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第6話 僕の太陽

5月4日。


ゴールデンウイークの真っ最中の東京都内は、いつにも増して老若男女様々な人々で賑わっていた。

特にアミューズメントパークとショッピングモールが共存し、誰でも楽しむことの出来る『エキサイトランド』は特に家族連れが集まり、歩くスペースを確保するのですら一苦労しそうな程一層人が集まっている。


俺たちが今日遊ぶ計画を立てていた場所もここで、俺は一番家が近いこともあり、皆よりも早く到着し、集合場所であるエキサイトランド前の銅像の前にいた。


今日は幸いかなりの快晴で絶好のお出かけ日和だ。

初めて遊ぶメンバーがほとんどであり、また、俺の好きな人・・・

そう、梨々さんも今日は来るため、昨日の夜から高まる気持ちが抑えられない。



そんなことを考えていると、向こうから何度見てもドキドキしてしまう人が来た。

「おはよう!隼くん!早いね~」

いつもの明るい笑顔で元気に梨々さんが挨拶してくれた。

「おはよう梨々さん。家が近くて、それに少し緊張してたから早く来ちゃった。」

相変わらずドキドキしながら答えつつ、初めて見る梨々さんの私服姿から目が離せなかった。


薄いピンク色のカーディガンから覗く白いフリル付きのブラウスに、制服よりも少し短めの赤いチェック柄のスカート。

胸元には光る桜型のネックレス。

さらさらとした黒いウェーブのかかった長い髪は高い位置にポニーテールで結ばれている。

普段学校ではツインテールかハーフアップしか見たことがないから、初めて見る髪型にトクンと小さくときめく。

本当に梨々さんはどんな髪型や格好をしていても可愛らしい。

実際さっきから道行く男性たちは彼女を連れている人でも一度は梨々さんを見ていく。


「あの・・・梨々さん、その格好、凄く似合ってるね!」


なんとなく、周りの男性たちを出し抜きたいと思い、勇気を振り絞って思っていることを伝えた。


「ありがとう!実は今日、少し気合い入ってるからそう言われると凄い嬉しい!」

照れながらも嬉しそうに両手を口に当てて笑う梨々さん。

そんな行動の一つ一つが、俺の鼓動を更に高ぶらせる。

「ちゃんと女心を分かってくれる隼くんみたいな人って、きっとモテるだろうな~」

「そっ、そんなことないよ!」

「でも梨々は隼くん素晴らしいと思う!」

「ありがとう!?」

梨々さんのほめ殺しに、嬉しさを隠せないまま礼を言う。

本当に梨々さんは、誉め上手だなぁ・・・

どうしてそんなにするりと言えちゃうんだろう?


「ねぇねぇ、隼くんって、今好きな人いる?」


ドキドキしながら少し俯いていると、梨々さんが悪戯っぽく突然聞いてきた。

「えっ!?好きな人!?」

「うん!それとも、もう彼女が・・・」

「彼女はいないよ!」

「あ、じゃあ、好きな人はいるんだー?」

「うう・・・そうですけど・・・」

いつもはおしとやかで優しい梨々さんは、たまに可愛らしい悪魔のように俺をからかう。

しかし、それさえも可愛いと思ってしまう俺は、いつも梨々さんのからくりにひっかかる。

「そうなんだー!!やった!じゃあこれでお互いに恋話もできるね!」

梨々さんが心底嬉しそうに言う。

「うん、そうだね!」

そう言えば気になっていたんだ。

梨々さんが入学式の時に、好きな人がいるって言ったこと。

あの時点で好きな人は、きっと同じ小学校の人だろうと諦めかけたこともあった。

でも、はっきりするまではこのドキドキする気持ちとに素直になろうと決めた。

かなり期待した言い方をすると、俺だって入学式で知り合った相手に恋をしたのだから・・・

「今度ゆっくりお話したいな!隼くんの恋愛話ずっと前から気になってたんだ!」

いつもと変わらない明るい笑顔で言う。

・・・どうして、梨々さんはいつも期待してしまうようなことを言うんだろう。
いや、梨々さんの言葉を俺が勝手に都合良く解釈してることは分かっている。

でも・・・

「あ!みんな来たみたい!隼くん、向かいにいこう!」

屈託なく笑って手を差し伸べる梨々さんは、今日を照らす太陽に重なる。


日溜まりのような優しいその手を今すぐにでも掴みたいと思う気持ちは、心の中の暴走を止められそうにはない。


梨々さんの気持ちを傷つけたり、周りの皆に迷惑をかけないように注意しながら、俺は記念すべき今日を思い切り楽しもう!


そう心に誓って、暖かい笑顔を追いかけた。

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