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 広がる青空、澄んだ空気。なんてのどかなんだ。私はお店の前の掃き掃除をしている。といってもゴミが落ちているわけじゃない。こんな山奥の村の道端にゴミが落ちているはずもない。ただ、窓を拭くのは飽きたからだ。

 外から店内を覗くといつも通りルーシーが爆睡している。あの人寝すぎじゃない?私と同い年のくせに、恥ずかしい。看板娘が聞いて呆れる。そんな事を思っていると突然声をかけられる。

「こんにちはアイリーンさん。」

「サイラスさん。あっ違ったサイラス先生。」

「その呼び方は恥ずかしいですね。ははっ」

 サイラスさんはあれからこの村に住むことにしたみたい。村の人たちの温かさに触れて気に入ったのかな?そしてサイラスさんは村の子供たちに勉強を教えてくれることになった、いわば先生だ。

 サイラス先生も私と同じような境遇だしこのピースフルを気に入ってくれてるといいなとか偉そうなことを思ってみたりする。掃き掃除を終えてお店に入る。するとすぐにお店のドアが開く。

「いらっしゃいませ!なんでも屋へようこそ!……ってミリーナとロイド?」

「こんにちは!」

「どうしたのお店の方からくるなんて?」

「ロイド君。自分で言わないとダメだよ?アイリーンちゃんは怖くないから大丈夫だし。」

 ずっとロイドは下を向いている。私怖いと思われてるの?ちょっとショックかも……。ロイドがゆっくりと顔を上げて私を見る。目には涙を浮かべていた。え?なんで泣いてるの? 私が戸惑っているとミリーナが説明してくれる。

「あーアイリーンちゃん。ロイド君は極度に緊張しちゃうんだ。お願いする時とか、あまり仲良くない人と二人きりの時とか。だからあまり気にしないで。」

「そうなの?良かったわ……」

「ロイド君が無理そうだから、あのさアイリーンちゃん。ロイド君の錬金釜を一緒に作ってほしいんだ。壊れちゃったみたいで。」

「錬金釜?あぁ、作るには魔力が必要だものね。私で良ければお手伝いするわよ。」

 そう言うとロイドは顔を上げ、その顔が明るくなる。なんだか可愛いな。

「それじゃ素材を取りに行かないとね。頑張ってロイド君!アイリーンちゃんと2人で」

「え?2人?」

 ということで私とロイドはこのピースフルの西の方にある洞窟の中の鉱石を取りに出掛けた。お店はミリーナが留守番をしてくれるらしいから問題ない。というかルーシーもいるんだけどね……。

 西の森の奥深くまでやってきた。ここには様々な鉱石があるみたいだけど何が必要なのか分からないからとりあえず採れるだけ取っちゃおうと思う。

 ロイドは採取用の小さなカゴを持っているけど、私は持っていないので手ぶらだ。でもまぁいいよね! 洞窟の中に入ると少しひんやりとした空気が漂ってくる。それに薄暗い。

 しばらく進むと奥の方が光り輝いているのが見える。もしかしてあれかな? 近づくと大きな岩がゴロゴロと転がっていた。これが鉱石なのかな?よく見るとキラキラしていて綺麗だ。触るとツルッとしている。

「これかな?ロイドこれでいいの?」

「あっうん。」

「どのくらい必要?」

「あっ…結構必要。」

 会話にならないのだけど。もういいや勝手に集めよう。ある程度集めたところでロイドに声をかける。すると私の方を向いたと思ったらまた下を向いてしまった。本当に大丈夫だろうか? それからもいくつか集める。

「これくらいでいい?」

「あっ……」

「……足りないのね?もう少し集めるわ」

 その後も黙々と集める。だいぶ集まったかな?そろそろいいかなって思った時、ロイドから声をかけられる。って思った時、ロイドから声をかけられる。

「あっ……あのごめんなさい。アイリーンさん。うまく話せなくて……」

「別に気にしていないわ。無理に話す必要はないわよ。ただ思っていることは言ってくれないと困るかな?一緒にいるんだし。」

「怒らないの?ボクのこと?」

「え?怒らないわよ。普通に考えたら私は大人。あなたは子供。そりゃ話すのは緊張するでしょ。私とあなたはまだそんなに付き合いが長い訳じゃないし。そのくらい理解しているわよ。」

 私のその発言を聞いてロイドは目を丸くしている。そして涙を流した。えぇ!?泣くほど嫌だった!?

 どうしよう……どうすれば……そう!あれだ!あれしかない!深呼吸をしてロイドを見つめて話しかける。

「まぁそのあれよ!これからもよろしくってことよ!」

 私は右手を差し出す。握手をするために。するとロイドも恐る恐る手を握り返してくれた。どうやら嫌われてはいないらしいな。ホッとして胸を撫で下ろす。

 そして村に戻り、ロイドの錬金釜を作ることにする。まずは鉱石を砕かないと。ロイドは小槌で砕きはじめる、これじゃ何時間かかるかわからない……。仕方ない私の魔法で何とかするか。

「あのさロイド。鉱石を持って外に来て、あとこのくらいのお鍋を借りてきてほしいんだけど?」

「うっ……うん!わかった!」

 私がそういうとロイドはすぐに外に出ていった。ロイドは言われた通り、鉱石と大きい鍋を持ってきた。

「ありがとう。少し離れていて魔法で鉱石を砕くから、その大きなお鍋に水を汲んできておいて」

「わっ分かった。」

 ロイドが水を入れて戻ってきたのを確認してから、私は両手を前に出して集中する。ロイドが並べてくれた鉱石に向かって、土魔法ストーンを発動し鉱石の上に落とす。地響きが鳴り鉱石は粉々になる。このくらいでいいかな?次は砕けた鉱石を大きなお鍋に入れる。

 そして今度は炎魔法フレイムを発動し水を沸騰させる。そのグツグツしているお湯の中に鉱石を入れる。しばらく煮込むと鉱石は溶け出した。これを何度か繰り返す。

 おぉーなかなかいい感じになって来たんじゃない? ふと横を見るとロイドがじっと見ていた。うぅ……見られてると緊張する。そんな可愛い顔で見つめないで……。そして型に流し込み錬金釜は完成する。ロイドが出来上がった錬金釜を見て感動している。

「あの!アイリーンさん!」

「なに?」

「……ありがとう!!」

「いいえ。どういたしまして。」

 そのロイドの感謝の声は今までで一番力強く大きいものだった。とりあえず喜んでくれたみたいで良かった。これで少しは仲良くなれたかしらね。

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