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15. おしゃれになります

 15. おしゃれになります



 時間は早朝。もうここの生活にも慣れてきたかしら。私はカーテンを開け、裏庭のほうの窓を開ける。するとそこにはいつも通りあの野菜娘がいる。

「あっ!おっはよ~!アイリーン!髪ボサボサだよ!」

「ちょっと言わないでよ!恥ずかしいじゃない!」

 エイミーはそう言いながら私に大きく手を振る。この子は本当に元気だなぁ。私はそんなことを考えながら顔を洗いに行く。今日も一日頑張ろう!

 私はすぐに裏庭に出てエイミーの作業を手伝う。今日の朝の作業は畑の水やりと雑草抜きね。水やりをしている最中に昨日、ミリーナにお願いして作ってもらった肥料が効いているのかすごく土が良い匂いがする。なんかこう、落ち着く匂い。そのせいか、ついついぼーっとしてしまう。

「ねえねえ、アイリーン」

「ん?何?」

「昨日の夜のこと覚えてる?これ終わってからでいいよね!私楽しみ!」

「えっ!?あ……あれ本気だったの?」

「ぶぅ~!なんで信用してないのさ~」

 昨日の夜。この野菜娘はいきなり私の部屋にきて『アイリーンって大人の綺麗なラディッシュだよね!私もおしゃれしたい!服を買いたいから付き合って!』と言ってきたのだ。

 正直びっくりしたけど、エイミーも女の子だ。素材は悪くはないと思うし、確かに可愛い服を着たところは見たことがない。まぁ私も買いたい魔法書物があったから承諾したんだけど……。まさかこんなことになるとは思ってなかったわ……。あとラディッシュってしつこいわねこの子。

「わかったわよ。じゃあ終わったら一緒に行くから。ほら、水あげるの早く終わらせるわよ」

「やったー!約束だからね!絶対だよ!絶対だからね!絶対絶対だからね!」

「はいはい」

 そして私たちは黙々と水やりを続ける。朝の仕事を終えた後、私たちは着替えて山を降りて近くの街へ繰り出すことにした。

 街の大通りを二人で歩く。お店には色とりどりの洋服や装飾品が並んでいて、見ているだけでも楽しくなる。

「アイリーンと買い物なんて初めて!なんか気持ちがギュッとしたオニオンだね!」

「は?オニオン?どういう意味よそれ」

「オニオンはオニオンだよ~!」

 また出た。まったく意味がわからない、でも考えても無駄だから気にしないことにしないと。しばらく歩いていると一際目立つお店が目に入る。看板には『ランジェリーショップ』と書かれている。

「ねぇねぇアイリーン!ここ入ろ!」

「うぇ!?ちょっ……ここ……」

「いいから入るぞぉー!!」

 私は無理やり手を引かれ店内へと連れていかれる。痛いって!やっぱりこの子馬鹿力なのよ……店内に入るとエイミーは目を輝かせながら下着を選んでいる。

「エイミー。あなた服を探すんじゃなかったの?」

「まずは勝負下着から選んだほうがいいでしょ~!勝負するんだから!」

「あなた絶対に意味分かってないでしょ……?」

 しばらくエイミーは下着を選んでいたが結局買わなかった。その後、他のお店に行き、エイミーの服を買うことにする。

「ねぇアイリーン!私はどういうのが似合うと思う?」

「そうね……」

 エイミーはいつも農作業の時に着るオーバーオールのような服しか着ていない。とりあえず無難なやつでいいかしらね。私は近くにある白のワンピースを選ぶ。

「これでいいんじゃないかしら?試着してみたら?」

「うん!着てみる!」

 店員さんを呼び、エイミーは試着室に入ろうとする。その時、ふと視界の端にあるものが映った。それはショーケースの中に飾られている綺麗なネックレスだった。

(きれい……)

 私は吸い寄せられるようにその商品を手に取る。これはペンダントトップに小さなルビーがついているものだ。これなら普段使いもできるし、服の下につけても目立たないだろう。それに何よりとても可愛い。値段もそこまで高くないし、私も買っちゃおうかな……。

「あれれ?アイリーン何してんの?」

「ひゃっ!?べ……別になんでもないわよ!ほ……ほら!さっさと着替えてきなさいよ!」

「え~?なんで顔赤いの~?」

「うるさいわね!いいから早く行きなさいよ!」

「もう!わかったよ~!もうアイリーンはすぐパプリカみたいなこと言う!」

 そう言って彼女はカーテンを閉めて着替え始めた。数分後、カーテンが開かれエイミーが現れる。

「どう?アイリーン!似合ってる?」

 そこには普段とは違う雰囲気のエイミーがいた。白いワンピースにピンクのカーディガンを着て黙ってればそこそこ可愛い。髪型のおさげをおろしたらもっと可愛くなるかもしれない。

「とても似合ってると思うわよ?」

「本当に!?じゃあこれ買っちゃおうかな!この前の魔物討伐の報酬も残ってるし!」

「なら早く買ってきなさい」

「うん!あっアイリーンさ。アイリーンもさっきのネックレス似合ってると思うよ!」

「えっ!?あぁ……そう?ありがとう」

 そしてエイミーは会計をしに行った。私はもう一度、ショーケースの中のネックレスを見る。……ご褒美よ。これは。そう自分に言い聞かせ、私は結局そのネックレスを購入することにした。

 そのあとは目的の魔法書物も購入でき、エイミーの服選びにも付き合ったりして楽しい時間を過ごした。気が付けば日も暮れ始めていて、私たちは帰ることにした。

「今日は楽しかったね!また来ようね!」

「そうね。たまにはこういうのもいいかもね」

 なんだか今日は一日が長かったような短かったような……。そんな不思議な感じがする日になった。

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