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265 選手交代。そして、怒らせたらいけないのは?

〖さて、シアに医神。どうしてやりましょうか?〗
ジーニ様が聞く。その表情は…ぶるっ。

〖そうですわね。自分たちが攻撃した者たちが何者なのか、まずは、わからせた方が良いかと…〗
シアも何気に怒ってるものね。
〖分からせるには、まず目を覚ましてもらわないといけませんよ。また治しますか?不本意ですが〗
医神もそうとう嫌そうな顔をしている。
〖冷水でも浴びせたら、起きないかしらね?〗パチンッ
バシャーッと滝のような水を二匹の上に浴びせる?ジーニ様。

〖魔神…あなたは浴びせると言いませんでしたか?あんな大量の水、落とすとしか言えませんよ。もはや凶器です。それにあんなに水浸しにして…〗
〖悪かったわね〗
確かに辺り一面ちょっとした池みたいになっている。その中で呻く二匹。意識を取り戻してきたか?
〖まったく〗
トンっと医神が足先で地面を叩くと
ぼこぼこぼこっ じゅっ

〖〖…………〗〗

今の…思わずシアと一緒に絶句した。
〖医神、あんた、今…〗
〖わざわざ煮えたぎらせてから…〗
蒸発させたわね…

〖はい?あぁ。すいません。つい、いつもの癖で煮沸消毒をしてしまいました〗
しれっと言い切る医神

〖〖………………〗〗

つい?そんなわけ…
ないですよね···?
〖何か?〗にっこり
〖〖…いいえ〗〗
さすが、バートの親友…
敵に回しちゃダメね

〖ところで、あれ、生きてます?〗
そうよね…
じーっとシアと二人で医神を見ると、
〖はーっ〗
医神は、わざとらしくため息を着くと
〖仕方ありませんねぇ〗トンっ
〖少しだけですよ〗
そう言って回復させる。

いやいや、私の水までだったら、ここまでにはなっていなかったと…
〖何か?〗ニタリッ
〖…いいえ〗
怖いわよ…バート二号
〖心外です。私の方が先です〗
〖ごめんなさい〗
つっこむところ、そこなの?

〖お二人とも、その辺で。起きますわよ〗
シアが教えてくれる。見てみると二匹はふらつきながら立ち上がるところだった。

『なんなんだ。なんだと言うんだ』
『あんたたち、何者よ…!』

ピクッ。ジーニ様たち三人の口元や目元がひきつるように動く。
ふーん。起きて第一声がそれなのね。
〖愚か者が。まだ分からぬとは、不敬にも程があります〗
〖森の主と繋がりのある者とは思えませんね〗
医神とシアがこれだけ言っても、考えることすらしないのか、唸りを上げてこちらを睨む二匹。だったら、考えてもらいましょうか?

〖ヒントをあげるわ。森の主や精霊王達でさえ、私達を『あんた』や『貴様』などとは決して呼ばないわ〗
〖ふっ。まして攻撃など、考えもしないでしょうね〗
〖そうですね。普通でしたら天罰を恐れますものね〗
さあ、考えなさい。

あら?でも、昔、我を忘れた誰かさんが、鎮圧に当たった私たちに抵抗して、この辺りを更地にしたことがあったわね?チラリ
『うっ』
うん。いたわね。目を逸らしたヤツが。

ぴゅい?『なんだろ?』
きゅい?『かんじたよね?』
双子が見つめあってます。
「すい、もも?」
『何を感じたの~?』
みんな不思議に思って聞きます。
ぴゅい『なんかね?』
きゅい『ひさちぶりにね?』
ぴゅいきゅい『『おとうしゃん、だめだめ~』』

『うっ』
何故か胸を押えるヤツが一人…

すごいわね。双子ったら、声は聞こえないはずなのに。まあ、傷心の誰かさんは、放っておいて。
『うっ』

さて?この二匹、今のヒントで分かるかしらね?

『バカを言うな!精霊王ですらだと?そんなもの神くらいだろう!』
『そうよ!あんたたちが神だとでも?こんな所にいるわけないじゃない!』

ピクッ
再び目元、口元をひくつかせるジーニ様たち。そして、

『私はあなた方に呼び捨てを許した覚えはありませんわよ』
アイナ様も黙ってなかった。
『まだ分かりませんの?先程あれだけ力の差を見せて差し上げましたのに。やはり手加減はいけませんでしたわね。あなた方を付け上がらせただけだったようですわ』
そう言って地面からジャキンと無数の土の槍を出した。
『『ヒッ』』
二匹は先程何があったのか思い出したのか、声を上げて後ずさった。
『あなた方、なぜ今立てているか分かりますか?まさか勝手に傷が治ったとでも?まさか、そんなこと思いませんわよね?』
アイナ様が問いかける。
『そ、それは』
『私たちの…』
しどろもどろで話し出す二匹。
『なんですの?自分たちの力だとでも?いい加減になさいませ。あなた方を癒したのは、そこにおわす医神様ですわ』
アイナ様、完全にお怒りです。
『な、それじゃ本当に』
『神が?』

やっと分かったのかしら?ここまで言われないと理解できないなんて、ほんとに嘆かわしいわね。

〖…数日前より、私たちが降臨したこの地は、聖域となった〗
私は二匹に話し出す。

『数日前?息苦しさを感じ始めた頃か?』
『この森が聖域に?』

ようやく話を聞く気になったようね。
〖聖域…すなわち神聖な地となったわけだ。お前たち、息苦しくなったと言ったな?〗
威圧を込めて言う。
『う、うう』
『そ、それが何だと?』
この二匹は、私たちが神だと分かっても、態度を改めないのね。
〖はァ、分かりませんか?本当に救いようがないですね〗
呆れのため息と共に、医神が話し出す。
〖神聖な地になったということは、空気も地も、そして、漂う魔素も、何もかもが浄化されます。頭の悪いあなた方にも分かるように言うと、綺麗になったということです〗
チクッと刺すように話をさせたら、天下一品よね?
ギロリ。
ごめんなさい。なんでもないわ。続けてちょうだい。

〖普通であれば、綺麗になった空気や魔素を吸えば、気持ちよくなります。体調が良くなるほどです。普通であれば。分かりますか?普通であればです〗
二度どころか三度言ったわね。
〖けれど、あなた方は息苦しくなった。恐らく、この聖域の中心に近づくにつれ、体も思うように動かなかったはず。私が言っていることに、間違いはありますか?間違いありませんよね?〗
医神が目を細めて、二匹に詰め寄る。
『う、うう』
『な、ない……』
ギロリッ
『あ、ありません』
さすが医神ね。ようやく言葉遣いを改めたわね。
〖聖域の中では心が綺麗な者ほど力を与えられます。逆に心が穢れ、邪な思いを抱くものほど、苦しく居づらくなる。体も思うように動かなくなる。心当たりありますよね?あるはずです。あなた方のことですよ〗
細めていた目を開き睨みつける医神に、二匹は

『ば、バカなっ!我っ…私たちは間違っていない』
『そうよ…そうです!私たちは正当な権利を持って、自分の物を取り戻そうとっ!』

ガラガラガラッ!ピシャーン!!
『『ヒッ』』
ブスブスブスブス
雷が二匹の鼻先を掠め、地面を焦がす。二匹の足先も焦げてるかもね。こんなことが出来るのは…

〖愚か者が…!〗
シア…。バカねぇ、この二匹。一番怒らせたらいけない子を怒らせたわね。あ~あ~。私たちの上だけ暗雲が……
〖お前たちのそれは、醜い支配欲。ここにお前たちのものなぞ、何一つない〗
ピカッ!ピシッ!雷鳴と共にそこかしこで火花が散る
『違う!ここは私たちの物!』
『息子だって私の物よ!』
バシーンッ!
一際大きい雷が落ちる。今度は二匹の間に。
『『ギャンッ』』
堪らず悲鳴をあげる二匹
〖言ったであろう。何一つ、お前たちの『物』などないと!そもそも命は『物』などでは無い!〗
ピシャーン!
あ~あ~。地面が…あとで戻さないと、サーヤたちが泣い…ハッ!

ちろり
ジーニ様が、サーヤたちの方をこっそり伺うと…

「ほわぁ~ぁ!がらがらっ ぴちゃーん!」
お手手をブンブン!ぴしゃーんでバンザーイ!
ぴゅいっ『ごろごろっ』
きゅいっ『ぴかーっ』
お尻フリフリ!ぴかーっでバンザーイ!
『すごいね~』
『『ピカピカしてるね~』』
『ぴんぽいんと!』
『すごいね!』
『すごわざ!』
みゃ~ん!『だれがやってるにゃ?すごいにゃ!』
きゅるるん?『『『エリュさま?』』』
?『きゅるるん『『『シアさま?』』』』
『あれはぁ、シア様みたいよぉ?』
結葉様が複雑そうなお顔で教えてくれます。
「ふわ~あ!しあしゃま、しゅご~!」
パチパチパチパチ拍手です。

『なあ、あれ、焦げてるよな?』
『焦げてるわね。サーヤたちは見えてないのかしら?』
フゥとクゥの疑問の声に、山桜桃と春陽が
『あの、恐らくですが、目線の差かと…』
『僕たちは上から下に見えますけど…その』
言葉を濁す二人の言葉を受けて青葉たちが
『ああ。そうですよね。小さい子は下から上を見てるから…』
『『『見えないんだね…』』』
きゅるる『見えないって、平和なことでもあったのね~』
絹さんの言葉に頷く一同。
すごいすごいとはしゃぐちびっ子たち。
ぽぽちゃんとニャーニャにゃんは思う。
『みんな、大物なんだな』
『すごいにゃね』
『『はあ~あ』』

…全くこの空気とはそぐわない状態だわ。全然、心配すること無かったみたいね。
苦笑いを堪えるのに必死なジーニ様でした。

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