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コンビニおもてなしは今日も大繁盛

「ありがとうございました!」

 店を出ていくお客さんに、僕は笑顔で頭を下げました。
 今日も、コンビニおもてなし7号店には多くのお客さんが来店してくださっています。
 レジに立っている僕は、

「さぁ、次のお客様、どうぞ!」

 先ほどレジをすませたお客さんの後ろに並んでいたお客さんに笑顔で声をかけました。

「うむ、よろしく頼むわい」

 そう言ってレジの上に買い物カゴを置いたのは、全身黒ずくめの鎧に身を包んだ鬼人さんでした。

「あぁクロさん、いつもありがとうございます」

 この鬼人さん、名前をクロさんといってリバティコンベっていう辺境都市から出向みたいな感じでここウリナコンベにやってきているんです。
 元々は行商人として荷馬車隊を率いてこの世界の国土を北に南に東に西に、と、縦横無尽に度をしながら商売をしていたそうです。
 その冒険譚をいつかのんびりと聞かせてもらったら、すごく楽しいんじゃないかなって思ったりしているんですよね。

「がっはっは。ワシの話でよかったらいつでも聞かせてやるぞい。なんなら、リバティコンベの領主が王都を追放された話から聞かせてやろうかの?」
「え? 追放?」
「そうじゃ。リバティコンベの領主のサファテは若いんじゃが苦労人でな、実家を勘当されたりしとるんじゃが、まぁ、ホントいい奴でな、王都の貴族家の出身のくせにワシら亜人種族を差別することもせず、それどころか一緒に酒を飲んだりするやつでな」

 そう言うと、クロさんは再び豪快な笑い声をあげていった。
 結構大きな声なんですけど、うるさいというよりもむしろ楽しくなる声なんですよね。

「へぇ、それは今度ぜひ詳しく聞かせてもらいたいですね」
「うむ、なんならサファテにもこの店に来るように声をかけてみるわい」
「えぇ、ぜひお願いします」

 そんな会話を交わしているうちのレジ作業が終わり、クロさんから代金を受け取った僕は商品を手渡しました。

「うむ、ではまた来るわい」
「はい、よろしくお願いします」

 笑い声を上げながら店を出て行くクロさんなんですけど、

「ダーリン、待ってたでござるよぉ」
「がっはっは、待たせてすまんなブルアよ」

 そこで、クロさんの腕に抱きついていった肌が青い女性……頭に角が生えている鬼人さんなんですけど……この人、クロさんの彼女なんですけど、イエロの実のお姉さんでもあるんですよね。
 なんか、意気投合して今では同棲している2人だそうなんですけど、それを聞いたイエロは、

「あのブルア姉様が……お、男と……?」

 目を丸くしてしばらく動けなくなったほどびっくりしていたんですよね。
 まぁでも、仲良きことはともいいますし……そんな事を考えながら、僕はクロさんとブルアさんの後ろ姿を見送っていました。

「次、いいかしら?」

 そう言って、次のレジに商品の入ったカゴを……って、これはまた見事にスアビールばっかりですね。先日新発売したばかりのスアビールストロングもかなりの量入っています。
 スアビールは大人気でして、すぐに品切れになってしまうもんですから購入制限を設けているんですけど……

「あの、お客さん……すいません、これだと購入制限を超えていて……」

 そうなんです……カゴの中のスアビールの本数は明らかに購入制限を超えていたんです。
 すると、その女性……って……あれ? この人、どこかで見たことがあるような……
 僕がそんな事を考えているとその女性は、

「あぁ、大丈夫大丈夫、人はいるから」

 そう言うと、その女性は右手を突き出して詠唱しはじめたかと思うと、転移ドアを召喚したんです。

「あぁ!?」

 ここで僕はやっと思い出しました。
 この女性、バテアさんと言う転移魔法が得意ま魔法使いさんでして、スアのお弟子さんなんですよ。
 やっとそのバテアさんの名前を思い出した僕の前で、バテアさんが転移ドアの扉を開けると、中から小柄な女の子達が姿を現しました。

「さーちゃん、言われて来たけどここどこニャ?」
「あら? さわこの世界のコンビニに似てるわね」
「……シロ、よくわかんない」
「うむ、妾もよくわからないのじゃ」

 小柄な女の子達は、店内を見回しながらキョロキョロしているのですが……えっと、どうみてもみんな未成年にしか見えないというか……

「そそそ、そんなことないわよぉ、ベルもエンジェもシロもロッサも見た目は子供、中身は大人なんだから」
「さーちゃん、ベルは子供ニャよ?」
「ダー! ヤルメキススイーツとか言うの買ってあげるから黙りなさい! ベル!」

 大慌てしながら猫人っぽい女の子の口を押さえながら愛想笑いをしているバテアさん。
 まぁ、スアのお弟子さんですし……

「今回だけですよ」

 僕はバテアさんの耳元で囁きました。
 それを受けてバテアさんは、苦笑しながら何度も頭をさげていました。

 そんなわけで、バテアさんは5人分のスアビールと、お駄賃代わりのヤルメキススイーツを購入して転移ドアで帰宅していかれました。

「バテアさん、みんなと一緒にどこに行っていたんです?」
「あぁ、さわこ。ちょっとね、変わったお酒を……」

 バテアさんが転移ドアの向こうにいた女性と何やら会話を交わしていたところで転移ドアが消えていきました。
 転移ドアの向こうにいた女性……気のせいか、キモノを着ていたような……

 僕が、先ほどまで転移ドアがあった場所を見ていると、

「よう、タクラ店長。久しぶり」

 熊人の男性が笑顔で入店してこられました。
 その後方、三歩下がって、犬人の女性が付き従っておられます。

「あぁ、リグドさん、クレアさんお久しぶりです」

 このいお2人なんですけど、南方にあるドレの街ってところで酒場を切り盛りしているご夫婦なんです。
 夫婦とはいえ、奥さんのクレアさんはまだ二十歳前でして、50を越えているリグドさんとはかなりの年の差夫婦なんですけど……リグドさんってば、筋骨隆々で年齢をまったく感じさせないんですよね。
 確実に僕より若く見えます、はい……

「あぁ、タクラ店長。今日はリバティコンベの地下迷宮にエンキ達を特訓で連れてきたついでで寄らせてもらったんだけどよ、あのスアビールはあるかい?」
「あぁ、スアビールですか、はいはいありま……」

 僕が笑顔で振り向くと……

「パパ、さっきのバテアさんがたくさん買っていかれたので、在庫がありません」

 パラナミオが申し訳なさそうな表情を浮かべていたんです。
 
「あ~……すいません、さっき大口のお客さんがきちゃって……」
「あちゃあ、そりゃ残念」

 リグドさんは、眉をしかめたものの、

「じゃ、みんなの土産にスイーツでも買っていくか。ここの店のスイーツは店のみんなも大好きだからな」
「……うっす」
 
 リグドさんの言葉を受けて、奥さんのクレアさんが即座に買い物カゴを手に取ってヤルメキススイーツコーナーへと駆け寄っていきました。

「そういえばタクラ店長、このあいだの新商品は売れてるかい?」
「あぁ、熟成ビーフオムレツカレーですね。おかげさまでよく入れています。そういうリグドさんの酒場でも新しいカレーを提供されているんじゃなかったでしたっけ?」
「あぁ、リグドの肉祭りカレーって言うんだが、肉増量でこっちも大盛況だ」
 
 ニカッと笑うリグドさん。
 そんなリグドさんに、僕も笑顔を返していきました。

 そんな僕とリグドさんの前では、クレアさんが

「……カララにはこれっすかね……いや、こっちの方が……」
 
 真剣な眼差しでスイーツを選んでいるところでした。

 いつの間にか、店内には多くのお客さんがお見えになっていました。

 魔王ビナスさんの内縁の旦那さんと、その奥さん達もいますね。

 太めの騎士風の男性と、鎧に身を包んでいる女性のコンビ。

 確か、サーカスを見世物にしていた人じゃないかな、あそこにいる人は。

 あぁ、女子プロレスみたいな催し物を披露していた女性達の集団もいますね。

 あっちには、タクシーの運転手みたいな服装をした男性と、小柄な魔法使いさんのコンビ。

 向こうには、子供達に囲まれている魔法使いのお姉さんもいるし。

 あ、ヨーコさんとラテスさんがコンビニおもてなしの転移ドアをくぐってテマリコッタロールケーキを届けに来てくれて、クローコさんが対応してくれています。

 そんなお客さん達のおかげで、今日もコンビニおもてなしは大賑わいです。
「パパ、今日も頑張りましょう!」
 パラナミオが笑顔でガッツポーズをしています。
 その横には、転移魔法で姿を現したスアもいます。
 そんな2人を笑顔で見つめていった僕は、
「うん、そうだね。今日もみんなで頑張ろう」
 そう言いました。

 異世界で営業しているコンビニおもてなし。
 さぁ、今日も頑張らないと!

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