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昼ごはん

3人は帰路につきながら、エリゼオから食べられる木の実や葉、樹液の出る木を教わりながら採集をしていった。


「あら、いっぱい採って来たんだね!助かるわ〜」

一通りエリゼオの説明が終わり、食堂にたどり着いた一行は丸くギリーの体の半分ほどの大きさのある葉に包んだ食材を渡しに来ていた。
見知った赤く丸い果実や青々とした葉菜に加えて、ステーキのように赤い葉肉や真っ青な根菜といった三人がこれまで見たことの無かったものもある。
どのように料理されて出てくるのか、楽しみにして待っててとのことで一行は食堂のテーブルにつき、昼食を待っている。

「さて、ここで昼飯を食べ終わって以降はあんたらの思うままに動いてもらっていい。まあ言わなくても分かってるとは思うが、怪我なんかはしないように気を付けてくれ。明日の作戦決行に響くからな」
「ああ、分かった。色々ありがとな」

帰り道では採集していた食糧に加え、危険な道や生物についても教わった。森のなかに潜む毒蛇や毒虫に触れたり、噛まれたりした時の対処法についても懇切丁寧に説明していた。
さすがに毒蛇を噛ませて実践というのは出来ない。あれ以降はほとんど口で説明していた。

「改めて見ると、ここってホントに住みやすい場所だよね。家の役割を担う不思議な木が生えてるし、危険生物も近寄らないらしいし。ボクの知ってる森の中でも一番住みやすい所なんじゃないかな」
「はは、そうかもしれないな」
「ここいらの植物をちょちょっと弄って改良した、とかじゃないんだよね?」
「そうだな。ワシらの住んでいるところに生える植物が自然とそうなっていったからこうなったんだ。というか、弄って改良なんて出来るもんなのか?」

 エリゼオは不思議そうに聞き返す。

「うん。ボクのいた世界では遺伝子改変とかやってたね。ここの生物も同じ構造なのかは分かんないし、特殊な技術がいるから、限られた人しか出来ないものだけど」
「イデンシ?そんなものがあるのか」
「うん。普通じゃ見ることは出来ないちっちゃなものだけど、生き物の情報を司る大切な...設計図みたいなものかな」
「嬢ちゃんの世界じゃ、植物について随分と詳しく知られてるんだな。兄ちゃん達もそうなのか?」

話を振られたギリーとレストリーは首を振る。二人ともルーチャの放つ単語に疑問符が浮かんでばかりいた。

「初めて聞いたぞ、そんな単語」
「ルーチャは随分と知ってるんだな」
「えへへ」

誉められ、照れている少女達の元へ料理が運ばれてくる。

「へえ、これってもしかしてサンドイッチ?」
「ああ、これも君らの世界にも…さすがにあるか。簡単に作れるしな」
「そうだね。ボクの世界でもお昼のお供って感じだったなあ」
「へえ、そうなのか」

 一人、食べ物が一択しかなかった少年がまじまじと目の前の色鮮やかな食べ物を眺めていた。

「俺はどれも初めて見るな。魚を切るだけだったから…」
「魚を切るだけ?!一体どんな世界にいたんだ?」

 驚くエリゼオに答えるレストリー。目の前に並べられた色鮮やかな料理をつまみながら、異世界から来た者たちの話を、エリゼオは興味深そうに聞いているのであった。



「ふう、それにしてもおいしかったね」

ルーチャは満足そうな一息をつくとともに、昼下がり特有の眠気と戦っている。
 用意されたサンドイッチは小ぶりで食べやすく切られており、ハムや卵、野菜など様々な種類のものがあって、随分と楽しい昼食となった。用意されたものを一通り食べ終えた4人が話していると、一人の腹が鳴る。
 結果、さらに追加でサンドイッチが用意され、腹の音の主は満足するまで食べさせてもらっていたというわけだ。
 あの昼食は食べやすいサイズに、とはいっても他3人は十分に満足する量は用意されていたはずなのだが…一体彼女のどこに入っているのだろうかと気になるほどにはよく食べる。

 昼食を終えてから翌日の夜まではエリゼオがギリーたちの監督となるということだった。これから作戦決行に至るまではほとんどエリゼオと行動することになるらしい。

「さてさっそく訓練と行きたいところだが、腹ごなしも兼ねて少し自由時間とするか」
「ほんと?やった!」
「とはいっても、店を見るなんてのはもってのほかだな。今日と明日は戦いに備えていろいろとやっておくべきだ。散歩がてら、もう少しこの辺を散策したいかな」
「そうか。なら、この周辺の地図を貸しておこう」

 エリゼオから一枚の地図を渡される。この住居区域以外で歩き回ることのできる地域をしるした地図だ。手書きの地図だが、こまごまと各地域のポイントが書き込まれている。無骨な雰囲気を漂わせるエリゼオはその見た目の通りに達筆で記してある。

「これ、いいの?」
「ああ。ただ、後で返してくれ。替えはないからな」
「了解だ。ありがとう」

そうして3人は食堂を出て、地図を見ながら森の中へと歩いていく。空は青く、心地の良い風が吹いている。食事の直後ともあって、眠気が一気に襲ってくる。

「ふわあ」
「眠いな。さすがに眠るわけにもいかないが」
「だな。いくら監視下にあるといっても外で眠るなんてのは出来っこない」
「怪物を倒せばここら一帯が平和になるんだろ?なら、その時の楽しみにでもとっとこうぜ」

そう言って三人は少し薄暗い森の中を歩いていくのだった。

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