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119章 金属が詰まった原因

「カウドック」の中に、異物が混入されるまでのいきさつが判明した。

「パンの中に、異物が混入していたんですね」

 パンの中に混入されていたために、餌を与える人、「カウドック」のどちらも気づかなかったようだ。

 金属が混入したタイミングは、パンの製造過程だった。パンを生産している機械から、金属の一部分が混入してしまった。ヒューマンエラーではなく、機械の誤作動によるものだった。

「誰かが意図的に、混入したわけではないようだね」

 ハルキは顎に手を当てた状態で、二、三度頷いていた。

「そうみたいですね」

 犯罪でなかったことに、そっと胸をなでおろす。ペットの命を狙う人間がいたら、「なごみや」の営業に大きな支障が出ることになる。

 ペットの命を故意に奪った場合、20年以上の強制労働となる。動物ということもあって、罪はやや軽くなっているものの、重労働に課されることに変わりはない。99パーセント以上の確率
で、あの世に旅立つことになりそうだ。

 元気を取り戻したばかりのペットに、パン、チーズを与える。お腹が空いているのか、ものすごいスピードで食べている。そのさまは、大食い選手権に出場する選手みたいだ。

「お腹がすいているんだね」

 ペットが餌を食べていることに対して、ハルキは安堵の表情を浮かべている。ペットを家族のように思っているのが、はっきりと伝わってきた。

「ペルソナ、ご飯をしっかりと食べるんだよ」

 大量に食べすぎて、お腹を壊さなければいいけど。ペルソナの食べっぷりを見て、そのように思ってしまった。

 食べ物を食べるだけではなく、水分を取った方がいい。アカネはスーパーで購入した、ミルクを与えることにした。

「カウドック」はミルクを、すごい勢いで飲んでいく。勢いが良すぎたからか、ミルクが地面にこぼれることとなった。ハルキはそのことに対して、笑みを浮かべていた。ペットが元気になったことが、本当に嬉しいようだ。 

「ペルソナ、喉が乾いているんだね」

 ぐったりとしてからは、充分な水分を取れなかった。体内が水分を求めるのは、自然の流れといえる。 

 他の動物にエサを与えようかなと思っていると、ミライの母親が姿を現した。  

「アカネさん、肉が焼き上がりました」

 アカネは焼き上がった肉を受け取った。

「ありがとうございます」

 ミライの母親の視線は、ペルソナに向けられていた。

「ぐったりとしていたのに、いつの間に元気になったのかな?」

 ペルソナは元気になるまでの過程を、簡潔に伝えていた。

「アカネさんが、病気を治してくれたんだよ」

 ミライの母親は、深々と頭を下げる。

「アカネさん、ありがとうございます」

「いえいえ。たいしたことはしていないですよ」

 魔法を使えるからか、当たり前程度にしか思っていなかった。「セカンドライフの街」にやってきてから、従来の感覚が麻痺してしまっている。

「ペルソナの原因は何だったの」

 ミライの母親の質問に、ハルキが答えていた。

「パンの中に金属が入っていたみたい。それを食べてしまったことで、不調になったんじゃないかな」

 ミライの母親は驚いた様子を見せていた。

「そうだったんだ・・・・・・」

 ミライの母親の視線が、こちらに向けられることとなった。

「金属をどうやって取り除いたんですか?」

「魔法を使用して、体内の金属を除去しました」

「人間だけではなく、ペットにも有効なんですね」

「そうみたいです」

「アカネさんがいなければ、ペルソナは死んでいました。大切な命を助けてくださり、本当にありがとうございました」

 人間、ペットの命を大切に思っている。その姿を見ていると、口元が緩むこととなった。

「パンを仕入れる店については、変更しようと思います。ペットを危険にさらすところとは、取引はできません」

 人間の信頼関係は、一瞬で終わることもある。今回の件で、そのことを感じることとなった。

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