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ララコンベ温泉祭り その5

 週末がやってきました。

 それはつまり、辺境都市ララコンベ温泉祭りの開催日がやってきたことを意味します。
 今日から2日間、コンビニおもてなし4号店があります辺境都市ララコンベでは、都市をあげてのお祭が開催されます。

 すでに数日前から都市内の街道にはたくさんの屋台が軒を連ねています。
 この屋台は、お祭を共催しています一山越えた向こうのオザリーナ村にお店を構えているみなさんに加えて、定期魔道船の貨物を利用して辺境都市ナカンコンベからやってきた商会や商店のみなさんがその大半を占めています。
 
 このララコンベ温泉祭りは、ララコンベ商店街組合が総力をあげて開催しています。
 各地の商店街組合に強力してもらって宣伝ポスターを貼りまくってもらったりしているんですけど、その効果もあってか辺境都市ララコンベの街道は多くのお客さんが行き来していました。
 街中にあります温泉宿も、この週末はすでに満員御礼状態らしく、共催しているオザリーナ村の宿泊施設までもがお祭の期間は満員御礼状態になっているそうなんです。

 幸い、コンビニおもてなしが運行しています定期魔道船が周囲の都市を周回している関係で宿泊場所が足りないという最悪の状況には陥っていないのですが、このお祭の影響で辺境都市ブラコンベやナカンコンベの宿泊施設まで普段より多くの予約で埋まっているらしく、嬉しい悲鳴がありこちであがっているようです。

 そんな中……

 主催会場のララコンベにありますコンビニおもてなし4号店と、共催しているオザリーナ村にありますコンビニおもてなし6号店の2店舗も、祭り目当てのお客さんで大賑わいです。

 特に、4号店の人気ぶりはちょっとすごいんです。
 何しろ、お祭初日の朝には、開店前からお店の前に行列が出来ていたほどですからね。

 当然これには大きな理由があります。
 今回のララコンベ温泉祭りでは、ララコンベ温泉美人コンテストが開催されることになっています。

 このコンテストには、ララコンベ商店街組合か共催しているオザリーナ村の商店街組合のどちらかに加盟している商会及び商店からは1名以上参加推奨ってことになっていまして、コンビニおもてなし4号店からは店長のクローコさんが参加しているんです。

 んで、

 そのクローコさんなんですけど……普段は、僕が元いた世界でも通用してしまいそうなくらいの超ヤマンバメイクを好んでいるのでうが……この温泉美人コンテスト参加用の水晶画像撮影を行った際のクローコさんは、温泉の中にバスタオル1枚でつかっている姿での撮影だったもんですからノーメイクだったんです。

 で……その姿が、なんといいますか絶世の美少女と言っても過言ではないほどだったんです。
 クローコさんの場合、以前から顔のつくりはいいんだからそのメイクさえどうにかすれば婚活にも苦労しないだろうにと思っているんですけど、
「このお化粧は、アタシのジャスティス!、みたいな?」
 といって、決して辞めようとしないんですよね、これが……

 今回の撮影に関しては
「温泉に入るのにお化粧はまずい、みたいな?」
 そう言って、自発的にお化粧を落としていたわけなんですよね。

 で

 その姿が宣伝ポスターの1枚になって各地に掲載されていたんですけど……

「この美少女に会いに来ました」
「この女性、最高です」

 なんかですね……定期魔道船から下船してきた人達に商店街組合の蟻人さん達がインタビューをしていたんですけど、多くの男性客のみなさんからそんな声があがっていた次第でして……

 これを受けて、商店街組合から
「お祭り期間中はくれぐれもポスターと同じ格好で勤務してくださいですです」
 そう、念を押されまくったクローコさんは、
「むぅ……不本意なんですけどぉ……」
 と、頬を膨らませながらも、ほぼすっぴんなナチュラルメイクで勤務を行っているんです。

 で

 開店前から列をなしているみなさんは、そんなクローコさんを一目見ようと集まっているわけでして……

◇◇

 コンビニおもてなし4号店は、そんなわけで開店と同時にすごい数のお客さんで賑わっています。
 ただ、ほっとくとクローコさんを遠巻きに眺めるために居座ろうとするお客さんで店内があふれかえってしまい兼ねませんので、買い物が済んだのに退店しようとしていなかったり、品定めをするふりをしながらチラチラとクローコさんを見ているだけのお客さんには、
「あの、お客さん……」
 と、軽く声かけさせて頂いている次第です。

 申し訳ないなとは思うんですけど……そうでもしないとお店が回りませんからね。

 ちなみにですが……
 事前にララコンベ商店街組合の蟻人さん達に、
「今のところの人気の具合はどんな感じなんだい?」
 って聞いてみたところ、
「コンビニおもてなし4号店のクローコさんと、オザリーナ村の踊り小屋のシャラさんの2人が大人気ですです」
 って返事が返ってきた次第です。

 この調子だと、クローコさんは最低でも2位には入れそうですね。

 で、これをきっかけにいい人が現れて、そのままゴールインってなってくれればあれなんですけど……クローコさんってば、昨日までにラブレターを手渡された相手、数人とデートをしようとしているんですけど……気合いの入りまくったヤマンバメイクで参上したもんですから……
「……あなた、誰?」
 状態になってしまっているそうで……全員デート開始までの間に回れ右して帰られてしまっているそうなんですよねぇ……

「とにかく、商売繁盛が何より! みたいな」
 そう言いながら、クローコさんは朝からレジで笑顔を振りまいていました。

◇◇

 そんな中、コンビニおもてなしでは街道に屋台も出しています。
 以前の夏祭りなんかの際にやったように、串焼き料理をメインにした屋台なんですけど、この屋台ではパラナミオが中心になってあれこれ頑張ってくれています。

 夏祭りの頃から
「パラナミオ、パパのお手伝いをしたいです」
 って言いながら屋台のお手伝いをしまくってくれているパラナミオ。
 今では、パラナミオに任せておけば屋台は大丈夫って思えるくらいしっかりしている次第なんですよ。

 接客態度もいいですし、いつも笑顔で対応しています。
 商品補充や陳列直し作業なんかもそつなくこなしています。

 それに何より、
「いらっしゃいませぇ!」
 常に満開の笑顔で、大きな声で発しているお出迎えの言葉が、お客さん達からも大好評なんですよ。

 4号店の方のお客さん過剰状態がどうにか一段落したところで、僕はパラナミオがやっている屋台へ駆け足で出向きました。

 ……すると

 屋台の前には結構な数のお客さんが列をなしていたんです。
「パラナミオ、手伝うよ」
「あ、パパ! ありがとうございます」
 僕が姿を現したもんですから、パラナミオは超満開な笑顔を僕に向けてくれました。

 屋台はリョータやアルト、ムツキとアルカちゃんと言った我が家の子供達が頑張ってくれていました。
 保護者として、スアが一緒にいるんですけど……以前よりはかなり改善されたとはいえ、スアは根っからの対人恐怖症なもんですから、店内の奥に置かれている木箱の中から、みんなの様子を確認したり、時に魔法で手助けをしてくれているんです。

 そのおかげで、僕も朝一の時間帯は4号店のヘルプに行くことが出来た訳です。 
 ホント、スアには感謝しきりです、はい。

 そんな中、辺境都市ララコンベの上空に

 ポン……ポポン……

 と、音がやたら大きい花火が、青空に煙をなびかせはじめました。
「どうやら、本格的にお祭がはじまるみたいだね」
「そうなんですか!? じゃあパラナミオはもっと頑張ります」
 そう言って、両腕で力こぶをつくるパラナミオ。
 その可愛らしい姿を前にして、僕は思わず胸がきゅんとなってしまっていた次第でして……

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