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250 サーヤが泣いたら

飛び立つアルコン様たちを見送っていると

『うぅぅぅ』
『うっ』
ガラガラガラ
呻き声と共に瓦礫が崩れる音がする。みんなでそちらを向くと、ボロボロになった二匹が立っていた。

『お前たち許さんぞ。森を守る私たちにこのような真似!必ず後悔させてやる!』
『そうよ!必ず前の過ごしやすい森に戻して息子も取り戻すわ!』

なるほど、森を守る、息子を取り戻す。言っていることは正義の味方みたいだな。それなのに聖域の空気が苦しいということは、守ると言いながら、これは…
『支配欲』……か?
おいちゃんがボソッと言います。

〖そうね。その通り、支配欲ね。醜いわ。はぁ…力ある者は責任を伴う。それを履き違え、力の使い方を間違えば…〗
『こうなるってことか』はぁ…
嫌なものを見たというお顔のジーニ様に、ため息ついてるおいちゃん。そっかぁ。こういうことなんだね。気をつけなきゃ。

『フェンリルは聖獣にも神獣にも成りうる気高い種族。それが今や精霊の声すら聞くことが出来ぬほど落ちぶれるとは…同族として、血の繋がる者として情けない。神やこの地に住まう者たちにも申し訳がたたぬ』
吹雪じぃじが辛そうに言いました。ん?精霊の声が聞こえないって言った?

『何を不思議そうな顔をしておる。この森の妖精、精霊たちは既にお前たちを見限っておる。誰もお前たちに力を貸すことは無いだろう』
吹雪じぃじがそう言うからみんなでこっそり大人たちの足の間から二匹を見ると、ぽかんとした顔をしてました。間抜けな感じです。

『自覚がなかったのか…呆れたものだな。これだけ妖精、精霊が溢れる森で姿も見ない声も聞こえないことを疑問に思わなかったとは』
情けないと吹雪じぃじとギン様がため息つきながら首を降ってます。

『う、うるさい!そもそもそんなモノに頼る方が弱い証拠ではないか!自分の力があればそんなモノ必要ないわ!』
『そ、そうよ!そもそもそいつらだって私たちが守ってやってるのよ!私たちの言うことを聞くのは当然じゃない!それを何よ!偉そうに!見限るですって!?何様なの!?』

むー!むかむかぷんぷんするー!妖精さんも精霊さんもものじゃないにー!
ハクのおばあちゃんにもひどいことしたくせにーっ

〚ガマンよ!ガマンしてサーヤ〛
〚そうだぞ。ムカつくのは俺たちも同じだけどジーニ様たちに任せよう!〛

フゥ~クゥ~だってぇ。ぽろぽろ

〚泣かないでサーヤ〛
〚ありがとなサーヤ〛

うぎゅー妖精さんも精霊さんもお友達で家族なのにぃ。ぽろぽろ

〚〚サーヤ·····〛〛ぎゅう
ぴゅいきゅい『『サーヤ~』』ぽろぽろ
『『ないちゃだめ~』』ぽろぽろ
きゅるるん『『『ぼくたちも』』』
きゅるるん『『『『ないちゃうよ~』』』』
ぼろぼろぼろぼろ

さて、このサーヤの涙に気づいて怒り心頭なのは大人たちだけではありません。一緒になってボロボロ泣いているモモたちちびっ子達だけでもありません。

そう、この森の妖精や精霊たちです。

愛し子が自分たちのために泣いている!今まで先代や、ギンとハクの肉親だからと我慢していたが、もう我慢する必要は無い!
そうなれば…

ビュオ~ッ『久しぶりね、森の主』
突風と共に現れる一人の女性

『お主か、最近は親父の方にいてくれたようだな』
『あら。やっぱり分かってた?そうよ。連絡は重要でしょう?お気に入りのあなた達のためだもの』くすくす

うわぁ~色っぽい精霊さんだ~
「きりぇ~」
思わず声が出ちゃったらみんなにバシッと口を塞がれちゃいました。ぶー

そんな状態に気づいた色っぽい精霊のお姉様に思いっきり、バッチーン!とウインクされちゃいました。ほわ~色っぽい~。

『それでね?この状況、森中の妖精、精霊が見てるのよ。もちろん、こいつらが吐いた今の暴言もね、私がしっかり届けてるわ』
そうお茶目に話してた精霊さん、向きを変えた途端···うわっすごい雰囲気がガラッと変わった。

『精霊樹の精様、土の精霊王様、お初にお目にかかります。この森の風の精霊です。そして、魔神様。この度はこの森の住人がご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません』
スっと姿勢を正して頭を下げる風の精霊さん。

〖あなたが責任を感じることではないわ〗
『そうよぉ。あなたのせいじゃないわぁ』
『そうですわ。それで?何か私たちに言いたいことがあるのでしょう?』
言いたいこと?なんだろ?

『はい。此度の暴言を含め、今までの経緯で怒りを覚えている者は少なくありません。私たちこの森の妖精、精霊たちもあの者達に一矢報いたいのです。ですが、私たちを物としかみないあの者共に私たちの声は聞こえません。そこで、森の主と先代と共に戦うことをお許し頂きたいのです。どうかお願い致します』
よほど酷い目にあったんだね。みんなだなんて。ジーニ様たちは·····うわぁ~すっごい笑顔だ~ぁ

〖もちろんよ〗ニィッ
『森を壊さないようにねぇ~』ふわり
『ふふっ楽しみですわ』にこ

ぞくぞくぅっ
え?なんだろう?笑顔と言葉の内容が怖い?

『ありがとうございます。では、さっそく』

ビュオ~ッ
『みんな、お許しを頂いたわよ』
どうやら風で言葉を届けたようです。たちまち周りは

「ふわぁ~」
バシッまた口を塞がれました。もがもが。
空も地上も色とりどりの妖精さん精霊さんがたくさんです。しかも、何だかみんなやる気満々みたいです。

だ、大丈夫かな?

☆。.:*・゜☆。.:*・゜
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