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141章 食事

 手を洗った4人に、綺麗なタオルを差し出す。

「これで手を拭いてね」

 手に水滴がついたままだと、食べ物に飛び散ることになる。ご飯を美味しく食べるために、しっかりと水分をふき取っておきたい。

 四人はタオルを受け取ったのち、それぞれの手を拭いていた。たったそれだけのことなのに、4人の性格が伝わってくるような気がする。

 ココアは細かい部分まで、水をふき取っている。細かいところに、気を配ることができる女性なのかなと思った。

 シオリは時間をかけて、丁寧に水分をふき取っていた。几帳面な性格をしているのかなと思った。

 ミナはやや適当だった。ざっくばらんな性格で、細かいことは苦手なのかもしれない。

 ユメカは軽く拭くだけで終わった。ご飯を食べる前に、手を拭く必要はないといわんばかりだった。

 適当に拭こうとしている女性に、シオリが注意をしていた。

「ユメカ、地面に水滴が落ちると、滑りやすくなるよ」

 手をしっかりと吹かないと、地面が滑りやすくなる。転倒しようものなら、大事故になりかねない。

「わかった」 

 ユメカは面倒であるという意思表示をしながらも、水分を丁寧にふき取っていた。その様子を見ていると、心の中で笑みがこぼれた。

 アカネの小学校時代は、ミナに近かった。拭いてはいたものの、ていねいにはやらなかった。簡潔に済ませたい、という思いが強かった。

「食事の前に手を洗うと、とっても気持ちがいいですね」

 シオリは清々しい表情になっていた。水というのは、心を洗う役割があるのかもしれない。 

「子供たちに、伝えるようにします」

 ミナは目玉焼きを目にすると、驚いた表情を見せていた。

「これは何という食べ物ですか?」

「目玉焼きというんだよ」

「どうやって作るんですか?」

「熱したフライパンに、卵を落とすだけだよ」

 アカネは一つの卵を使用して、目玉焼きの作り方を見せる。 

「こんなに簡単に作れるんですね」

「うん。慣れたらすぐにできるよ」

「ガスを設置したら、作ってみようと思います」

 ガスを設置しないことには、火を通すことはできない。彼女たちが目玉焼きを食べるのは、先になりそうだ。

 ミナはヨーグルトを指さしながら、

「これは何という食べ物ですか?」

 と聞いてきた。目玉焼きだけでなく、ヨーグルトも知らないようだ。

「ヨーグルトという食べ物だよ」

「どんな味がするんですか?」

「ほのかな甘みを感じることができるよ」

「色を見るだけで、とってもおいしそうです」

 最高級のヨーグルトは、不純物が入っておらず、透き通った色をしている。ヨーグルトであるにもかかわらず、水のように感じることもある。
 
「バナナ生活を送っていたので、他の食べ物は詳しくないんです」

 ミナは18年以上にわたって、バナナだけを食べていたのかな。そうだとするならば、まともな料理を食べていないことになる。身長が伸びないのも、必然といえそうだ。

「ラーメンという食べ物も、ココアに聞くまでわかりませんでした。自分の無知が、とっても恥ずかしいです」

「人生は長いから、いろいろな食材を知っていけるよ」

 彼女たちは18歳なので、あと70年近くは生きることになる。いろいろな食材を知るのに、充分
な時間がある。

「そうですね。あと30年くらいの人生で、いろいろな食材を知りたいです」

 日本に住んでいたため、人生は80~90年だと思っていた。こちらの世界とは異なることが、頭の片隅にもなかった。

「ご飯を食べようよ・・・・・・」

 ユメカが言葉で、全員が席に着いた。その後、テーブルに並べられた食材を、とってもおいしそうに口に運んでいた。 

「おかわりはあるから、好きなだけ食べてもいいよ」   

「ありがとうございます」

 食材の虜になったのか、シオリは鶏肉を一口で食べきってしまった。あまりのおいしさに、理性を完全に失っている。

 ココアもすごい勢いで、食材を口に運んでいた。このままのペースで食べ続けると、前回の二の舞になりそうだ。

「ココア、シオリ、もうちょっとゆっくりと食べようね」

 ミナはそういっているものの、パンを次々と口に運んでいた。食材があまりにおいしいこと、普段から食べられないことが重なって、別次元の食欲を生み出している。

 食欲がないといっていた、ユメカも豪快に食べていた。おいしい食事というのは、いくらでも入るものなのかもしれない。 

 アカネは冷蔵庫から鶏肉を取り出すと、お代わりの肉をフライパンに乗せる。彼女たちの食欲からすれば、5キロの肉はあっという間になくなりそうだ。夕食の準備をするときには、新しい肉を準備する必要がある。

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