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第10話 ウォンの策(9)

 転がったままの状態でうつ伏せ。その状態で、自身の背、後方で何が起きているのだろうか? と、聞く耳を立てながら、己の大きな笹耳を『ピクピク』と、動かしているウォンの耳には、此の国の漢王になれなかった自分への不満。侮り。蔑み、嘲笑う。ウォン自身も聞けば気落ちをするような捨て台詞ではなく。自分自身が領主の身分を剥奪されたが為に困っている。またウォン自身が領主に返り咲いて困るのだと、言った願望と熱い声援をくれる者達の声や。彼の、健太の、妃達も頭を抱えている二国の男王健太の女癖の悪さに対して困っている者達や不満に思っている者達の荒らしい声──。

 そう、只今、横たわり。横たわったままの情けない容姿、様子をしているウォンに見方をするのだ。一緒に二国へと謀反、クーデターをおこない。振る気良き時代。太古の、原始生活に戻ろう! 戻るのだ! と、異を唱える者達や打倒ジャポネの男王健太──。奴を倒して、男尊女卑の世界から、女尊男卑思想を取り戻し。自分達の多々いる女神さま達を取り戻し。再度祭り上げ、尊い、敬い、拝みながら。自然に触れ合い共存。共に暮らす太古の世界観を取り戻そうと集った者達が。健太の親衛隊の者達と争い始め。ウォンを逃そう。そして女王アイカの許へと送り。合流させて旗揚げ! 決起するのだ! と、集いし仲間達だから。

「閣下ぁあああっ!」

「ウォン閣下ぁあああっ!」

「早く、立ち上がってお逃げください──!」

「女王アイカが捕らわれている神殿近くにも沢山の中達が素知らぬ振りをしながら待機。隠れている者達もいますから。その者達を連れて再起! 再起を! 我等ぁあああっ! オーク種族の自由の為に再起! 再起をおねがいします──!」と。

 彼、ウォンには、誰が叫んでいる。嘆願をしているのかわからないけれど。彼の耳には、その者達……。ウォン自身の想いと共存する者達の熱い声が、叫びが、ウォンの耳へと聞こえくる。

「うぉおおおっ! 分ったぁあああっ! 分ったぞぉおおおっ! 俺はぁあああっ! お前達の思いを必ず叶えてやる。あのチビ! ガキを! 必ず俺のこの腕で葬ってやるからなぁあああっ!」

 ウォンは声を大にして叫んだ! 叫ぶと──!

 そのまま立ち上がり。自身の足元に転がっている鋼の戟を拾い。後ろも振り向かず、駆け足でこの場を立ち去るのだった。


 ◇◇◇◇◇

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