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262 珍しい結葉様

精霊たちからの怒りを聞かされた二匹、それでも尚、何も変わらないらしい。
今も尚、睨みつけてくる二匹に

『…何か言いたそうだよ。緩めてやったら?』
土の精霊が気だるげに言う。

水と氷の精霊が顔を見合わせてから
『いいでしょう』
『ろくなこと言わなそうだけどね』
言いながら、二匹の戒めを緩める。実に嫌そうな顔で

『くっ!卑怯だぞ!』
『そうよ!寄ってたかって動けないのをいいことに!』

途端に喚き出す二匹。流石に精霊たちだけでなく、その場にいた全員顔をしかめる。あれだけ言われて何故、自分たちを正当化できるのか?己の行いを省みることは無いのか?

『卑怯?どの口が言うのだ』
『自分たちの力を履き違え、周りの者を排除してきたお前たちが?』
『ここは平和な森だった。だが、お前たちのおかげで数少ないフェンリルや、狼達は森の中で散り散りになった』
『たくさんいた妖精や精霊達も、お前たちを避けるために森の中に移った。そこをお前たちは面白半分に壊しているんだ』
『お前たちこそ卑劣な愚か者だ』
ギンと吹雪が、かつての平和だった森を思い、もう我慢できないと話し出した。なのに

『強者が弱者を排除しただけだ!何が悪い!』
『そうよ!ひとりじゃ何も出来ない妖精だって、私たちの役に立たせてやってんじゃない!むしろ光栄でしょう!』

あまりにも自分勝手な、あまりにも思いやりの欠けらも無い言い分に、ギリッとみんなが攻撃態勢になったその時、
ミシミシミシミシッという音と共に

『『ギャーっ』』

と、二匹が悲鳴をあげた。
ギンが二匹に巻き付けていた氷の龍で締め上げたのだ。更に
ボキボキボキボキっと骨が数本折れる音が

『『グアーッ』』
と、再び二匹が悲鳴をあげると

『黙れ』
その一言で、二匹を締め上げていた氷の龍は、一瞬で水に戻り、二匹を飲み込み、また締め上げる。先程と違うのは、顔も何もかも全て、水の中に閉じ込めて締め上げているのだ。息が出来ずにもがく二匹に

『どうした。我は大したことないのだろう?ならばその位簡単に抜け出せるだろう?やってみろ』
ギンが怒りを込めて二匹に言い放った。


その頃

「ふへへ~♪もふもふ~♪」
ハクも白雪もモフモフ~

ぴゅいきゅい~♪『『おふとんみたい~♪』』
『ギン様も気持ちいいけど~』
『白雪もきもちいいね~』
だよね~もふもふ~

『え~?フルーもフライもぼくは~?ぼくだってもふもふだよ~?』
ハクがちょっと拗ねてる?ほっぺた、ぷく?

『もちろん』
『ハクも』
『もふもふだよ~』
もちろんだよ~

みゃ~ん『きもちいいにゃ~ん』
『ほんとにとろけそうにゃね~』
きゅるる~ん『『『気持ちよくて』』』
きゅるる~ん『『『『眠くなっちゃうね~』』』』
ね~♪

サーヤたちは、みんなで白雪とハクのもふもふを堪能していた。ちゃっかりニャーニャも入っている。
外の殺伐とした空気とはまったく逆の、ほんわか空気で満たされていた。

きゅるる『そこで寝ちゃダメ』
『そうねぇ。また、剥がせなくなっちゃうものねぇ』
絹さんと結葉様、前に剥がせなくなったことを思い出しちゃった?

「うにゅ。あい~」
ごめんなさい。
ぴゅいきゅい『『は~い』』
『『分かったよ~』』
『『『ねないも~ん』』』
みんなも、何度も言われてるから、ちょっと、ぶすって、お返事しちゃってます。
でも、気持ちいいから、どうしても眠たくなっちゃうんだよ。

『ぼくたちのもふもふ、気持ちいいもんね~。眠くなるの仕方ないよね~?』
その通りだよ!

『くすくす。でも、みんな寝ちゃったらハク、お話し相手いなくなっちゃうわよ?』

おばあちゃんの言葉に、一瞬
『え~?』
って、首をコテンっしてたハクは、
『あっ!そっか~。それは寂しいから、やっぱりみんな寝ちゃダメ~』
って、慌ててます。

みゃ~ん『みんな、そんなに起きないにゃ?』
『ココロだって気持ちいいと起きないにゃよ』
みゃ~『そうだったにゃ~』えへへ

そしたら、今度フゥとクゥが
『『はあ~』』
って、ため息ついて
山桜桃ちゃんと春陽くんが、眉毛へにょってして、
四人は困ったように愚痴····話し出したんだけど

『起きないどころじゃないよな』
『揺すっても引っ張っても起きなくて』
『毎朝大変ですもんね』
『どうしてああなるのか不思議です』
それは、サーヤたちも分かりません。

『絹さんと子グモちゃん達がいなかったら』
『どうなっていたことやら』
『『本当に…』』
それは、ごめんなさい。

ガクンっと項垂れて言う四人に

『そ、そんなかにゃ?』
ニャーニャにゃんのお顔に、信じられない!って描いてあります。

きゅるる『タオルケットのサイズ直したわよ』
きゅるるん『『『ちょっとだけ、ちいさくしたよ』』』
きゅるるん『『『『もう、グルグルならないよ』』』』
絹さんと、子グモちゃんたちが自信たっぷり、えっへん!ってしてます。

そしたら、結葉様も
『ギンの背中で寝ちゃった時も、大変だったわよねぇ』
くすくす笑ってます。

『あ~温泉の帰りだよね~?しっかりお父さんの毛を握っちゃって~、絹さんでもダメだったんだよね~』
「はげちゃびんの、ききだっちゃ」
うんうんとハクと頷きます。

『え、ハゲ?それは困るわね』
白雪もそう思うよね?

「あい!もふもふは、しぇいぎ!はげちゃびん、じぇったい、めっ!」ふんすっ
と、力を込めて力説です!

『うふふ。サーヤのもふもふ好きはすごいものね』
「あい!」
もふもふは、癒しだよ!

その時、結葉様の顔がぴくってなりました。

「うにゅ?むすびはしゃま?」
どうしたの?


外のピリピリした様子とは対象的な、のんびりほわほわしたサーヤたちを見ていたら、外で変化が。
そちらに気を取られたことを、サーヤが敏感に感じ取られてしまったわ。

『ん?ああ、ごめんなさいねぇ。みんな、ギンの活躍が始まったみたいよぉ』
思わず、正直に答えてしまったわ。でもこれ、ちびっ子たちに見せていいのかしら~?悩みどころだわ~。

それはちょうど、ギンが氷の龍で二匹を締め上げたところだった。


う~ん、どうしたらいいかしらぁ?困ったわぁ~

珍しく悩む結葉様でした。

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お読みいただきありがとうございますm(*_ _)mお気に入りなどもありがとうございます。

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