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第35話 鬱々午後※隼Side※

午後の授業が全く頭に入らない。


昼休みに梨々から聞いたこと。


優の好きな人について。

五郎の情報によって、梨々が混乱していたこと。

五郎が梨々を好きかもしれないということ。


グルグルグルグルと頭の中を回って落ち着かない。




五郎は今、俺とほぼ同じ状況のはずだよね。



梨々のことが好きだけど、梨々は優を好きだって知っている。



唯一違うのは、優の好きな人を知っていたか知らなかったかということ。







もし、俺が五郎の立場だったら?



自分が、あらかじめ優の好きな人を知っていたら、俺はどうしてたかな。


優が他の人を想っているのに、ひたすら一途に優を好きでいる梨々を見ているのは辛いだろう。

叶わない恋に一生懸命な姿は、切なくて悲しくて、叶わないと知った時のショックが大きくなる前に、早いうちに止めてあげたい、っていうのは分からなくはない。



だけど、それって結局、瑠千亜の言葉を借りると、
自分の勝手な思いなんじゃないかな。



自分が辛いから、見ていられないからって他人の恋を止めてもいいのか。

もちろん、相手の傷が大きくなり過ぎないように、っていう思いやりもそこにはある訳だけど。


それでも、純粋に恋愛を楽しんでいる人にその恋愛を強制終了させるようなことは、結果的に相手を傷つけている。


他人から知らされてショックを受けるのと、本人から直接聞いて落ち込むのとは、絶対違うだろうから。



『一度傷つけても、その後自分が幸せにできるって自信があったらどうよ?』


再び蘇る瑠千亜の言葉。


五郎は、梨々を幸せにする自信があったからこそ優のことを言ったのだろうか。

梨々が、聞いてよかった、って後々思えるほど、幸せにできる確信があったのかな。


五郎のことだからありそうと言われればありそうだけど、でも、、、、




自分が確かめるより先にそれを知って、

それで良かったと梨々が思えるようになるとは思えないよ。


さっきまでの梨々の姿を思い出しても、梨々はきっと、自分で答えを出したかったんじゃないかな、、、



チラ、と隣で授業を受けている梨々を見る。

真剣に授業を聞いているその目には、まだどこか迷いがあるようだった。



梨々を迷わせることは、正しかったのかな、、、

いつか立ちはだかる壁だったのかもしれない。


だけどその壁を、このタイミングで予定よりも手前にずらさなくてもよかったんじゃないかな、、、




とにかく俺は、五郎と話がしたい。


五郎なりに梨々を思いやっての行動かもしれない。

そもそも五郎が梨々を好きだというのも、俺の予測でしかない。


だけどそこをはっきりさせたいと思った。

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