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ララコンベ温泉祭り その1

 辺境都市ララコンベでは、温泉祭りに向けた準備が着々と進んでいます。

 冬になって若干肌寒くはなっていますが、雪が降るとかそこまで寒くはないララコンベ。
 その街中に、色とりどりの魔法灯が設置されていまして、夜になるとそれが極彩色の輝きを放っています。

 ちなみに、このカラフル魔法灯なんですがコンビニおもてなしの商品だったりします。
 僕が元いた世界で見たことがあった色が色々変わっていくライトのことを思い出して、スアに
「こんなの作れないかな?」
 って相談したところ、
「……こんな感じ、かな?」
 ってな具合で完成させてくれたんですよね。
 なんでも、赤青黄色と、それぞれの色を放つ魔石を融合させてそれが交互に光りを放つように……と、まぁ、そんな感じの仕組みで極彩色の光りを放っているそうなんです。

 で、

 このカラフル魔法灯を、ララコンベ商店街組合が大量に購入してですね、こうして街中に設置しまくった訳なんです、はい。

 ちなみに

 これ以外にも、ララコンベにお店を構えているお店の店先には、温泉に入っている女性の姿を水晶画像撮影機で撮影した画像を印刷したポスターが掲示されています。

 もちろん体にバスタオルを巻き付けていたり、湯船に肩までつかっていたりしている画像ばかりですからね。

 実はこれ、今回のララコンベ温泉祭りのPRとイベントを兼ねているんです。

 いえね

 一回目の会議で決まらなかったララコンベ温泉祭りのイベントなんですけど、数日後に開かれた第二回の会議で
『ララコンベ看板店員コンテスト』
 っていうのを開催することになったんです。

 ララコンベ商店街組合に加盟しているお店からですね、各店1人看板店員を推薦してもらいましてお祭当日にコンテストを開催してララコンベ1の看板店員を決めようってイベントなんです。

 まぁ、僕の世界で言うところの美人店員コンテストみたいなもんですね。

 で、

 それぞれの店先に掲示されているポスターには、その店からエントリーしている店員さんが撮影されているわけなんです。

 今は事前投票期間でして、温泉を訪れたお客さん達による無記名投票が開催されています。

 今のララコンベ温泉にはですね、都市の中に7つの公衆浴場が設置されています。
 で、お客さん達は、その浴場を巡ってもらいながら、その道中にあるお店も堪能してもらっているわけなんですよ。

 5つ全ての温泉を巡ると、くじを引くことができまして、

1等 ララコンベ温泉宿無料宿泊券 (1泊2日豪華食事付き)
2等 ララコンベ商店街組合加盟店で使用出来る高額商品券

 といった感じの商品があたるようになっています。
 はずれの参加賞として温泉1回無料券も準備されていますので、いわゆる空くじなしなもんですから、これ、結構人気になっているんです。

 で、お客さん達はそうやって温泉を巡りながら、街道沿いにある店の店先に掲示されているポスターを見て回ってですね、いいなと思った店員さんのポスターが掲示されているお店の名前を投票用紙に記入して、温泉宿のロビーに設置されています投票箱の中へそれを投函する仕組みになっている次第です。

 ちなみに……

 当然、ララコンベにありますコンビニおもてなし4号店もこの行事に参加しています。

 勝利を優先するのでしたら、ここは店員のララデンテさんで決定だったわけなんですけど……何しろララデンテさんは門の守護者としてこの一帯を長く守護し続けているもんですから、この周辺の皆さんから神として崇め奉られている存在でして、そんなララデンテさんが製造・販売している温泉まんじゅうを縁起物として買うためだけにララコンベを訪れている方々も少なくないですからね。

 ただ、それをやっちゃうと後々問題になるよなぁ、と思った僕。
 それをララデンテさんにも直接相談してみたところ、
「そりゃそうだなぁ……うん、店長の言う通り、アタシはエントリーしない方がいいだろうね」
 そう言われたもんですから、その結果、ララデンテさんはエントリーしないってことになった次第なんです。

 そんなわけで……

 コンビニおもてなし4号店前に掲示されているポスターには……店長のクローコさんが起用されていました。

 見た目がギャルというか、ヤマンバメイクなクローコさん。
 ですが……ポスターのクローコさんは、温泉に入っている姿を撮影しているため、当然すっぴんなんでが……

「……お、おい、このポスター……」
「この可愛い女の子がこの店に勤務してるのか?」
 
 といった具合で、行き交う人々がもれなく立ち止まってポスターに魅入っている次第なんですよ。

 まぁ、それも当然といいますか、理解出来ます。

 ポスターの中のクローコさん……控えめにいって超美少女なんですよ。
 年齢的に言えば、僕より年上のクローコさんなんですけど、メイクをすべて落とした状態のクローコさんってば、びっくりするぐらいの童顔でして、それでもってすっごい美少女な顔立ちなんですよ。

 撮影する際に
『すっぴんはやばいって、まじやばいって』
 って、散々恥ずかしがっていたクローコさんですけど、まぁ最終的にはこうしてポスターにおさまったわけです、はい。

 で

 出来上がったポスターを掲示したのですが……店内のクローコさんは最初、いつものようにヤマンバメイクで勤務していたのですが……

『コンビニおもてなしには、ポスターの店員が勤務していない』
 
 って苦情が、ララコンベ商店街組合に殺到したそうなんですよ……

 まぁ、そうなりますよねぇ……ヤマンバメイクしたクローコさんと、ポスターのすっぴん美少女のクローコさんが同一人物だと言われても、なかなか信じられるもんじゃないってくらい違ってましたからねぇ……


 そんなわけで


 今のクローコさんは、ポスターに会わせてすっぴん状態で勤務している次第なんです。
 クローコさんも
「まぁ、決まりならしょうがないし、みたいな?」
 そう言って、これを受け入れてくれたのですが……

 その日以降……コンビニおもてなし4号店は連日おすなおすなの大盛況になっている状態です。

「あの店員さん、可愛い……」
「ポスターも可愛いけど、実物はそれ以上だ……」
 みたいな感じでですね、温泉客の皆さんが一様にぽややんとなさっている次第なんですよ。

 そんなわけで、元々ララコンベの中でも1,2を争う売り上げを上げ続けていたコンビニおもてなし4号店の売り上げがさらにあがっている次第なんですよね。

 クローコさんの元にはファンレターが連日箱単位で、ララコンベ商店街組合から届けられているほどです。

 これには、絶賛婚活中のクローコさんも
「えへへぇ、マジやばいってぇ」
 と言いながら、デレデレしている今日この頃なわけです、はい。

 ……でもなぁ……もしファンレターをくれた人とデートすることになったとしても、クローコさんのことですからいつも以上に気合いの入ったヤマンバメイクと、じゃらじゃらアクセサリー状態で出向くはずですから、相手さん的には、
『あなた誰?』
 状態になってしまう未来しか見えないといいますか……

 そんなわけで、ララコンベ温泉祭りに向けて都市の中は色んな意味で盛り上がっている次第です、はい。

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