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ある日のモーモー日記 番外編

突然ですが番外編です。しかも、主人公は牛さんです。本編しばらくお待ち下さい。
☆。.:*・゜☆。.:*・゜

私たちには昔、とっても大好きで、だけど、とっても心配な小さな小さな友達がいた。

その子はおばあちゃんと一緒に毎朝毎朝
『もーもーしゃーん!おはよぉごじゃいましゅ!今日もおいちーみりゅく、ちょーらいな♪』
手を振りながら走って来てくれる。かわいい友達。

『も~お』
おはよう。かわいい友達。

『ほら、走ったら危ないわよ。ゲンさん。おはようございます。今日もよろしくお願いします。牛さんたちもよろしくね』

『も~お』
おばあちゃんは私たちにも挨拶してくれるいい人だ。

『おう!嬢ちゃん!キヨさん!今日も元気だな!おはようさん』
『もーもーのおいちゃん!おはよぉごじゃいましゅ!』
『おう!おはようさん』
かわいい友達は私たちのご主人に抱きついて、きゃっきゃっと笑っている。ほんとによく笑うようになった。

『よいしょっと!おお!嬢ちゃん、ちょっと重くなったか~?』
ご主人が小さな友達を抱き上げて高い高いをしている。
『ぶー。おっきくなっちゃにょ!』
『おお、そうか!そりゃ悪かったな!わははは』
ご主人はデリカシーという言葉を知らない。いい人なのに残念だ。
『それじゃ、今日もコイツらの美味い牛乳飲んで、でっかくなろうな!』
『あ~い!もーもーしゃん!よりょちくね!』
『も~』
もちろんだよ。たくさん飲んで食べて、早くもっと大きくなるんだよ。かわいい友達。

ある日、赤いランプをつけた車が沢山来た。その日を境にかわいい友達とおばあちゃんも来なくなった。ご主人も。暫くはご主人の友達という人達がかわるがわる私たちの世話をしてくれた。中には泣いている人もいた。

『なんであんないい人を。あんなにかわいい子に、どうしてあんな酷いことができるんだ。ゲンさんだって…』

なに?あの子たちに何があったの?あの子は今、どうしているの?
『も~』

『なんだ?お前たちも心配か?そうだよなぁ。仲良かったもんなぁ』

『も~お』
だから、何があったの!?

『もうすぐ、ゲンさんは戻って来るからな。待っててな。そんで、お前たちで元気づけてやってくれ。頼むな。うぅぅっ』
何が、何があったの?

暫く経って、ご主人が帰ってきた。だけど、明らかに前のご主人とは違っていた。足を引きずり、何か棒みたいな物を使って歩いている。そして、あんなに明るかったご主人が笑わなくなった。

『も~』
何があったの?なんで、あの子は来ないの?おばあちゃんは?

『ごめんな。もう嬢ちゃんは来ないんだ。キヨさんも……すまん。すまん……』

あの子は来ないの……何があったの。なんで泣いているの?こんな姿のご主人は初めてだ。どうしたら?
その時、ご主人の友達の言葉を思い出した。
『ゲンさんを元気づけてやってくれ』

『も~』
私たちがいる。まだあの子に会える可能性があるなら、元気じゃないと。だから、ご主人。私たちの声を聞いて。

『も~』
『め~』
あの子と仲の良かった他の仲間たちも集まって来た。みんなあの子に会いたい。ご主人に元気でいてもらいたい。私たちの声を聞いて。

『お前たち…そうだな。できることはしないとな。嬢ちゃんの為にも元気でいないと。俺は元気のゲンだもんな』

『も~』
『め~』
そうだよ。元気でいないと。あの子に会うために。

あれから数年が経った。あの子とは会えていない。ご主人も私たちも歳をとった。

『そろそろお迎えが来るかな。出来れば来世もお前たちと、そして、嬢ちゃんたちと一緒がいいなぁ』
『も~』
そうだね。私たちも同じ気持ち。

とうとうその時が来た。ご主人にお迎えが来たのだ。待っててご主人。私たちも直に……
そう思った時。

私たちの小屋の中に光が差した。そして、声が頭の中に響く。

〖君たちがゲンさんと愛し子の友達だね。初めまして。僕はね、この世界とは別の世界の神だよ。よろしくね〗

『も~』
神様?お迎えが来たの?でも別の世界?

〖そう。お迎え、というより、お誘い、かな?〗

お誘い?それに愛し子って?

〖ふふ。君たちがずっと大切にしてくれたあの子だよ。あの子は今、僕の世界にいるんだ。姿は変わっているけどね〗

あの子?あの子がいるの?あの子は元気?ちゃんと笑ってる?

〖大丈夫。今は元気だよ。それに笑ってる〗

そう、良かった。元気なのね。笑ってるのね。

〖うん。それでね?君たちも僕の世界に来ないかな?ゲンさんも来てくれるんだ。ただ、君たちのことが心配だっていうからね、それじゃあ皆一緒に来たらどうかな?ってね〗

私たちも一緒に?ご主人もいる。あの子にも会える?

〖どうかな?きっと、あの子も喜んでくれると思うんだ〗

ご主人と、あの子に会えるなら
『も~』
お願いします。私たちも連れて行って下さい。お願いします。
『め~』
お願いします。
ほら、他のみんなも賛成している。今度こそ、あの子が大きくなるまで、みんなで一緒に。

〖了解。ありがとう。きっと喜ぶよ。じゃあ、行こうか〗
また、光が差した。今度は私たちを包み込むように。


そして、今…

「もーもーしゃんちゃち~!おあよーごじゃましゅ!きょうみょ、おいちー、みりゅく、ちょーらいな♪」

前より小さく、更におしゃべりがヘタになってしまったかわいい子は、今日も元気にやってくる。
確かに姿は変わってしまったけれど、それはお互い様。私たちも変わってきている。

《おはよう。サーヤ。今日も元気だね》
「あい!げんき!」

前と違って気持ちが通じるようになった。ご主人の変わり方がすごくて驚いたことを除けば、毎日、素晴らしい日だ。おばあちゃんは居ないけれど、今はたくさんの仲間がいる。

お願いだから、今度こそ、元気に大きく育って。そして今度こそ、一緒に生きよう。ずっとずっと。

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