12章 挑戦開始
焼きそばが出来上がるまでに、2時間近くもかかった。そのせいか、お腹が空き始めていた。なんでもいいので、早く食べたい。
「焼きそばができました」
ミサキの前に現れたのは、大盛りのどんぶりに入れられた焼きそばだった。お皿を想像していたので、意外な印象を受けた。
「焼きそばの量が多すぎませんか?」
「1人前で、2人分の麺を使用します。10人前は、20人分ということになります」
10人前といっておきながら、実際は20人分の量があるのか。ミサキの心の中で、詐欺の2文字がよぎることとなった。
大食いできる胃袋だとしても、20人前の焼きそばはきつい。ミサキは対決を始める前に、お金を払おうかなと思った。
「大食いの焼きそばは、焼きそば、ネギだけとなっています。豚肉、キャベツ、もやしなどは入っていません」
焼きそば、ネギだけで20人前を食べる。大食いチャレンジは、拷問さながらだった。
「トイレなどはだいじょうぶですか?」
シノブの声掛けに対して、
「はい。だいじょうぶです」
と答える。
「トイレにいった場合については、チャレンジ失敗とみなします。その部分については、予めご了承くださいね」
トイレに行くことで、食べたものを吐き出すことができる。不正はやりたい放題となる。
「わかりました」
「砂時計を置いたら、食べ始めてください」
シノブは砂時計をセッティングした。「ミサキ」VS「20人前の焼きそば」の、戦いの火蓋が切って落とされた。
ミサキは手を合わせて、神様に感謝をいった。
「いただきます・・・・・・」
焼きそばをすすると、柔らかい塩ソースの香りが広がる。大人向けというよりは、子供向けの焼きそばとなっている。そのこともあって、とっても食べやすかった。
「おいしいです」
ミサキは大食いモンスターさながらに、塩焼きそばをかきこんでいく。現実世界で食べられなかった鬱憤を、全力でぶつけようとしていた。