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バレンタインデー序曲 その1

 ララコンベ温泉祭りも無事終了しました。

 その影響でしょうね、辺境都市ララコンベと、温泉祭りを共催しましたオザリーナ村は今も連日結構な数のお客さんで賑わっています。

 この世界には、温泉そのものが少ないっていうのもあるんですけど、

・温泉としてしっかり整備されている
・交通網が整備されている


 この2つがかなり影響しているようですね。

 特に後者の影響は大きいようです。
 と、いいますのも……

 スアから聞いたんですけど、この世界の温泉も僕が元いた世界の温泉と同じように火山の近くに湧き出していることが多いらしいんですよね。
 で、火山となればやはり山奥といいますか、交通の便が悪いところに湧き出していることが多いそうなんです。

 中には山間の岩場に湧き出していて、まさに知る人ぞ知る名湯なんてのも少なくないんだとか。
 そのため、近隣の住人くらいしか、普段は利用しないそうなんですよね。

「……この世界で、温泉郷や温泉集落として整備されているのは、5箇所くらいしか、ない」
「それは、ララコンベとオザリーナ村を合わせてなのかい?」
「……うん、そう」
 スアの言葉に、僕は感嘆の声を漏らしながら頷いていた。

 と、まぁ、そんなわけで……ララコンベとオザリーナ村の温泉フィーバーはしばらく続きそうですね。

 コンビニおもてなしとしましては、売り上げが伸び悩んでいたオザリーナ村の6号店の売り上げが飛躍的に伸びたのと、元々好調な売り上げを記録していたララコンベの4号店の売り上げがさらに伸びたことで、まさに温泉様々状態なわけです、はい。

 これを受けて、4号店店長のクローコさんと、6号店店長のチュパチャップの2人も
「めっちゃ気合い入るし!みたいな?」
 と、言いながら舌出し横ピースで応えるクローコさんと、
「はい、もっともっと頑張ります」
 といって、両手の拳を握りしめていたチュパチャップだったりします。

 毎週はじめの、閉店後に開催しているコンビニおもてなし責任者会議の席上で、そうやって再度気合いを入れている2人を見つめながら、僕も思わず笑顔になっていた次第です、はい。

 ちなみに……6号店ではアレーナさんを副店長に抜擢することにしました。
 何もないところでずっこけては、店長のチュパチャップや、新人店員のマキモのスカートをズリ下げまくっているアレーナなんですけど、やることはしっかりやってくれているんです。
 在庫の補充や、少なくなってきた商品の店長への報告、簡単なホットデリカの調理などなどを率先して行ってくれているそうなんですよ。
 それに、新人が一斉に辞めてしまって大変な状態になってしまった6号店を、精一杯頑張って目一杯支えてくれたわけです。

 それを評価したチュパチャップの強い意向もあって、今回の人事を僕も承認させもらったわけです、はい。

 これを受けて、アレーナも
「おおおお任せください、このアレーナ、命をかけてこの役職にふさわしい働きを……」
 と、いったところで、またもや何もないところですっころんでですね、今度は

「ひゃああああああ、だ、だからスカートはやめてくださいぃ」
「ひょおおおおおお、マキモまでなんで巻き込まれるのですかぁ」
 
 と、チュパチャップのスカートを右手で、マキモのスカートを左手で、同時にズリおろしながらずっこけていったわけなんですけど……と、とにかくしっかり頑張ってくれそうです、はい。

◇◇

 そんなコンビニおもてなしでは、僕が元いた世界で言うところの2月の催し物として、バレンタインデーフェアを企画しています。

 当然、この世界にバレンタインデーなんてありませんでした。

 そこで、コンビニおもてなしでは過去にあれこれ様々な作戦を用いてアピールしてきた次第です。
 辺境駐屯地の隊長ゴルアに、宝塚よろしく男装してもらって宣伝してもらったこともありました。
 あの時は、こちらの思惑以上の大人気になってびっくりしたもんです、はい。

 で

 今年もあれこれ計画をしているのですが……メインは、やはり

「甘くて美味しいチョコレートのお菓子」

 なわけです、はい。

 そして、これに関して人一倍燃えているのが、他ならぬヤルメキスなんですよね。

 コンビニおもてなしにおきまして、スイーツ部門「ヤルメキススイーツ」をですね、ケロリンとアルカちゃんの2人とともに支えてくれているヤルメキスなんですけど、昨年後半は12つ子を妊娠・出産したこともありまして、結構長いこと産休・育休に入っていたんです。

「お、お、お、お任せくださりませ店長様、こ、こ、こ、このヤルメキス、目一杯頑張るでごじゃりまするぅ」
 そう言って、その場でジャンピング土下座していくヤルメキス。
 蛙人だけありまして、すっごいジャンプしてからの土下座なもんですから、思わず見惚れてしまった僕だったりします。

 チョコレートは、スアの協力もあって去年の段階から増産体制が整っています。
 すでに、板チョコやナッツチョコなんかを製品化してコンビニおもてなしの本支店に並べているのですが、これが大好評になっているんです。

 そんなチョコレートを使用した特性スイーツでもって、バレンタインデーを盛り上げていこうってわけです、はい。

 そんなわけで……

 現在、ヤルメキスが作成を予定しているのはチョコ詰め合わせセットと、チョコレートケーキの2品目です。

 前者の高級チョコは、チョコレートをハート型に加工したものの周囲を、小さなチョコで飾った品物でして、そのハートの中に文字入れ出来るサービスを行うことにしています。

「好きな人に告白する日」
 
 として去年も告知していますからね。
 それを受けて、

「**さん、大好きです」

 とかいった文字入れをさせてもらうわけです、はい。

 それを受けまして、現在準備している予約票には
『希望する文字を記入してください』
 といった欄も設けてありまして、その文字をヤルメキスが、いわゆるチョコペンのような道具を使用して1枚1枚文字入れしていく予定にしています。

 これは、チョコレートケーキも同様です。

 ただまぁ、この世界でのバレンタインデーなんですけど……

 好きな人に告白するのに利用している人も少なくはなかったのですが、それ以上に

『家族に感謝する日』

 的な感じでも広まっている感じなんですよね。

 去年も、お母さんが子ども達にチョコをあげたり、その逆として子供達がお母さんにチョコをあげたり……
 そのために、コンビニおもてなしのチョコを購入していく人も少なくなかったわけです、はい。

 で

 今年もそれを見越してですね、文字入れに関しては家族向けのメッセージも可にしています。

 まだ、用紙を準備中の段階でして、来月になり次第予約を開始する予定にしているんですけど、

「あの……バレンタインデーの予約はまだですか?」
「今年もお願いしたいんですけど」
「子供達が楽しみにしてましてねぇ」

 なんて声が、各地のコンビニおもてなしに寄せられている次第なんですよ。

 この報告を受けて、僕も準備を急がないと、と、思っている次第です。

 で

 告知用のポスターも準備しないといけないわけですけど……さて、今年はどういったポスターにしましょうかねぇ……

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