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16.突然の魔獣の叫び声と面白い顔

 スノーラに静かにしてろって言われた僕達。言われた通り、木の実を積み木みたいにして遊びながら、スノーラが戻って来るのを待っていました。
 どのくらいたったのかな? 急にルリが洞窟の奥の方っていうか、奥の上の方を見て、何かが近づいてくるって言ったんだ。それはどんどん洞窟に近づいて来ているみたいで。そしてもうすぐ洞窟の真上だよって教えてくれた時。

『グギャアァァァ!!』

 洞窟の中、物凄い魔獣の叫び声が響いたんだ。僕は慌ててルリを抱きしめてうずくまりました。魔獣が襲って来たと思ったの。叫び声はその後も続いて、ルリもぶるぶる。僕もぶるぶる。こんな声を聞いたのは、この森に来てから初めてでした。僕はもっとルリをギュッと抱きしめて、必死にスノーラのことを呼びます。

 スノーラ大丈夫かな? ずっと森を守ってきた、とっても強いスノーラだから大丈夫だと思うけど。どんな魔獣かは分からないけれど、もしその魔獣がそのまま何処かに行っちゃうか、それともスノーラがやっつけたら、お願いだから早く迎えに来て。それまで僕がルリを守るから。

 そんなぶるぶるしていた僕達。やっと叫び声が聞こえなくなって、それとほぼ同時にスノーラの僕達を呼ぶ声が。本当はすぐに返事をしたかったんだけど怖くて。それからもしまた声がしたらって、僕は動けないでいました。と、誰かが僕を抱き上げます。この手の感覚は…。

『レン! ルリ!』

 スノーラが僕を抱き上げてくれたんだ。もうね、僕我慢できなかったよ。涙が勝手に溢れて来ます。

「う、うえ、うええ」

『大丈夫、大丈夫だ。落ち着け、何も起こらないから』

 ぽんぽん背中を叩いて、それからさすってくれるスノーラ。でもなかなか涙が止まりません。そんな僕を抱っこしたままスノーラは歩き始めて。
 さっきの鳴き声なんだったの? あんなに大きな声なんだもん、それだけ大きい生き物だってことでしょう? 色々聞きたいのと、怖かったので、僕の頭の中は少しぐちゃぐちゃ。

 そんな僕に聞こえて来たのは…。

『何だその小さき者は!?』

 今度は誰の声? 僕は泣きながら顔を上げて、声のした方を見ました。するとそこには、真っ黒いヒョウ? それともチーター? みたいな生き物が。まさかさっきの声、この魔獣じゃないよね。僕はひしっとスノーラにくっつきます。

『レン、それにルリも。こやつはここへ話をしに来ただけだ。先程の声はドラゴンのもので、もうドラゴンは遠くへ飛んでいったから安心しろ』

 ドラゴン!? ここにはドラゴンがいるの? ドラゴンって聞いて、ちょっと涙が止まった気が。そして僕は空を見上げます。

『ほら、もう何も見えないだろう』

 うん。空はいつも通り。ホッとした僕。でもちょっとドラゴン見てみたかった気持ちも。ううん、やっぱりダメ。危険がないドラゴンなら良いけど、この世界に住んでいるドラゴンが安全か分からないもん。

 少し泣き止んだ僕を離すことなく、スノーラがその場に座りました。僕はスノーラの膝に座って。驚いた顔をしたままの真っ黒魔獣も、驚いた顔のまま座れをしました。

『レン、ルリ。この者はブラックパンサーという魔獣で、名はバディーと言う。バディー、この人間の子供の名前はレン。そしてレンと契約している相棒のルリだ』

『契約!? 子供と契約!?』

 あ~あ、また驚いてるよ。そのせいで驚いていた顔が、ちょっと面白い顔になって、僕はちょっと笑っちゃいました。そうしたらルリも笑い始めて。

『少しは落ち着いたようだな』

 振り向いたらスノーラがホッとした顔をしていたよ。うん、バディーの顔のおかげでまだちょっと怖い感じは残っているけど、さっきまで程じゃなくなりました。バディーありがとうね。

 僕達が落ち着いたから、スノーラがバディーの話をしてくれました。バディーは僕とルリみたいに、人と契約しているんだって。人。僕はまだ人に会ってません。この世界の人って僕と同じかな? それに獣人もいるって聞いたけど。

 バディーが今日ここへ来たのは、森を調べるためでした。この森はとっても大きいって言ったでしょう? それで途中まではバディーと契約している人の、その部下の人達が一緒にバディーと調べていたんだけど。この洞窟がある場所までは、そう簡単に人は来ることができなくて。だからバディーが1匹で調べに来たんだ。

 どうして調べる事になったか。それは僕がここに来た事に関係があるみたいです。バディーはなかなか強い力を持っている魔獣で、僕がここに現れた時、森で変化が起きた事に気がつきました。スノーラみたいにね。
 それをバディーは契約している人に報告。報告を受けた契約している人は、一応この森を調べる事にして。でも自分は他の大切な仕事で来られなかったの。だからバディーと部下の人達が来ました。

『まさか人間の気配がするとは思ったが、こんなに小さな者だとは』

 バディーがあの変な顔のまま話をしてきます。それで僕達はまたちょっとだけクスクス。

『お前の驚いた顔が面白いらしい。お前のおかげでレン達が落ち着いた。助かった』

『いや別に、落ち着かせるために、驚いているのではないのだが』

 伏せをして顔をモミモミ、それからキリッとした顔になったバディー。あ~あ、面白かったのに。うん、でもありがとう。今ので完璧に落ち着いたよ。
 
 それからも僕が来てからの事を話したスノーラ。僕は途中でこっくりこっくり。落ち着いたら眠くなって来ちゃって。ルリは先に寝ちゃってたけど、僕もいつに間にか完璧に眠っていました。

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