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8.子供と我の出会い(トラ魔獣視点)

 子供と小鳥はさっさと食事を終えて、我が用意した木の葉でゴロゴロを始めた。我はまだお腹が減っていたため、そのまま食事を続けたが。久しぶりに動いたせいか、今日はやたらとお腹が空いたな。そんな事を思いながら食事を進める。

 これからどうするか。まずはもう1度子供の名前を確認しよう。もしないようであれば我が考えても良いし。あの子供が何か好きな名前があるのならそれで良い。そして我の名前を教え、小鳥には名前がない事も教えなければ。まぁ、小鳥について詳しくは、色々な確認が終わってからか。

 それが終わったら子供の能力を再度確認だ。我の目で見えるものもあるが、見えぬものもある。確認するにはあれが1番手っ取り早い。人間達が良く使うステータスボードという物だ。魔獣や我々のような者に関係なくとも、人間には関係ある事があれには載っている。
 能力としては聖魔法は確実だ。小鳥を無意識とはいえ治したのだから。そして奴らが接触して来たときに感じたが、おそらく契約の力は持っているはずだ。と、なればだ。子供にその気があれば小鳥と契約ができる。小鳥は契約する気満々だからな。

 そう、我が最初に子供を見つけた時、小鳥は子供も側に居たのだが。我の姿を見た途端、子供を助けろと慌てて我の所へ飛んできた。小鳥の必死な様子に、どうしてこういう状況になったのか詳しい話を聞かずに、子供を助けることにした。この小鳥がこれほど必死なのだ。もし子供を助けたとしても、森に害をおよぼすような事はないだろう。そう考えたのだ。

 子供を調べれば、魔力が枯渇しているようで、それさえ解決すれば何も問題はなかった。そこですぐに我は自分の魔力を子供に分けてやり、そのままにしておくわけにもいかないため、小鳥と一緒に子供が目を覚ますのを待つ事に。その間に小鳥に何があったのか話しを聞いた。

 まさかこの森を守る者として、小鳥の危機に気づかなかったとは。そしてこんなに小さい子供に助けられるとは。
 小鳥は何かの罠にかかったらしい。小鳥達がいた場所は小鳥がいつも休憩をしに来る場所だったのだが。そこへ小鳥が来た途端、見た事がない魔法陣が現れ、呪いをかけられそうになり。何とか逃げようとしたのだが、呪いは片方の羽に。そして動けないまま、どんどん時間だけが過ぎていった。

 そしてもうダメだと思ったときに、突然子供が目の前に現れたそうだ。その子供が現れた途端、呪いの力が弱まったらしい。しかしもう小鳥は限界で。
 ところが目を瞑る前に子供が慌て出し、そして突然ヒールの魔法を使ったらしい。ビックリしたがもう間に合わない。それに呪いは消えないと思ったそうだ。それでも必死にヒールを使ってくれた子供に、心の中でお礼を言いながら目を閉じた小鳥。

 しかしすぐに意識がはっきりして来た。あれだけ苦しかったのにそれもなくなり。そして目を覚ますと、目の前にはぐったりとした子供が。子供が助けてくれた。でも今度は子供が危ない。と、慌てている所に我が現れたらしい。

 そこで我は不思議に思った。確かにヒールは怪我を治すが、呪いを消したりできたか?と。あれは特別な道具が必要だったはず。我は魔法で消すことができるが、人間は確か魔力を帯びている石を使ったはずだ。それから特別な薬草が必要だったはず。ただのヒールで治した? これも後で確認しなければ。

 呪いや魔法陣は人間や獣人が良く使う物だ。しかし森を守る我に気づかれず、どうやって罠を張ったのか。そしてここに小鳥がいる事が分かって張ったのか? それともたまたまか。

 この小鳥はかなり珍しい鳥だ。我が守るこの森に暮らしている事はもちろん知っていたし、気をつけてはいた。人間や獣人達に捕まらないように。
 小鳥の色は瑠璃色なのだが。こういった色の鳥は何十年に1羽、生まれてくるか来ないかで。また小鳥の側にいるだけで、その側にいる者に幸運が訪れると言われている。

 他にも他の魔獣よりも魔力が強く、どんな魔法をも使いこなす、という事もあり。そのために、この幸運の鳥が居るとわかれば、獣人や人間の中には無理矢理にでも、この小鳥を捕まえようとする者達がいるのだ。おそらく今回もそういう輩が魔法陣を張り呪いをかけて捕まえようとしたのだろう。
 そうならないように気をつけていたのに、我は何をしていたのか全く面目ない。その話しを聞き、後で子供にお礼を言わなければと思っていたのだが。

 まさかまた我が奴らに頼まれ、こんなに深く人間と関わる事になるとは思いもしなかった。関わりを持つのは何十年ぶりだろう。あいつも異世界とやらからやって来たが。あいつは大人で、ほとんど手が掛からなかった。が、今度はどうだ。こんなに小さい子供だぞ、我にどうしろと言うのだ。

 まぁ、できる事はやる。もちろんどんな敵からも守ろう。子供に興味があるのは確かだからな。しかし、できる事には限界がある。今は良いかもしれないが、近いうちに人間の生活する場所へ行く事になるだろう。そうなったら何処へ行けば良い? あいつの関係者は今どうなっているか。あとは奴の所か? 子供を守るためにも、少しは力のある者の所へ行った方が良いだろう。

 はぁ、考える事もやる事もいっぱいだ。とりあえずまずは名前だ。我はまだ少しお腹が空いていたが待たせるのもと、子供達の方を見た。するとそこには半分寝ている子供達の姿が。

『おい』

「うにょう?」

『ぴゅいぃ?』

 お腹を空かせていると、先に食べさせたのが不味かった。名前だけでもしっかり聞いておけば良かったな。だが、これではもうダメだろう。確か人間は寝る前に歯を綺麗にしていたな? 浄化で良いか。が、トイレだけは済まさせよう。

 何とか子供を起こしトイレをさせる。そのトイレに小鳥もついて来て。半分寝ながらだったため大変だった。しかし何とか終わらせると、我は浄化をして子供達を寝かせる。そして少し様子を見ていたのだが。

 すぐに完璧な眠りに落ちた子供たち。子供がお腹を掻いた。それと同時に小鳥も羽でお腹をさすり。子供が右に寝返りをすれば小鳥も同じ方向へ。子供が足を投げ出せば、小鳥も小さい足を広げ。…お前、小鳥のくせにそんな動きができるのか、と思わず声に出して言ってしまった。すると。

「ちゃい!」

『ぴゅいい!』

 小鳥は今煩いと言ったのだが、おそらく子供も煩いと言ったのだろう。我とした事がビクッとしてしまった。怒る時まで一緒とは。これからこの小さい者達との生活。我の周りが煩くなりそうだ。

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