バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第27話 進む※五郎Side※

突如テントから飛び出した瑠千亜を追いかけ姿を見つけた。


途中まで近づいて、ふと踵を返す。

あの雰囲気は、、、





それにしても、テニスの試合会場にて思いの丈をぶつけるやつなど初めて見るぞ。


珍しい奴もいるものだ。


仕方なしに遠回りをして隼たちのコートへと向かう。

先程チラッと様子を見る限り、まだ試合自体は始まっていないようだった。

なので遠回りしても間に合わぬという事はなかろう。



そう思いながら歩いていると、「あれっ!五郎くん!」と、思わぬ人物から声がかかった。


「梨々さん。これはこれは、お疲れ様だった。」


「ありがとーっ!!!五郎くんたちも、お疲れ様!凄く良い試合だったよ!」


「ふむ。そう言って頂けると自信になりまする。」


「だってほんとに凄いよ!五郎くんずーっと昔からテニスやってた人みたい!」


夕日に反射して眩しい笑顔で元気いっぱいに言われると、俺の普段動いているかも分からぬ心臓があからさまに動いた。

これで心が動かぬ者は男ではなかろう。

こんなに愛らしい子を前にして、、、


「ふふ。いずれはずーっとテニスをやってた人である隼と優を倒すつもりでいるからな。早急に彼らに追いつかねばならん。」


しまった。

何故ここで優の名を出したのだろう。


ほれみろ…誠に悔しいことだが、その名を聞いて梨々さんの目が一瞬キラリと光ったではないか。



「その対決楽しみだな!一年生大会の決勝戦で是非見たいな~!」

さすがは梨々さん。

予想外の想い人の名をサラリと交わし上手く会話を繋げている。

このコミュニケーション力の高さには何かの賞を与えたいところだ。


「勿論決勝以外では当たるつもりはないさ。、、、ところで梨々さん、、、」





瑠千亜の方は決着がついていそうだ。

あの様子だと、きっと優も今日中には動くだろう。



そうとなれば、俺も動き出す必要がある。



そのためには梨々さん。





貴女には申し訳ないが、一度貴女を傷つける必要がある。







「俺は優に毎日特訓をしてもらっていたことはご存知であるな?そこで知り得た、優の意外な一面を是非お伝えしたいのだが、、、」



やはり梨々さんは素直な女性であるようだ。


明らかに目が動いたのを、俺は見逃さなかった。

しおり