどうしようと思ったよ。だってフィオーナさん怖いんだもん。これ以上怖いフィオーナさん見てたら、僕達絶対洞窟の奥に逃げてたはず。

 やっと止まったフィオーナさんに、ローレンスさんが話しかけます。というかローレンスさん、おどおどしていないでフィオーナさん達止めてよ。フィオーナさんは奥さんだし、アンジェさんはお家で働いている人なんでしょう?

「そ、そうだぞ、フィオーナ。そろそろやめないか」
 
「旦那様もお止めになるのでしたら、レン様の後ではなく先になさいませんと」

「い、いや、なぁ。というか、お前も止めたらどうだ」

「フィオーナ様を止めるのは、旦那様の仕事です」
 
 そうそう、ケビンさんの言う通り。というかケビンさんももしかして逃げてる感じ? あっ、後それから。僕はレンって呼んでって言ったんだけど、ケビンさんとアンジェさんは様を付けるって。それが決まりなんだって言われちゃって、それだけ変えられませんでした。

「フィオーナ、彼はここまでしっかりレンの面倒を見ていてくれたんだ。それを責めることはしてはいけない」

「分かっています! 分かってはいますが、私はレンが心配で。…はぁ、ですがたしかに私も怒りすぎました。申し訳ありません。どうしてもレンのことを考えてしまって」

 フィオーナさんが謝って圧がなくなって、僕もルリもホッとします。それから1番ホッとしたのはスノーラね。すっごく大きなため息を吐いていました。

「スノーラ様、申し訳ない。フィオーナもレンの事を思って」

『分かっている。確かに我も同じ物ばかりではと思っていた』

「そうですわ!!」

 急に大きな声を出されて僕もみんなもビクッとしちゃったよ。

「スノーラ様。私共の屋敷へ行った際には、私が1からお料理の事、生活に関する事、その他色々と、スノーラ様にお教えします。もしスノーラ様がやはり街には居られないと、森に帰るような事があれば。またこのような生活にならないよう、完璧に教えて差し上げます!」

『い、いや、そのなんだ』

「帰るという考えにならないように、私共も努力はいたします。ですがこれからの事、何があるか分かりません、ですから短時間で最低限のことは覚えていただきます!」

 スノーラがローレンスさんを見ました。ローレンスさんは目を逸らして、それから首を振って。

『何で我ばかりがこんな目に…』

 これがローレンスさん達が来て、すぐに起きた事件でした。僕、スノーラが魔獣と戦っている所を見たことはなかったけど、きっとフィオーナさんはスノーラにとって、かなりの強敵だったんじゃないかな? そう思ったんだ。
 僕はそのあとしょぼくれるスノーラを、ずっと撫でてあげました。スノーラは誰になんて言われたって、僕とルリの家族だからね。

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