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26. オフィーリアの剣②

 26. オフィーリアの剣②




 私たちはまずオフィーリアさんがいる家に向かった。家は木造で、それほど大きくはないが、中々に立派だ。ノックをしてみる。すると返事があり、ドアが開く。するとそこには女性が立っていた。

「あら?どちら様?」

「突然すみません。私たちは『なんでも屋』です。エルメスさんの依頼で来ました。ちょっとオフィーリアさんにお話がございまして。よろしいでしょうか?」

「ああ。エルメスちゃんの?話は聞いているわ、とりあえずどうぞ」

 とりあえず中に入れてもらった。先程の人は村の住民の人でオフィーリアさんをみんなで見ているらしい。部屋の中にはベッドに寝ている女性がいた。恐らくこの人がオフィーリアさんなのだろう。

 その女性は痩せ細っており、顔色は良くない。病気なのかしら?するとその女性が口を開く。声は透き通るような声で、聞いてるだけで心地よい。

 でもどこか寂しそうな表情だ。この人は一体何を思って戦っているのだろうか? そう思いつつ、私はオフィーリアさんに声をかけた。

「初めまして。私はアイリーンと言います。こちらはエイミーとミリーナ。」

「ずいぶん可愛らしいお嬢さんたちだこと。私に何か用事かしら?」

「はい。実はですね。あなたのことを心配して助けてほしいと言依頼があったんです。」

「そう……エルメスかしら?あのこは毎日ここに来てくれるからね。それはありがたいわね。」

 オフィーリアさんは微笑むが、やはりどこか寂しそうな雰囲気がする。そして私はベッドの横の壁に立てかけてある一本の「剣」に目をやる。その剣の刃はボロボロ。もう剣としての役目を果たせるのかも分からないくらいの状態だ。

「その剣……とても大事にしているようですね。」

「分かるのかい?これはね……大事な剣なんだよ。あなたたちの話しって魔物討伐の件かい?それなら帰りな。私はやめるつもりはないからね」

「そんな身体じゃ、魔物討伐なんて……」

「それでも。やめるつもりはない。」

 オフィーリアさんの意思はとても固かった。その理由を教えてくれそうにもないし、ここはもう少し調べる必要があるわね。そんな事を考えているとエイミーが話し出す。

「ね!ミリーナ!オフィーリアの体調見てあげたら?治癒魔法士なんだし!」

「え?あーそだね。おばあちゃん見てもいい?」

 するとオフィーリアさんは少し考えて答えを出したようだ。まぁ断られてもエイミーなら無理やり見そうなんだけど。オフィーリアさんは承諾してくれたため、早速診察を始めることにした。

「ふむ。おばあちゃん無理しすぎだね?しばらく休養を取れば、また元気になるよ!そうだ!おばあちゃんのお薬を作って持ってきてあげる!」

「良かったね。オフィーリア!」

「……そうさね。それじゃその薬を楽しみにしているかね優しい治癒魔法士さん?」

 オフィーリアさんは笑顔でそう言うと、ミリーナの頭を撫でてくれた。とりあえず一通り話して家を出る。まずは魔物と戦う理由を調べないといけないわね。

「まずは村の住民に話を聞きましょうか。あの身体で無理されても困るしね。」

「この依頼はアイリーンがリーダーでやり遂げよう!決めた!」

 エイミーは私にそう提案してきた。この野菜娘ただ楽したいだけだよ絶対に。まぁ良いか。確かに今回はエイミーの言ったとおり、私がメインでやってもいいかな?と思ったからだ

 私たちは村人に聞き込みをする。まずは村の広場で話を聞くことにした。そこで情報を集めるのだ。

 すると色々なことがわかった。まずオフィーリアさんが倒そうとしている魔物についてだが、どうやらこの村の近くの森に昔から生息していて、特徴は大型の狼で黒い体毛に覆われているらしいが名前はわからないそうだ。

 そしてオフィーリアさんについて。彼女は以前は有力貴族の令嬢だったそうだ、そこで1人の騎士の男性と恋に落ち、駆け落ち同然にこの村に移り住んだらしい。その後、騎士の男性は魔物と戦い傷つき亡くなったそうだ。

 それからというものオフィーリアさんは一人で戦い続けているらしい。いわば仇討ち。私が部屋で見たあの「剣」は亡くなった騎士の旦那さんのものだったのね。

「彼女はずっと戦い続ける。これから先もその魔物を倒すまではね。今日はもう遅いからエルメスさんの家に泊めてもらいましょうか。」

「それがいいね!明日はオフィーリアの薬を作ってあげて、それからその魔物を倒しにいこう!」

「結局エイミーは何もやらないじゃない。」

「アイリーン!またパプリカみたいなこと言って!ひどい!」

 そんないつものやり取りをしていると突然ミリーナが口を開く。そういえばミリーナはずっと大人しかったな?何かあったのかしら?

「ゴメン……2人とも……」

「どしたのミリーナ?そんなしわしわのレタスみたいな顔しちゃって?」

 しわしわのレタス。可哀想だよその例えは。でも本当にどうしたのかしら?そのままミリーナに聞く。

「何かあったのかしら?」

「あたし……治癒魔法士として最低なことした。本当は、もうおばあちゃんは助からない。……嘘ついたの」

「えっ助からない!?もう長くないってことなの!?」

 エイミーのその発言にミリーナは黙って頷くだけだ。そうか。だからミリーナはおとなしかったのか。私はミリーナの頭に手を置いて撫でながら話す。

「ミリーナ。オフィーリアさんは気づいていると思うわよ。だから気にすることはないわ。」

「でも……あたし、こういうの初めてで、何て言ったらいいか分からなくて……」

「それにあなたがそれを言わなかったのは、きっと私たちのことを思ってのことだと思う。優しい子ね。ありがとう。」

「うん……。」

 ミリーナは泣き出してしまった。余程怖かったのだろう。私はミリーナを抱き締め背中を擦りつつ、ミリーナが落ち着くまでその場に一緒にいた。しばらくして落ち着いたミリーナを連れて私たちはエルメスさんの家に戻ることにしたのだった。

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