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童貞だって恋がしたい


「新宮、お前はなにか勘違いしているぞ」
「勘違い?」
「ああ、そうだ。ここは不良やひきこもり。そう言ったクズどもが通う場所であり、勉学なんてもんは二の次だよ」
 おい、仮にも自分の生徒だろ? 大丈夫か、この教師。
「じゃあ、何が一番なんです?」

 俺の問いに、宗像先生は黙って立ち上がるのみ。
 近くの棚から汚れたマグカップを取り出すと、インスタコーヒーを入れ、お湯を注ぐ。

「ほれ、外は寒かったろ。飲め」
「い、いただきます……」
 すげぇ、まずそうだな。このコーヒー。
「何が一番か……といったな」
 コーヒーを啜りながら、宗像先生は窓の外を見る。
「はい。俺はガチガチに勉強するものだと思ってました」
「フッ、まあそれはよい心がけなのだろうがな……だが、ここではお前の常識は通用せんだろう」
 なんだ、その答えは……。

「いいか、ここはお前みたいな集団生活に馴染めなかったクズどもの通う高校だぞ? 入学試験なんか設けてみろ? 誰も来ないし、本校はつぶれるぞ? お前だってどうせ中学生時代にドロップアウトしたくちだろう?」
「う……」
 的を得ている。だが、唯一的から外れたのは、中学生ではなく、小学生時代でドロップアウトしているところだ。
 俺の腐りレベルがあがった♪

「ほれ見ろ、その顔はお前がひねくれものである証だな。いいか、本校一ツ橋高校はそう言ったクズどもを卒業させることを第一にした高校だ」
 なんか俺、前科者みたいな扱い受けてない?
「で、ですが、俺は真面目で通ってます。勉学だって必要とあらば、やります! そんな不良とか一緒にしてもらわないで頂きたい!」
 宗像先生の目が鋭くなる。
「お前……『自分が特別だ』とか勘違いしてないか? 私からしたらお前みたいな歪んだ無職のニートも、髪を金色に染め上げたヤンキーどもも、全部一緒だ。社会不適合者というやつだ」

 悔しいが、正論だ。
 集団生活にガッコウという枠内に収まり切れない俺は、確かにドロップアウトした。
 その行為自体は、確かにヤンキーなど呼ばれる類と同じ行為を働いている。
 ただ、それが社交的であるか非社交的であるかの違いだろう。

「なあ、新宮……お前、なんでこの高校に入学したいんだ?」
 なぜかって、その問いには床で泡を吹いているヤツにでも聞いてくれよ。
「志望動機ですか?」
「んま、そう言い方もあるな」
 いちいち人を試すような行為をしやがって、このクソビッチめが!

「しゅ、取材ですよ……」
「……取材? なにを取材するんだ?」
「その、10代の男女関係における恋愛です」
「……」
 沈黙が辛い。
 だがそれを破ったのはまたもや宗像先生だ。

「だぁはははっははは!!!」

「な、何がおかしいんですか!?」
「だって、お前さ……ククク。教師に面と向かって、『ぼ、僕はリアルなJKと恋愛したいですぅ!』とか宣言したようなものだろが!」
 そのあたかも、『ぼ、僕はキモい童貞ですぅ』みたいな話し方はやめろ!
 童貞は罪じゃない!
 俺を……男をぼっちにさせる女たちが悪いんだぁ!

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