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260 ジーニ様は見た


〖うふふ。楽しそうね〗

あちらがだいぶ賑やかになったみたいね。何よりハクが元気になって良かったわ。あの子の泣いてるところなんて見たくないもの。やっぱりハクはのんびり笑ってないとね。

ハクのおばあちゃんもみんなに馴染めたようだし良かったわ。サーヤのかわいい姿をそばで見れないのはとっても悔しいし悲しいけど、仕方ないから後で映像で見ましょう。シアもいるしね。
私の撮影魔法に抜かりはないわ!


さてと、私たちの可愛い子たちを泣かしてくれたこの二匹、どうしてくれようかしら?

今、ボロボロになった二匹を医神が癒してるけど、果たして反省の言葉は出るかしらね?
出るか出ないかどちらに掛ける?と聞かれたら、出ないと答えるけどね。万が一反省の言葉が出れば多少は手加減してあげようかしら?

吹雪はもっとやりたい感じだけど、ここはやっぱり父親であるギンの出番よね。どんな風にするつもりかしら?楽しみだわ。

あら、そろそろ治療が終わるかしらね?
医神が戻ってきたわ。

〖魔神、あらかた治療は終了です。まあ、完全には治してませんけどね〗フッ

〖かまわないわよ。むしろ完全に治してあげることはないわ。反省してもらうためなんだから。あらでも、反省の言葉が出るなら少しは手加減してあげようかと思ってたんだけど、あの目付き…〗

いつもは優しいジーニ様、途中までは医神様の言葉に軽く返していたが…

〖神に治してもらいながら、あの目…反省なんて欠けらも無いわね〗

ガラリと雰囲気が変わった。怒りと呆れで声まで低くなっている。

〖あの者達、よく聖域の中にいられますね。不思議です〗
いつもは温和なシアにまでこんな険しい顔をさせるなんて、相当よね。

〖ここが聖域になる前からいたからというのもあるでしょうけどね。この地を守ることに執念?執着?のようなものを感じるわね。ただ…〗
言葉を切ったジーニ様に医神エルンストが尋ねる

〖ただ?〗

〖ただ、【守る】と【支配する】をはき違えた、間違えた正義だけどね〗
もはやあれは支配欲だ。自分たちが『守ってやっているんだ』『だから従え』これはもはや醜い支配欲。

〖それを正義と呼ぶのも嫌ですわね〗
〖同感です。醜いですね〗
シアも医神も同じように思っているのが分かるわね。

『なんだと言うんだ!見たことも無いヤツらがここでデカい顔をして、何故正当な血筋の我らがこんな目にあっているのだ!』
『そうよ!ここは私たちの物よ!あんた達こそ出ていきなさいよ!』

呆れた。喋れるようになって第一声がコレなのね。しかもこの口ぶり、神三柱を目の前に気づかないどころか自分たちが上だと思っているようね。

〖あれはダメですわね〗
〖ええ。節穴どころか腐ってますね〗
〖嘆かわしいわね〗
私たち三人は神気を解放する。少しよ、少し。

『な、なんだと言うんだ。お前たちもここにいたいなら従え!』
『そうよ!だいたいあんた達どこから来たのよ!』

震えてるくせにまだ言うの…呆れてモノも言えないわね…

グルル『愚かな…この気を浴びてなお分からぬとは、どこまで…!』
ガルル『まさかここまで腐ってしまったとは…ここまでにしてしまったのには我らにも責任がある。分かるな、息子よ』
グルルゥ『ああ。最早このまま好き勝手させる訳にはいかぬ。これでは良くしてくださっている神々にも申し訳が立たぬ!』
ガルゥゥ『その通りだ』

あらあら。珍しくギンが唸り声を上げているわね。吹雪もだけど。

〖森の主、先代。私たちは大丈夫よ。まあ、腹は立ってるからあなたたちの後に発散させてもらうわ。だからね、遠慮なくお先にどうぞ〗
まずは父親に譲らないとね

『こやつらの所業、誠に申し訳ございません。お言葉に甘えまして。お先に…』
〖ええ。思う存分やりなさい〗
『はい。ありがとうございます』
こんな時でも礼儀を忘れないギン。流石ね。それにひきかえ

『なんだ偉そうに!お前もなぜそんな奴らに従っている!』
『情けないわね!よそ者に従うなんてやっぱりあんたなんて弱いんじゃない!やっぱり私こそがこの森の主よ!息子も森も私たちが…』

みんながギリッと音がしそうなほど拳を握りしめた時

グルルゥ『だまれ』
ぐおぉぉ~っと轟音と共に大量の水が生き物のように二匹に襲いかかった

『なっ!?』
『きゃあっ?』
ギリギリッミシミシッ

『お~俺たちの知る龍みたいだなぁ』
ゲンが感心してるわね。
水の龍が自らの体を捻りあげるように二匹を締め付ける

『この方たちがどれ程の尊い方々かも分からぬ愚か者が、この森を治めるなど、息子を自分の物など戯れ言を吐くな』
ギリギリと締め上げるギン

『何を言うか!一人では何も出来ぬ出来損ないが……!』
『そうよ!どうせ今だって!』
解くことも出来ないくせに喚き散らす二匹に

『失礼なヤツらですね。我らはまだなんの力も貸してはいませんよ』
『そう。純粋にこの森の主だけの力。水のと私の力を貸さずとも…見せてやるがいいわ。主よ』
水の精霊と氷の精霊が言うと

バキバキバキバキッと音をたてて水が凍っていく。やるわね、ギンも。

『くっこんなもの!』
『効かないわよ!』
まったく。救いようがないわね。そう思うのは私だけではないようだけどね。

『抜け出せもしないのによく言うな』
『ほんとに』
『森の主。あいつら口を塞いで良いか?』
『ずるいぞ。私もやる』
精霊たち出番がなくて物足りないみたいね。

『ああ。好きにしてくれ』
ギンが二人の精霊にそう伝えると
『では、遠慮なく』
『フフ。まずは軽く。お楽しみは後にが定番よね』
そう言うと二人ともそれぞれ水と氷の輪を作り、二匹の口に嵌めた。今はまだ緩く。

『これが何だと言うんだ?』
『何も無いじゃない』

『フッ。バカですね』
『だから、お楽しみはこれから、よ』
ギリッと一気に締め付ける。すると、直ぐに緩めた。

『気をつけた方がいい。高速回転する水は刃と同じ』
『あら、それもいいわね。私は氷の刃が飛び出すようにしたんだけど、そうね?』

楽しそうに二匹に見えるように形を変える氷の輪
『うん。なかなかじゃない?細かい歯をたくさん付けて回転させれば…』
ギュイーンッ!!

『『ヒッ!』』

わざと高速回転させる精霊達。なかなかいい性格してるわねぇ。
あっそうそう。今更だけど、ヤツらに聞こえないはずの妖精や精霊の声は、面白いから私が聞こえるようにしてあげたわ。

『『フフフ』』

〖うふふふ〗

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