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15.訪問者と予想外の出来事

 2人を洞窟の奥へとやると、我はすぐに先程まで食事をしていた場所に戻る。そして洞窟の奥へ続く道を確認した後出口へと向かった。大体の予想はつくが、こんなに早く来るとはな。まぁ少し前に人間達の気配には気づいていたのだが。奴だけこちらへ来るとは。あれの主人は一緒ではないようだしな。

 さっさと帰らせるか、それともレンのことを話すか。どうやって人間に接触しようか考えていたからな。良い機会だと思えばそうなのだが。ようやくここに慣れてきたレンのことを考えてやりたい。

 我が外へ出ると、やはり奴が待っていた。会うのはこれで3回目か。

『何をしに来た?』

『この前この森で、魔力の爆発を感じた。それで何かあったのかと思い調査しに来た。ローレンスは仕事で来られなかったのだ。だから他の者と途中まで一緒に行動を』

『で、お前だけ残り、我に原因を聞きに来たというわけか』

『ローレンスには魔力の爆発が一瞬だったと言ったが。あれ程の魔力だ、何もないわけがない。一体何があったんだ。それにこの匂い。まさかここに人間がいるのか?』

 ふむ。この者の所まで、レンがこの世界に来た時の魔力の爆発が伝わったか。さて、どのくらい遠くにいる者が気づいたか。後ははその者の力にもよるが。まぁ、魔力を感じた場所がこの森だからな。そう簡単にちょっかいを出しくる奴はいないと思うが。

 我は奴を洞窟には入れずに、その場で話しをする事にした。この者の名はバディー。人と契約している魔獣で、ワイルドパンサーというネコ科の魔獣だ。色は綺麗な漆黒で、目の色は金色。我やルリ程ではないが、なかなか珍しい魔獣ということ、時々バディーの仲間もルリを狙った誰かのように、狙われることがある。

 そしてバディーと契約している人間だが、その人間はあいつの関係者の子孫だ。この頃人前には出ていないため、今もそうかは分からないが。確かかなりの力を持っていたはず。それは戦う力と周りの国に対しての力、この両方を指す。おそらくバディーがここへ調べに来たという事は、その力は衰えてはいないのだろう。

 我が座るとバディーも座り、そして洞窟の中を伺う。まぁ、こいつに隠し事はできんからな。だが会わせるかどうかは別だ。

『確かに今、この洞窟には人間がいる。一緒に暮らし始めたのは、お前が魔力の爆発を感じた日からだ。そして我はその人間を守る役目をおっている』

『…それは昔と一緒の状況ということか?』

『ここへ来た理由はかなり違うがな。どうも予定外の事が起きてここへ来たらしい。我も急に頼まれて、理由をきちんと聞いてはいないのだ。おそらくそのうちまた接触してくるだろう』

『そうか。それでその人間は、ここで暮らすことを承知しているのか』

『今のところはな』

 承知しているも何も、レンだけでは生きていけないからな。まぁ、我も最近は昔の感覚が戻ってきて、上手くやっているとは思う。元気なのがその証拠だ。大体まだここへきて数日。人の住んでいる場所に移動する、そんな話までいっていない。

『そのうち人の住む場所には行くつもりだ。ここで全てが補えるわけではないからな。だが今すぐと言われるとそうではない。まずはここの空気に慣れる事が大切だ』

『そんなにゆっくりしているのか。確か前はすぐに色々やらかしたのだろう? お前と一緒にさっさと森から出るために、森を半分消しそうになったり、無意識に魔力を暴走させて、近隣の街を破壊しそうになったり。あとは色々な物が見たいと、すぐに何処かへ行ってしまって、お前でも探すのに苦労したとか』

『前はな。確かにあの時は大変だった。だが今回はそういう事はないんでな。ゆっくり進めていくつもりなのだ』

 バディーが首を傾げる。その時我はある気配に顔を上げた。それはバディーも同じで。森の上空、向こうの方からドラゴンが飛んで来た。あの様子からただ森の上を飛んでいるだけだが、もし森を、森に住んでいる魔獣達を襲うのであれば、相手をしなければ。我とバディーも戦闘態勢に入る。

 どんどん近づいてくるドラゴン。そしてドラゴンが我らを見て吼えてきた。敵対するつもりはないという叫びだったのだが。かなり大きな声で吼えられてしまい、それは耳をつんざく勢いで。と、その声と共に、洞窟の中からレンの叫ぶ声が聞こえた。

 しまった。我らにとってあの声は敵対しないという意味だったが、初めてドラゴンの声を聞くレンにとっては恐怖でしかなかっただろう。我は急いで洞窟の奥へと向かった。そして洞窟の奥には、ルリを抱きしめてうずくまるレンの姿が。

『レン! ルリ!』

 抱き起こすとレンはホッとした顔したが、すぐにその顔は歪み、ポロポロと涙がこぼれ始め。

「う、うえ、うええ」

『大丈夫、大丈夫だ。落ち着け、何も起こらないから』

 外の様子をさぐる。ドラゴンはもうかなり遠くへ行ったようだ。そして我が外で話していたため、バディーも洞窟に入ってはいけないと分かっているのだろう。そのまま動かずじっとしているのが分かる。

 バディーを帰すためにも、もう1度外へ出なくてはいけないが。このままレンを置いていくわけにもいかん。はぁ、こうなったら、始めて人間と接触する際は、やはりバディーの契約者の元へ行くか。一応行く前に確認はするが、昔のままなら問題はない。

 我は泣き止まないレンを抱っこしたまま外へ向かった。ルリもレンに擦り寄ったままだ。そして外へ出ると我らを見てバディーが目を見開く。

『何だその小さき者は!?』

 まぁ、そういう反応になるだろうな。

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