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春の我が家の子供達

 この春から学校に行くことが決まっているリョータ・アルト・ムツキ・アルカちゃんの4人。

 その中の、アルトとムツキなのですが、ここしばらくあることを行っていたりします。


 和装が大好きで、いつもキモノ風の服を身につけているアルトなのですが、最近は魔王ビナスさんの元で料理を教えてもらっています。

 アルトがキモノ風の衣装を着るようになったのも、コンビニおもてなし本店で働いている魔王ビナスさんが着ているのを見て、
『とっても素敵ですわ……』 
 そう思ったからなんですよね。
 ちなみに、アルトのキモノ風の服はすべて魔王ビナスさんが作成してくれた物なんです。

「店長さんの娘さんのためでしたら、喜んで作成させていただきますわ」

 そう言ってくれた魔王ビナスさんなんですけど……この1年の間にかれこれ20着近くキモノを作成してくれています。
 しかもアルトが成長するにつれて、すべてのキモノを微調整までしてくれて……

「あぁ、違いますわ。あれはキモノがアルトちゃんにぴったりくる常時発動魔法をかけているからですわよ」
「あ、そ、そうだったんですね」
「ついでに、魔法攻撃耐性魔法や物理攻撃遮断魔法、精神攻撃反射魔法など、全部で126の魔法を常時発動させておりますので、アルトちゃんの身辺警護は万全ですわよ」

 魔王ビナスさんはそう言ってにっこり微笑んでくださったんですけど、そんなに魔法をかけても大丈夫なのかな、と思ったりもした僕なのですが、そんな僕の元にスアがつつつと歩みよって来まして、

「……かけ過ぎだったから、いくつかこっそり効力を停止させてるから」

 そう教えてくれました。

 さすがの魔王ビナスさんでも気がつけないように細工をしているそうです。

 それだけの魔法をかけることが出来る魔王ビナスさんもすごいですけど、その効力を自在に操れるスアもすごいといいますか……うん、なんかもう、僕のような凡人では想像も出来ない攻防が繰り広げられたんだなってくらいにしか理解出来そうにありません。

 で

 そんなアルトは、魔王ビナスさんとすっかり仲良くなりまして、最近では一緒に料理をつくったりいているわけです。

 まだまだ拙い手つきではありますが、魔王ビナスさん同様に魔法を駆使しながらフライパンを振っていく姿はなかなかなでして、

「この調子ですと、学校に通いはじめるまでには売り物を作成出来るくらいになりましてよ」

 魔王ビナスさんも、嬉しそうにそう太鼓判を押してくださったんですよ。


 一方、ムツキなんですが……

 ムツキは、我が家の子供達の中で一番魔力が強いんです。
 産まれてすぐの時は、双子の姉のアルトと同じくらいだったのですが、成長するに連れてぐんぐん魔力が強くなっていきまして、

「……リョータとアルトの10倍以上の魔力を持ってる、よ」

 スアがそう言う程なんですよ。

 で

 そんなムツキは、最近はスアのお手伝いをよくしているんです。
 巨木の家の……あ、新たに世界樹のミンスちゃんがやってきてくれましたので、我が家も新築されたわけなんですけど、その新しく5階建てになった巨木の家の5階にありますスアの研究室の中で、スアとムツキが仲良く並んで魔法薬を造っている姿が最近よくみられるんです。

「ママ、こんな感じでいいかにゃ?」
「……うん、もう少し魔力をこめてみて……こんな感じで」
「うん! わかったにゃしぃ!」

 アルトは、スアからアドバイスを受けながら満面の笑顔で魔法を展開しています。
 後ろから見ていますと、2人の手の前にいくつもの魔法陣が展開しているもんですから……まるでなんとかポッターか、ドクターなんとかレンジの映画でもみているような気持ちになってしまうんです。

 何しろ、伝説的な魔法使いのスアですからね、アルトにどんな質問をされても

「……これはこうして……」
「……それはそうして……」
「……あれはああして……」

 といった具合に、短い言葉ながらも的確にアルトに返答しているのですが、

「ママ、なんでこの部屋にあんなに大きなベッドがあるのにゃ? いつもみんなで寝室で寝てるのに?」

 と言われた時には、

「……あ、えっと、これはね……その……」

 と、しどろもどろになっていたスアでして……

 そりゃ言えませんよね……子供達が寝静まった後、僕とスアがここにやってきて夫婦の営みを行うためにあるんだ、なんて……

 しかも、以前の家に置いていた簡易ベッドよりも明らかに大きいですからね、今回のベッドは……

 この後、研究室を見学にきたリョータやムツキにも同じ質問をされて、顔を真っ赤にしながら返答に困っていたスアでして……その慌てぶりがあまりにも可愛かったものですから、わざとしばらく黙っていたのは内緒です、はい。

 で、まぁ、そんな脱線があったりしながらも、アルトの魔法薬作りもなかなか順調に進んでいるようでして、

「……この調子なら、すぐにお店で販売出来るような薬を作れる、よ」

 と、スアが太鼓判を押すほどなんですよ。

 ちなみに、この世界の魔法使役者のランクに当てはめると、

「……魔力と魔法の理解度でいえば、上級、ね」

 とのことでして……つまり、あの王都ですっごく偉そうにしていた上級魔法使いのお茶会倶楽部の魔法使い達と同等か、それ以上ってことになるみたいなんです。

 リョータとムツキは中級程度ってことらしいんですけど、まぁ3人ともまだまだ子供で発展途上ですからね、今後どこまで成長出来るのか、僕もすごく楽しみです。

◇◇

 ちなみに、ここまで話が出ていないリョータはといいますと

「リョータ様、ここはこうするアル」
「こんな感じかな?」
「うん、ばっちりアル! さすがリョータ様アル!」

 アルカちゃんを先生にして、スイーツ作成のお手伝いをしているんです。
 押しかけ的にリョータの許嫁としてやってきたアルカちゃんですけど、

「僕もアルカちゃんと一緒に料理をつくりたい!」

 リョータ自身がそう言い出しまして、こうやって一緒にお菓子作りを頑張っているんです。
 で、時にはアルカちゃんの師匠であるヤルメキスが

「じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ今日はリョータ君も一緒にやるでごじゃりまする」

 そう言って、2人同時にお菓子作りを教えてあげてくれているんです。 
 2人並んでヤルメキスからお菓子作りを教えてもらっているリョータとアルカちゃんってば、すっごく楽しそうなんですよね。

 なんか、その姿を見ているだけで癒やされてしまいます。

 ちなみに、リョータのお菓子作りの腕ですが、

「りょ、りょ、りょ、リョータくんはすっごく筋が良いでおじゃりまするので、すぐにお店で販売出来るレベルのお菓子を作れるようになるでおじゃりまするよ」
 
 と、ヤルメキスが太鼓判を押してくれるほどなんです。


 ……と、まぁ……こんな感じで我が家の子供達はみんなそれぞれに頑張ってくれているのですが、父親の僕が教えることが何もないと言いますか……

「……なんか、ちょっと寂しいなぁ」

 なんてボソッと呟いたのですが、

「パパ! 教えてください!」

 そう言って僕の元に駆け寄って来たのはパラナミオでした。

 そ、そうでしたね。
 この春、学校を卒業したパラナミオは、これから僕と一緒にコンビニおもてなしで働くことになっていまして、すでに魔王ビナスさんの研修も終えて、僕と一緒に実地研修を行っているんです。

「うん、なんだいパラナミオ」
「あの、この商品なのですが……」

 パラナミオが持って来た商品を確認しながら、僕はパラナミオにあれこれ教えてあげていきました。
 その間のパラナミオは、僕の話を真剣に聞き、疑問が解決すると、」

「パパ、ありがとうございます! すごくわかりやすかったです!」
 
 満面の笑顔でそう言ってくれました。
 なんか、その笑顔を見ていると僕まで自然に笑顔になれてしまいます。

 パラナミオはきっと、コンビニおもてなしにたくさんの笑顔を咲かせてくれると思います。
 これには僕が太鼓判を押しますよ。

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