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7.初めてのご飯と、びっくりご飯

『お前は木の実や果物で良いだろう。人間は肉も食べるが、我はその辺は良く分からん。大体いつもそのまま食べるからな。あいつは焼いたり煮たりしていたが。ああ、食べ物はちゃんと食べられる物ばかりだぞ、そこは安心して良い。これもあいつと一緒にいて覚えたからな』

 うん、そうだろうね。だってトラさんだもん。まぁ今はトラお兄さんだけど。僕は木の実と果物で良いよ。トラさんがせっかく持って来てくれたんだから、文句なんて言わないよ。それよりもご飯ありがとう。だって僕だけだったら、絶対ご飯なんか食べられないもん。もし、木の実とかあっても食べられるか僕には分からないし。
 それにしても時々出てくるあいつって誰かな? その人と一緒に暮らしていたのかな? その人についてもいつか話が聞けると良いな。

 僕は木の葉座布団に座ります。それから隣には小鳥が座って。トラお兄さが木の実と果物の山から色々持ってきて、僕の前に置いてくれました。もし足りなかったらまた取ってくれるって。ありがとう! でも小鳥の分は? トラお兄さんは僕の前にだけ置いたんだ。

 また向こうに歩いて行くトラお兄さん。それで魔獣の山から、小さなのネズミと大きなイノシシ魔獣を肩にぶら下げて戻ってきます。と、小鳥の前にネズミを置いて、イノシシ魔獣は自分の木の葉座布団の前に置いて座りました。

『良し、食べるぞ!』

『ぴゅいぃぃぃ!!』

 小鳥が元気よく返事をして、ネズミを突き始めました。それでひと口食べて嬉しそうにまた鳴いて。僕はそれをぼけっと見つめます。小鳥、肉食だったの!? そっかぁ。僕小鳥は木の実食べるんだって、勝手に思い込んでたよ。
 どうどん小鳥がネズミを食べて行きます。食べるの早いんだ。もう半分なくなっちゃった。

『どうした? 食べないのか?』

 僕はハッとして木の実に手を伸ばしました。ビックリしてみつめちゃってた。僕も早く食べなくちゃ。この木の実そのまま食べて良いのかな? それとも皮剥いたり? 木の実を持ったのは良いけど、食べ方が分かりません。お腹空いているから、早く食べたいんだけど。2人ともお肉食べてるから分かんないし。

 僕がチラチラ、トラお兄さんを見ていたら、気づいたトラお兄さんがああって言って、何個かの木の実と果物の皮を剥いてくれました。

『こっちのはそのまま食べられるからな』

 ありがとう!! 僕は剥いてもらった木の実を口に入れます。美味しい!! 味は桃みたいで、とっても甘くて汁がじゅわわわって。最初に僕が手に取った木の実は小さかったんだけど、小さいって思えないほどジューシーでした。
 すぐに他のも食べてみます。他のもとっても美味しかったよ。りんご味やブドウ、みかんもあったし、柿みたいな物も。本当に美味しかったです。

 そして食べ過ぎちゃった僕は、その場にごろんって。その隣で小鳥もごろん。2人でお腹を出してごろんです。でも手と顔を洗えって、トラお兄さんが。そう、僕達の顔と手はベタベタ。僕はやっぱり小さいからか、今までみたいに上手に食べる事が出来なくて、顔中ベタベタ、手もベタベタに。そしてそれは洋服も一緒で。

 小鳥はまぁね。魔獣に顔を突っ込んだりしてたし。だから小鳥も顔中べとべと。ついでに体もべとべと。あれからネズミを2回もおかわりしたんだよ。全部で3匹。僕の手に乗るくらい小さいのに、どこにそんなに入るんだろうね。

 う~ん。でもお腹いっぱいで動きたくない。2人で顔を見合わせてながら、またごろごろを始めます。それを見てまた手を洗ってこいって言うトラお兄さん。今度は2人でトラお兄さんを見て、ぶすっとした顔します。なんとなく面倒でぶすっとしちゃったんだけど、同じタイミングで小鳥もぶすって。それでまた2人で顔を見合わせて、ケラケラ笑っちゃいました。

『はぁ、何を笑っているんだ。本当にお前達は出会ったばかりなのか。気が合いすぎであろう。手と顔だけは洗え。体や服は我が浄化してやる。綺麗にしてやると言う事だ』

 綺麗に? なら手や顔も一緒にできないの?

『あいつが言っていた。子供ができた時にな。何でも自分達がやってしまうと、子供が育たないと』

 またあいつ。本当に誰だろう? でもトラお兄さんもそのあいつって人に、色々教わったんだね。うん。何でもやってもらうのはダメ。ちゃんと自分でできる事は自分で。いまいち自分の体に慣れてないから、どこまでできるか分からないけど、手ぐらいならさっきもバシャバシャしたし洗えるよ。

 僕は頷いてよいしょって立ち上がりました。それを見てやっぱりよいしょって立ち上がる小鳥。体が重いのかふらふらお水の方へ飛んでいきます。それに続く僕。小さな入れ物の方に2人並んで、僕は手をバシャバシャ。小鳥は顔を突っ込んでバシャバシャ。その後お水を変えてもらって、僕も顔をバシャバシャ。う~ん、上手く洗えない。これで大丈夫かな?

『良し、風で乾かそう』

 顔が濡れているから目を開けられないでいた僕。急に僕の周りに風が吹いて、手も顔も綺麗に乾きました。

『このまま体も綺麗にするぞ』

 そうトラお兄さんが言うと、トラお兄さんの顔の前にキラキラした物が。それでそのキラキラが僕達の体を包んで。キラキラが消えると洋服のベタベタが消えていました。小鳥の体のベトベトも消えてたよ。

『さぁ、これならごろごろしても良い』

 そう言われて、2人ですぐに木の葉ベッドに向かいました。木の葉ベッドでゴロゴロする僕達。トラお兄さんは戻って、まだご飯を食べ始めます。僕達は小さいからね。まぁ、小鳥は小さいのにネズミを3つも食べていたけど。トラお兄さんは元々大きなトラだから、いっぱいご飯だね。

 トラ…。トラだと思うけど、ツノがついてる。後でご飯が終わったら、ちゃんと名前を聞かなくちゃ。それに僕の名前も伝えて。あの透明な板みたいなやつ。僕自分で蓮だって言ったけど、どうやったら名前のところが蓮ってなるかな? と、その前に、あの透明の板の出し方が分からないんだけど。思い浮かべれば出る?
 僕は透明な板を思い浮かべてみました。でも何の変化もありません。あの時はどうしてでたんだろう。トラお兄さんは知っているかな?

 とか色々考えながら、そしてゴロゴロしながら、トラお兄さんのご飯が終わるのを待ちます。待ったんだけどね…。
 僕眠くなって来ちゃったよ。だって全然ご飯が終わらないんだもん。あっちの魔獣を食べ終わったらこっちの魔獣、それが終わったらまたまた別の魔獣。とっても大きい魔獣をたくさん食べたからもう終わりかと思ったら、今度はちょっと小さい魔獣を食べ始めて。その間に果物も木の実も。

「ねむちゃいねぇ」

『ぴゅいぃぃぃ…』

 多分今のは眠いねぇって言ったよね。まだまだご飯は終わりそうにないし。う~ん、目が勝手に閉じて来ちゃう。今日はもう寝て明日お話ししない?

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