バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第20話 誕生日プレゼント

中学三年生の9月14日。

この日、隼は15歳の誕生日を迎えた。

昼休みに俺と隼、瑠千亜と五郎は隼の机に集まり4人で昼飯を食べていた。

「隼、お前今日誕生日だよな?おめでとう!」

思い出したかのように瑠千亜が祝う。

それに対して隼も嬉しそうにはにかむ。

「ありがとう瑠千亜…!」

俺たちは中学に入り仲良くなってから、誕生日には互いにささやかなお祝いをするのが恒例になっていた。

とは言え皆部活が忙しいため、盛大なパーティーなどはできない。
精々互いにプレゼントを渡し合ったりするくらいだ。


「いやーリア充隼クンは今日梨々ちゃんとデートでもするのか?」

「誕生日にたまたま部活動がオフとはな。幸運な誕生日ではないか。」

「うん…!本当にラッキーだったよ。今日は一緒にプレゼントを買いに行ってくれるって…」

瑠千亜と五郎の言葉に、隼は照れながら答える。

「うえええい!いいじゃんプレゼント!何買ってもらうん??」

「梨々さんも粋なことをするものだ。羨ましいな」

「まだちゃんとは決めてないよ!……まあ一緒に買ってくれるなら何でも嬉しいけどね」

「ヒューヒュー!出たよラブラブカップルがよく言う『二人きりなら何でもいい!何でも楽しい!』ってやつ!ったく熱すぎて火傷するぜ!」

「いやっちょっと…そんなに茶化さないで…」

「そうだぞ瑠千亜。そろそろ隼の惚気にも慣れろ。そんな様子だからいつまでも貴様には彼女が出来ぬのだぞ…」

「うっうるせーよ!!俺だって彼女いたことあるしっ!!たまたま別れただけだし!」

「たまたまな訳あるか。必然の賜物だろう」


盛り上がる二人の会話を隼も楽しそうに聞いている。

中学1年生の頃から変わらないこの光景。

しかし唯一変わったことといえば、五郎と瑠千亜のやり取りに俺が積極的に突っ込まなくなったということくらいだろうか。


俺は隼と関係を持ってからというもの、雨宮絡みの話題には入っていけなくなったのだ。


それは雨宮に対する罪悪感からなのか。

雨宮がいる限り、隼は俺のものにならないという事実に対する醜い嫉妬からなのか。

理由は断定できないが、他の話題の様に俺は振る舞うことができなかった。



「まあ、そんなリア充隼クンの為に!なんと俺らからもプレゼントがありますっ!」


瑠千亜がハイテンションで言い、カバンを漁り出した。


「え!ほんと?やった!」

瑠千亜の言葉に嬉しそうに反応する隼。
プレゼントを期待するその笑顔は、まるで無邪気な子供のようだった。


「これは瑠千亜と俺が厳選したものだ。しっかりと使うのだぞ隼」

五郎が隼に向かってそう言った時、瑠千亜はカバンの中から青い袋にラッピングされたプレゼントを取り出した。


「ありがとう二人とも!!」

瑠千亜に手渡されたプレゼントを受け取り、隼は嬉しそうに礼を言う。


「あれれ?優様は隼に何もないのかナ?」

「普段あれだけ隼、隼と煩いのにな。薄情者め」

「うるさい黙れ。少し早かったが俺は既に新人戦に向けて新しいガットとグリップとシューズを買っている。そして既に渡し済みだ。な?隼」

「うん!優からは本当にいっぱいもらっちゃったよ。改めて、優もありがとね」

「ああ。喜んでくれてたから良かったよ」

「あー、だから新人戦の前にいきなりシューズを変えてたのかこいつ。妙なタイミングで変えるなとは思っていたけど…優様から貰ったものならそりゃ喜んで履くか。」

「流石だな優様は。愛する者の為ならばいくらでも散財するというのは、正に男の証だ」

「五郎に男が何たるかを説かれたくない。それに様付けを辞めろ。あと掌返しすごいなお前ら」

「まーまーまーまー!隼!俺らからのプレゼント開けてみろよ!絶対今のお前に必要なものだから!」

「うむ。隼の為を思い選んだ代物だ。」

「うん!ありがと!開けてみるよ」

五郎と瑠千亜の言葉にいつも通り俺が突っ込む。

そのやり取りを、これまたいつものように微笑みながら黙って見ていた隼は、プレゼントを開けてみろと言われ、受け取ったプレゼントをワクワクしながら開けている。

その間、五郎と瑠千亜はニヤニヤしながら隼の様子を見ていた。




「ん?これは……ペットボトル?と…ええ!なにこれ!!」


袋から物を取り出した途端、隼は驚く声を上げた。

その反応を見て五郎と瑠千亜は堪えていた笑いを爆発させた。

「いや隼!wwお前それペットボトルじゃねーよ!なんて書いてる?ラベル見てみろ!w」

「ラベル?えーと………『甘い香りが官能的な気分を引き出す、ヌルヌル快適ボディローション』……あ!ローションか!」

「いやそのまんま読むなよwww普通にローションだけでいいだろ!w」

「てかこっち……何でこんなもの…」

「隼がかつて尻の開発に興味を示していたことを思い出してな。少し大きいかもしれぬが、それを入れられるようになってこそ1人前のアナリストだぞ」

「尻の穴拡張してる奴をアナリスト呼ばわりすんな五郎wwガチのアナリストに失礼だぞwwあと拡張したこともねーのに偉そうに語んな!!」

「えええ…なんか恥ずかしいな…てかどこで買うのこんなの」

「まー今時はネットかな!どう?思春期真っ盛りの俺らからしたら必要なモノでしょ?」

「それはお前らにとっての必要じゃないか。隼にとってではない」

「おっ?黙ってたのにいきなりどうした優!もしかしてお前……隼がこれ使ってる姿想像して勃ってき……」

「うるさい馬鹿」

「いって!なんで叩くんだよこのやろ!」

瑠千亜は俺に頭を軽く叩かれ、大袈裟に不満そうなリアクションをする。


何と五郎と瑠千亜は、隼にローションとエネマグラとディルドをプレゼントしていたのだ。


「隼、今まではこういうの持ってなかったん?」

「ないよ…!買ったこともない!」

「ローションも使わないん?」

「必要なかったからね…」

「ローションが必要ないくらいヌルヌルなのか……」

「余計なことを言うな五郎。」

「そうだぞ五郎!優が発情するだろ??」

「お前も黙れ瑠千亜。……全く、隼にこんなものを渡して…隼、いらなければ受取拒否してもいいんだぞ」

2人のプレゼントに困惑している隼を見て、思わず助け舟を出した。

しかしそれと同時に、悔しいながら瑠千亜が言うように、隼がこれらを使っているのを想像してしまっていたのも事実だった。


エネマグラやディルドどころか、こいつは俺のモノを何度も挿れている……

正直、俺の生のモノに病みつきになった隼が、人工的な玩具で満足するとは思えなかった。

そういった謎の自信と優越感が、俺の中に芽生えていた。


「せっかくもらったものだから、受け取るよ。俺のために選んでくれてありがと!」


隼は迷わず二人に向かって笑顔でそう言った。

隼のその素直な反応に、思わず瑠千亜も五郎も、癒やされ心が浄化されたように微笑む。


傍から見れば……というかこの二人から見れば、今の隼は間違いなく純情で初心な奴だろう。

エロいことに興味はあれど、実際に玩具を使ったことなどは無く、初めて貰った玩具への期待と早く使ってみたいという好奇心に溢れている童貞に見えるのだろう。




しかし……

俺は、こいつの普段の純粋な感じとは真逆な顔を知っている。

性に貪欲で時には獣のように俺を求め、性欲を満たすためだけに俺と体を重ねる。
その為には、自覚している魔性の魅惑を用いて自分から誘うようなこともする。

そんな隼の一面を知りもせずにこんなプレゼントを渡している二人を見ると、隼に騙されているのを見ているようで何故だか不思議な興奮に襲われた。


天使のような顔をしてるが、中身は超絶小悪魔だそ………

俺は心の中で思わずそう呟いた。

こいつらのみならず…世の中の俺以外の奴らは全員、隼が被っている清白な衣を信じて疑わないのだろう。



「んじゃ!使ったあとの感想よろしくねん」

「ええ!感想!?」

「うむ。レビューというやつだ。もしそれを用いることによって無事に開発が済んだのなら俺達も願ったり叶ったりだ。」

「ええ……」

「よろしくぅ☆」

瑠千亜と五郎の言葉に再び隼は困惑している。



なるほど、そうか………



俺も正直、隼がこれらを使ったときにどうなるのかを見てみたいと思った。


しかし俺はこの二人とは違い、隼がこれらを使っている所を見ようと思えば見ることもできる。



俺はこいつらの言葉によって、早速今日の夜にでも隼にこの玩具たちを使わせる方法を思いついたのだった。

しおり