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160章 半年後

 魔物退治が始まってから、半年が経過しようとしていた。

 アカネは仕事を始めてから、ずっと起き続けている。24時間*183日なので、4392時間も起き続けていることになる。現実世界で生きていたら、100パーセントの確率で身体が壊れる。

 4392時間も起き続けているにもかかわらず、疲れは一ミリもなかった。「無尽蔵のスタミナ」という能力が、不可能を可能にしている。

 ポケットに忍ばせてある、お守りを取り出す。「アリアリトウ」に行く前に、ココアとシオリが作ってくれたものである。仕事に行く女性のために、わざわざ準備してくれた。

 お守りには小さな文字で、「ありがとう」と書かれている。わずか5文字であるにもかかわらず、優しさが詰め込まれているように感じた。

 アカネのポケットには、もう一つのお守りが入っている。こちらは、フタバ、ミライ、ハルキ、アイコの4人で作成したものである。

 4人で作ったお守りには、「心の健康祈願」と記されていた。心とついているところが、人間性を感じさせる。アカネは身体が疲れないため、「健康祈願」と書いても、意味をなさない。

 お守りを見つめていると、ペンギンのような魔物と遭遇することになった。お守りをポケットにしまったあと、魔物の相手をすることにした。

 魔物が氷の魔法を唱えたので、アカネは炎で防御しようとする。氷はすさまじく、アカネの魔法をもってしても、なかなか溶かすことはできなかった。魔物が繰り出した氷は、どんな構造になっているのだろうか。

 氷を溶かし切ったあと、魔物は驚いた表情をしていた。氷が溶かされるとは、一ミリたりとも思っていなかったようだ。

 敵がひるんでいる隙に、炎の魔法を繰り出す。ペンギンはかわすことができず、一瞬で真っ黒こげになった。

 10秒足らずで敵を倒せたのは初めてである。これまではどんなに短くとも、1分以上はかかっていた。あまりにしぶといので、根負けしそうになったこともあった。

 一休みしようとしていると、30体ほどのペンギンが現れる。大量の魔物を前にして、アカネは正気を失いそうになった。

 30体をまともに相手すると、勝つのはかなり厳しくなる。少人数の敵をおびき寄せてから、確実に撃破しようと思った。

 テレポーテーションのスキルを使い、魔物をかく乱する作戦を取った。混乱を誘うことによって、戦いを有利に進めたい。

 特殊スキルに目がついていなかったのか、ペンギンはターゲットを見失っていた。この隙を狙って、ペンギンに炎の魔法を唱える。10体のペンギンにクリーンヒットし、絶命することとなった。

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