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ウリナコンベの7号店 序の3

 ひとしきり再会を喜びあったパラナミオとサラさん。

 普通なら微笑ましい光景のはずなんですが、

「元気だったか、パラナミオ」
 と、言いながらパラナミオを笑顔で頭上10メートル近く放り上げていくサラさんと、
「はい!とっても元気でした」
 と、言いながら落下してきてはサラさんに抱きついているパラナミオという、まるでサーカスのような光景を目の当たりにしますと、さすがにちょっと手に汗握ってしまうといいますか……お願いします、普通の親が安心して見ていられる喜び方をしてくれませんかね、と、内心で思いっきり思っていた僕だったりします、はい。

◇◇

「我は今、この都市の建物建築業務を行っていてね」
 サラさんと一緒に、僕達は辺境都市ウリナコンベの中央街道を歩いていました。

 この都市なんですけど、事前に聞いていた情報では、闇の嬌声っていう闇組織が破壊しまくっていったって話なんですけど、思ったよりもしっかりしている感じです。

 城壁や城門はすでに完璧に直っていますし、街道もしっかりと石畳が敷き詰められています。
 役場らしい建物をはじめ、商店街の建物もすでにかなりの数出来上がっていますし、かなり復興が進んでいる感じですね。

「我や、中央卸売市場の指導をしているクロ達がフル稼働しているからな。まぁ、あと1,2ヶ月もすれば建物に関してはほぼ予定通り出来上がるであろう」
 サラさんはそう言いながら胸をはっています。

 そういえば、サラさんは召喚魔法で骨人間(スケルトン)を召喚出来るんですよね。
 サラマンダーならみんな出来るらしく、パラナミオももちろん出来るのですが、サラさんは一度に数千単位で召喚出来るそうなんですよ。
 その骨人間達を夜な夜な使役しては、建物建設を行っているんでしょう。

 そんな会話を交わしながら、僕達は都市の中央付近へと移動していきました。
 それにつれて、街道の左右にある商店の中に、すでに営業を開始しているお店がいくつか見ることが出来るようになりはじめています。

 そんな中、

「あ、ここですです、ここがコンビニおもてなしさんの店舗ですです」
 地図を見ながら進んでいたエレエが、ある建物を指さしました。

 その先には、周囲の建物と同じ二階建ての石造りの建物がありました。

 大きすぎず、かといって小さすぎずと、なかなか良さそうな感じです。

「ふむ、ここがパラナミオ達の店になるのか」
「はい、パパのお店です。私もここで働くんです」
「そうか、パラナミオも働くのか。よし、我もしっかり買い物してやるからな」
「はい! ありがとうございます」
 楽しそうに会話を交わしているサラさんとパラナミオ。

 まるで本当の姉妹のような光景です。
 それを横で拝見している僕やスア、エレエ達が、揃って笑顔を浮かべていた次第です、はい。

 その後、仕事に戻るサラさんを見送りまして、僕達はその建物へと入っていきました。

「エレエ、ここはもう使ってもいいのかな?」
「はいですです。すでに登録は済んでいますます、問題ないですです」

 エレエの言葉を聞いて、僕は改めて建物を見ていきました。

 周囲の建物となんら代わりのない石造りの建物です。

 これをコンビニおもてなし仕様に変更しなければなりません。
 街道に面している面をガラス張りに変更し、店舗の中に棚を並べないといけません。

 こういった工事は、ルア工房のルアにお願いしないといけません。
 ルアは、コンビニおもてなしの支店や出張所が増える度に、その建物の建設や改修工事を行ってくれていますからね、何をどうしたらいいか、ある意味僕以上に把握してくれていますから。

 もっとも、今のルアは育休もあけ、仕事も軌道にのったもんですからイエロ達と一緒に狩りにいくのが楽しくて仕方ない感じなんですけど……そうですね、とりあえず今度相談しに行ってみようと思います。

「では、私は入寮の手続きと荷下ろしをしてきますます」
 エレエはそう言うと、荷物が詰まっている魔法袋を手に、商店街組合の寮の方へ向かって小走りに駆けて行きました。

 魔法袋は、貸しているだけなもんですから、
「すぐにお返しにあがるですです」
 エレエはそう言いながら、何度も何度も頭を下げつつ街道を駆けていきました。

 エレエは律儀な性格ですからね、僕が、
「魔法袋ならいつでもいいんだよ」
 と、言ったのですが、
「いえいえ、こんな高価な品物、そんなに長くお借りするわけにはいかないですです」
 そう言っていた次第なんですけど……よくよく考えたら、この魔法袋1つで家とか建っちゃうほどの貴重品なわけですし、むしろ僕の感覚の方が麻痺しているのかもしれませんね。
 こういうところは、少し気をつけていかないと、と、僕は改めて気を引き締めました。

◇◇

 建物に入った僕達は、早速二階に上がってみました。
 そこは、居住空間と倉庫として仕様出来るスペースになっていました。
 窓から外をのぞきますと、街道を左右に見渡すことが出来ます。

「思ったより人が行き交っているみたいだね」
 僕の言葉どおり、街道には多くの人の姿がありました。

 多いといいましても、辺境都市ナカンコンベほどではありません。
 そうですね、コンビニおもてなし本店があります、辺境都市ガタコンベ程度、と、いった具合でしょうか。

 それでも、復興途中の都市であることを考えれば、結構すごいことなのかもしれませんね。

「ここでパラナミオは働くんですね」
 僕とスアに挟まれた格好のパラナミオが、両手で拳を握りしめながら気合いをいれています。

 そんなパラナミオのことを、僕とスアが微笑みながらみつめていました。

 そうですね……このコンビニおもてなし7号店は、まずは僕達一家が中心になってはじまるわけです。
 そう考えると、なんだか喜びもひとしおだったりします。

◇◇

 このコンビニおもてなし7号店は、現在のところ店長が僕、パラナミオは店員として勤務することになっています。
 スアも、魔法薬を生成しながら、アナザーボディを駆使してお手伝いをしてくれる予定になっています。

 あと、3,4人の店員をここに加えたい思っていまして、各支店から1,2名の店員に回ってもらい、残り1,2名を現地で雇用しようと思っている次第です。

 そういえば、このことを店長回覧板で回したら、即座に辺境都市ララコンベにあります4号店の店長クローコさんが本店に駆け込んできまして、

「ててて店長ちゃん、この店員募集にいい人がいる、みたいな!」
 そう言って来たんですよね。

 で

 クローコさんが推薦してきたのは……ブロンディさんでした。

 元々王都の人気吟遊詩人だったブロンディさん。
 先日開催されたララコンベの温泉祭りで、クローコさんに一目惚れして、そのまま4号店のバイトになってしまったという方なんです。

 社員を目指されるのでしたら、魔王ビナスさんの研修を受けてもらわないといけないのですが、
「今はまだ、マイハニーと離れたくないので~♪」
 と、重低音なイケメンボイスでそう言っていた次第なのですが

「あの人と一緒に勤務してたら、アタシの精神がもたない、みたいな!?」
「え? そうなの?」
「ぱないよ! 四六時中口説かれるこっちの身にもなってほしいよ!」

 顔を真っ赤にしながら主張するクローコさん。

 ……しかし、よく考えたらクローコさんってば絶賛婚活中だったはずですし、独身で超イケメンのブロンディさんなら相手としても申し分ない気が……

「ダメダメダメ! あんなチャラいの、絶対やばいの! ああいうのは、目的の女を落とすとすぐに次の女に手を出す、みたいな!」

 両手でバッテンをしながらそう主張していたクローコさん。

 ……うん、言われてみればその心配も無きにしも非ずといいますか……

 かなり派手な出で立ちを好んでいるクローコさんですけど、身持ちはすっごく堅いんですよね。
 なので、婚活で合コンとかにはよく参加しているものの、お持ち帰り経験はゼロっていいますから……

 まぁ、そんなわけで、ブロンディさんを引き離したいと思っているクローコさん。
 これに関しては、とりあえず一考させてもらうってことで話を保留にしているんですけど……さてさて、どうしたもんでしょう。

 窓の外を眺めながら、僕はそんなことを考えていました。

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