バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

23.みんなにさよならのご挨拶

「さぁ、森の中へ入るぞ。気を引き締めろ…、ってフィオーナ!?」

「あなた何をしているの? 早く行くわよ! あの子が待っているのですから!」

「いやだから、森の奥へ行くのだから気を引き締めてだな。…はぁ、もう良い」

 私の言葉を最後まで聞かずに、フィオーナがどんどん森の中へと入って行く。それに続くアンジェ。今の2人ならば、私達が居なくとも、2人だけで森の奥へ行けてしまうかもしれないな。

『おい、早く行かなくて良いのか? 2人が凄い勢いで進んでいっているぞ』

 フィオーナの圧に思わず止まっていた私に、バディーが声をかけてきて、私は急いで皆に声をかけると森の中へ歩き始めた。子供は元気にしているだろうか。私達を見て、怖がらないでくれると良いのだが。だがもしそうでも、ゆっくりと私達に慣れてくれれば。そしていつか家族だと思ってくれれば。

 私は自分の服の胸の辺りを押さえる。フィオーナではないが私もその子供、名前はレンと言うらしいが、レンにぬいぐるみを買ってきた。気に入ってくれると良いが。そして荷物の中にはレンと一緒にいると言う、ルリという鳥のためにも、色々と準備をしてきた。私もフィオーナの事は言えないな。

『どうした笑って?』

「いや、私もフィオーナと同じだと思ってな。色々と用意するところ」

『同じ? お前やケビンが止めなければ、馬車がもう1台増えるところだったんだぞ』

「あ~、まぁな。帰ったら片付けが大変だ」

 こうして私達は森へと入って行った。

      *********

『…来たな』

「にゃにぃ?」

『何て言ったの?』

 僕達が朝のご飯を食べ終わって、遊ぶ準備をしていたら、スノーラがぼそっと何か言いました。それからすぐに魔獣の姿になったスノーラが、挨拶しに行くぞって。スノーラがバディーの契約者の人に伝言を頼んだでしょう? その契約者の人と、その家の人、関係者の人が、森に入って来たって。

 だからね、まだ付いて行くかとか、ちゃんと決まってはいないけど。もしその人達について森から出るなら、カース達にご挨拶しておかないとね。それからカース達だけじゃなくて、他にも友達になった魔獣さん達にも挨拶をして。

 湖に着いたらカースがニコニコ、いよいよだねって。

『まだ一緒に行くかは分からんが。それにもしかすると帰ってくる可能性もある』

『まぁ、確かにそうだけど。でも進む事も大事だからね。レン、ルリ。スノーラの言う事を良く聞いて、スノーラから絶対に離れちゃダメだよ』

「うん!」

『ボク達、いつも一緒!』

 何があっても絶対に離れないよ。

 う~ん、それにしても、せっかくお友達になったのに、バイバイはちょっと寂しいなぁ。そう僕が言ったら、スノーラが街で暮らしても、時々遊びに来れば良いだろうって。遊びに来ればって、この森とっても広いんでしょう? それに人はなかなか奥まで入って来れないって。あとは街がどの辺にあるかは分からないけど、街だってけっこう遠いはず。

 そうしたらスノーラじゃなくてカースが説明してくれました。スノーラだったらそんなに時間がかからないで森まで遊びに来れるはずだって。いつも僕達を乗せて走ってくれるスノーラ。全力じゃないのは分かっていたけど、スノーラは人の目じゃ見えないくらい、早く走る事ができるんだって。

 もちろんそんなスノーラに、何もしないで乗るなんてできません。でもある事をすると僕達でもとっても速いスノーラに乗る事ができるんだ。
 スノーラに結界を張ってもらうの。この前水の上に浮いていたのも結界だったみたい。それとは別の結界があって、それを張ってもらえば大丈夫なんだ。

『1回、やってもらったら?』

 言われてスノーラに乗ってみます。すぐにスノーラが結界を張ってくれたんだけど、黄緑色の透明な結界でした。僕のヒールの色とはちょっと違います。

『良し、走るぞ!』

「うん! …お、おおおおおっ!?」

『ぴゅのぉぉぉぉ!?』

 ルリと一緒に、変な声で叫んじゃったよ。カースは人の目には見えないって言ったけど、それはもちろん僕達も一緒で。色はなんとなく分かるんだけどね、それが何かは分からないんだ。それくらいスノーラが早く走っているって事。
 ビックリしているうちに、すぐにスノーラが止まって僕達はカースの前。そして結界を消しました。

『どう? 速かったでしょう? 今ので森の半分走って来たんだよ』

 森の半分?

『ぷっ、2人の顔、アハハハハハッ!!』

 え? 何? 聞いたら僕とルリは目を大きく開いて、口を開けてスノーラを見てたって。2人でほっぺたをモミモミ。

『本当2人は、初めから兄弟だったみたいに、動きも表情もそっくりだね』

 そう言いながら僕達を抱っこするカース。

『良いかい。人間の所に行っても、今の関係を大切にするんだよ。君達は家族なんだ。仲良く、時には喧嘩しても良い。それでも最後には仲直りをして幸せに暮らすんだ』

「うん!」

『ボク達家族!! 仲良し!!』

『良し!!』

 カースが僕達を下ろして、僕達はそのまま魔獣さん達の所に。みんなにご挨拶だよ。

『それにしてもレンは歳のわりに、こちらの言った事をちゃんと理解できていたから、ボクも話しやすかったよ。スノーラ、2人を頼んだよ。僕も君達が帰って来なかったら、そのうち遊びに行くよ』

『おい、しっかり森を守るんだぞ』

『分かってるって。心配しないでよ』

『本当か? 本当に分かっているのか?』

しおり