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6.トラさんの準備

『帰ったぞ。静かに待っていたか? 色々持ってきた。今並べるから待っていてろ』

 トラさんはすぐに帰って来たよ。僕と小鳥さんは葉っぱの上で立ち上がって、トラさんが何をするのか見ます。

『まずは、寝る場所は我がいつも使っている隣で良いな』

 僕達の隣まで歩いて来たトラさん。急にトラさんの体の上にヒュルヒュル。風の音がして丸が出来ました。それからその中に何かが出てきて、丸の中でクルクル回って、それが次の瞬間には僕達の隣に飛んできてたよ。
 ふさぁぁぁ。風が吹いたみたいに僕達の毛がふわふわってなりました。それから丸が消えて、中から木の葉がヒラヒラたくさん出てきたんだ。それが地面に積もって木の葉の山が。その木の葉の山を、トラさんがしっぽで平らにします。僕達が座っていた木の葉の隣に、もう1つ別の木の葉の布団が出来ました。

『ふむ。ベッドはこれで良いな。次はご飯を食べる場所だが。こちらで良いだろう』

 そう言って、今度は反対の方に歩いて行くトラさん。それに僕達も続きます。小鳥は僕の頭の上に乗ったり肩に乗ったり。トラさんが止まって僕も止まると、手のひらに乗って来ました。

『ご飯を食べるときも、地面に座るだけではお尻が痛いだろう』

 そう言いながら、またトラさんの体の上にまた丸が出来て、それから木の葉が。今度はさっきよりも量が少なかったです。うん、あっちが布団なら、こっちは座布団って感じかな。
 
 でも今度は木の葉だけじゃありませんでした。また体の上に丸が出来たんだけど、今度はその中から、木の実や果物みたいな物が出てきて、それの山が出来ました。これがご飯? いっぱい持って帰って来てくれたんだね。ありがとうトラさん!!

『あとはこちらに置くか』

 さらに隣を見るトラさん。今度は何を出してくれるのかワクワクして待ちます。うん、それでね。出てきた物にビックリです。地面に置かれたときも、凄い音がしたんだよ。ドスン、ドスンって。
 出てきた物は、大きなクマみたいな生き物と、イノシシみたいな生き物。それから鹿みたいな生き物に、豚人間みたいな物が。もしかしてあれって、本で見た事があるやつ? 確かオークって言ったっけ?

 それからも色々生き物を出してくるトラさん。みんな地球の生き物と似ているんだけど、どことなくみんな違っていて。大きな生き物じゃなくて、小さいウサギやリス、ネズミみたいな生き物も出て来たけど。羽が生えていたり、ツノが生えていたり、爪が長かったり。
 うん、やっぱり地球と違うんだって思いました。

 出し終わったのか、トラさんが次の場所へ歩いて行きます。そして出した物は、大きな大きな、僕がすっぽり入っちゃうくらい大きな入れ物でした。それから小さな入れ物も出して。
 今度は体の上に水色の丸がヒュルヒュル。入れ物にそれが入ったら、入れ物の中には透明な液体が。小鳥さんが小さい入れ物の端っこに乗って、その液体で体をバシャバシャ。それからブルブル。
 入れ物に入った液体はお水みたい。僕も小さい方の入れ物に手を入れてみます。おおおっ、冷たくて気持ちいい!!

『こっちの小さい方の水はお前達用だ。浄化の魔法が使えるが、ちょっとした時にあった方が良いだろう。それからこっちの大きい方は、飲み水用だ。良いかこれを使うんだ』

 そうトラさんが言った瞬間でした。ヒュルヒュル、今度はトラさんの体を何かが包んで、それが消えたらそこには。トラさんじゃなくて若い背の高い男の人が立っていました。僕はビックリして尻もちついちゃったよ。

『ん? いやすまんすまん。驚かせたか? 我は人間の姿に変わる事ができるのだ。お前にはこちらの姿で説明した方が良いと思ってな』
 
 そう言うと木の実の山の方に歩いて行くトラさん。ううん。トラお兄さん。ちょっと大きな木の実を半分に割って、中の実の部分を素早く食べると。その殻を持ってきました。

『これがあれば、こうして水が飲めるだろう。我が出かけている時に水が飲みたくなったら、これで飲むと良い。これから我にはやる事が色々あるからな、洞窟を留守にする事もある。その時に喉が渇いたりお腹が空くのは不味いからな。まぁその辺は後で説明するが。お前がどのくらい理解できるかどうか』

 そんな事まで考えてくれたんだ。ありがとう!!

『さて、今日の最後はトイレの事だが。こっちだ』

 今まで行かなかった、もう少しだけ洞窟の奥に行きます。奥と言っても、ちょっと顔を出せば、さっきの場所が見える所ね。それでその奥に、トラお兄さんがまた大きな入れ物を置きました。

『外でできる時はさっさと外ですれば良いし、我がいる時はすぐに浄化して綺麗にしてしまえば良いが。我がいない時はこれにしろ。後で片付ける』

 もしかしてこれ便器の代わりかな? この世界に便器があるか分からないけど。うん、これもありがとう! というかトラお兄さん色々準備が。何でこんなにすんなり準備できるの? 

 う~ん、聞きたい事がいっぱい。ここの事、トラお兄さんの事、それからさっきのトラお兄さんが出したヒュルヒュルってなった物の事。あれは多分魔法だと思うんだけど。ちゃんと僕聞けるかな? 2歳?だからか、うまく言葉が話せないんだよね。なれてくれば、もう少し上手に話せるようになると思うんだけど。

『よし、戻るぞ。まずはご飯だ、そのあと話しをするとしよう』

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