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21章 アルバイト開始

 ミサキはアルバイトするために、焼きそば店にやってきた。

「ミサキさん、今日はお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 他人の前で働くのは、初めてである。それゆえ、大いに緊張していた。

「今日は注文を取ってください」

 皿洗いを任されると思っていただけに、意表を突かれることとなった。

「注文ですか?」

「はい。お願いします」

 食器を洗えない、料理を作れないとなると、できることは限られる。

 ミサキがテーブルに姿を見せると、10歳くらいの男の子が大きな声を出した。

「大食いガールだ」

 事実にもかかわらず、心に刺さるものがあった。大食いといわれるのは、女性としては好まし
くない。

 25歳くらいの男性に、声をかけられた。

「ミサキさん、ここで働くんですか?」

「はい。ここで、仕事をすることになりました」

「仕事、頑張ってね」

 エールを送られたことで、仕事のモチベーションはアップする。

「ありがとうございます」 

 20歳くらいの女の子グループから、呼び出しを受けることとなった。

「ミサキさん、注文をお願いしたいです」

「わかりました」

 紺色の髪の毛をしている女性が、焼きそばの注文をする。

「ミサキさん、焼きそばを4人前ください」

「かしこまりました・・・・・・」

 初めてということもあって、体が緊張で震えていた。

 注文を伝えようかなと思っていると、3人組の女の子に声を掛けられる。

「ミサキさん、注文したいです」

「かしこまりました・・・・・・」

 言葉遣いについては、一夜漬けで叩き込ませた。それゆえ、できているのかはわからない。

「ミサキさん、塩焼きそばを3人前」

「かしこまりました」

 頭を下げたあと、キッチンのほうに足を進める。緊張しているのか、ロボットが歩いているみたいだった。

「シノブさん、焼きそば4人前、塩焼きそば3人前です」

 一息つけるかなと思っていると、

「ミサキさん。お客様に水を入れてください」

 といわれた。注文することばかりに意識を取られて、肝心なことを忘れていた。

「すみません。すぐに水を入れます」

 ミサキは慌てて、コップに水を入れる。シノブはその行動に対して、

「ゆっくりでいいですよ」

 と優しい声をかける。

「水をこぼす、食器を割ったら手間が増えます。それを避けることが、最優先となります」

 ミスをすることで、作業量を増やすことになる。失敗しないことが、仕事の最優先事項となる。

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