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地下迷宮の狼さん その2

 今回イエロ達が倒した草原狼たちですが、スアによりますと
「……タテガミライオンほどじゃないけど、結構美味しい」
 とのことですので、全部魔法袋に回収しました。
 とりあえず持ち帰ってどんな料理に使えるかあれこれ試してみようと思っています。

「さて……」
 草原狼を死骸を片付け終えた僕は、改めて洞窟へ視線を向けました。

「さぁ、はじめるでござるよ」
「行くとするか」
「ウッキー!」
 イエロ・ルア・セーテンの3人が頼もしいことこの上ない表情を浮かべながら僕の左に並んでいます。

 で、僕の右に立っているスアが洞窟内を魔法で検索してくれたんですけど
「……一階から3階までは狼種の魔獣でいっぱい、ね……4階に大きな空間が1つあるわ」
 そう、みんなに教えてくれました。

「空間? ひょっとして罠とか、そんなものがあったりするのかな?」
「……それはなさそう」
 僕とスアがそんな会話を交わしていると、

「店長殿、迷わず行けばわかるでござる」
 そう言いながら、イエロが洞窟に入っていきまして、そのあとをルア・セーテンも続いていきます。

 なんといいますか、この女にしておくのはもったいないことこの上ない男前っぷり……イエロが辺境駐屯地の女性騎士達にすっごい人気があるのも頷けるといいますか……

「じゃあ僕達は3人の後をついていこう。スアは3人の補佐をしながら僕達に防御魔法をお願いするね。パラナミオ達はママの後ろについて移動して、パパは後ろに気をつけるから」
 そう指示を出しまして、僕達もその後に続いていきました。

 ◇◇

 さて……そんな感じで洞窟に入っていった僕達なわけですが……そこからはもうなんといいますか


 圧 倒 的


 この言葉しか当てはまりませんでした。

 1階層は結構広くてですね、あちこちの隘路の奥に漆黒狼が潜んでいました。
 その数は10や20ではありません……暗闇の中からいきなり50近い数の漆黒狼が飛び出してきたなんてしょっちゅうでした。

 で

 その漆黒狼をですね、

 イエロがぶった切り
 ルアがぶっ叩き
 セーテンがひっかき

 時折後方から忍び寄ってくる漆黒狼を、スアが雷撃魔法で黒焦げに

 と、まぁ、そんな感じで、まったく危なげないまま1階の漆黒狼を掃討してしまったんです。

 地下2階・3階には、漆黒狼の亜種が結構な数巣くっていたのですが、 

 その漆黒狼の亜種達をですね、

 イエロがぶった切り
 ルアがぶっ叩き
 セーテンがひっかき

 時折後方から忍び寄ってくる漆黒狼を、スアが火炎魔法で黒焦げに

 と、まぁ、そんな感じで、1階の時同様に危なげないまま両階層の狼系魔獣達を掃討していったんです。

 で、僕やパラナミオ達はといいますと、イエロ達が掃討した狼系魔獣達を魔法袋の中に詰め込んでいくだけの簡単なお仕事といいますか……その作業中に忍び寄って来た狼系魔獣もいたのですが、

「……邪魔」

 の一言でスアが吹き飛ばしてしまいまして……はい、そんな感じです。

 多分、地下3階層までの間に軽く三桁中盤くらいの狼系魔獣達を討伐しまくったわけなんですけど……普通これだけの数の魔獣がいたら、とてもこの人数じゃあ入ってこれるわけがない気がするんですけど……

 そんなことを考えている僕の前では、

「いやぁ、久々にいい運動出来たよ」
「さすがルア殿ですな、まったく錆び付いてないでござる」
「いい攻撃だったキ」
 とまぁ、和気藹々と語り合っているルア・イエロ・セーテンの姿があったわけでありまして……

 そんな余裕綽々の状態の僕達の前に残されているのは、この地下迷宮の最下層にあたります、地下4階層のみとなりました。

 さっそく僕達は、そこへ続く穴を降っていきました。
 地下3階層までは直系2,3メートルくらいの横穴が入り組みまくった形で構成されていた地下迷宮なんですが、地下4階層は、到達するなり巨大な空洞が広がっていました。

 その真ん中に、何かがあるようです。

 みんなが手にしている魔法灯の灯りではちょっとぼんやりとしか見えませんね。

「あれは……なんだろう?」
 前方を見つめながら、手の魔法灯をかざす僕。

 ……ですが、やはりぼんやりとしか見えません。

 すると、
「……まかせて」
 スアがそう言って、右手を前方に伸ばしました。

 同時に、スアの少し前方の空間に、巨大な魔法灯が出現しました。
 空中に浮いている巨大名魔法灯は、まるで陽光のような光りで周囲を照らしはじめたのですが……その光りに照らされた空洞の真ん中に、大きな柱がそびえていました。

 左右に2本そびえているその巨大な石の柱は、石製です。

「……ララコンベにある、門の遺跡にちょっと似てる気がするなぁ」
 その柱を見上げながら、僕はそんなことを口にしました。

 すると

「ララコンベの門って……ララデンテちゃんが守ってた門のことですガウ?」
 その門の方から、そんな声が聞こえてきたのですが……

「……え? どこ?」
 周囲をキョロキョロしている僕達なんですけど……その声の主の姿はどこにも見当たりません。

 ですが

 スアだけは、その石の柱の脇の方をジッと見つめています。

「……あそこにいる、の」
 そう言って、そのあたりを指さすスア。

 すると

「あ、す、すいませんガウ、人と出会うのって何十年ぶりなもんガウから、姿を消したままにしていたガウ」
 そんな声と同時に、狼の格好をした女の子がそこに現れました。

 この世界の亜人種族には2種類ありまして、
 亜人人種(デミピープル)は、人の姿で、動物の耳や尻尾がくっついている感じで、人亜人種(ワーデミ)は動物が人のように二本足で歩いている感じなんです。

 で

 その人物は後者です。
 服を着た小柄な狼が、二本足で歩いています。

 その狼さんは、トトトと僕達の元へと駆け寄ってくると、
「皆様、本日はわざわざ門の遺跡までお越しくださいまして感謝感激ガウ。ボクはこの門の守護者でガウリーナって言うガウ」
 そう言ってぺこりと頭を下げたウリーナ。
 ボクっこな女の子……いや、女性なんでしょうね。

 おそらくですが、ララコンベの門の守護者だったララデンテさん同様に、思念体……つまり何十年も前に肉体は失われている、僕の世界で言うところの幽霊ってことなんでしょう……なにしろ、さっき何もないところからいきなり出現してきましたしね。

 僕がそんなことを考えている前で、そのガウリーナさんはニコニコ笑いながら僕達を見回していたのですが……その顔の動きがスアのところでピタッととまりました。

「……え? も、もしかして……ステルアム様ガウ? 勇者マックス様のお仲間の魔法使いだった……」
 そう言いながら、その眼を輝かせるガウリーナ。

 すると……スアは、
「……人違い、です」
 そう言いながら、僕の背後に隠れてしまいました。

「そんなはずはないガウ! 忘れもしないあの百年前……あれ? 二百年前? 三百年前? えっと……とにかくすっごい昔にもがががが……」
 嬉々として語り始めたガウリーナなんですが……スアが僕の背に隠れたまま水晶樹の杖をガウリーナへと向けていました。
 同時に、ガウリーナの体を光りのロープみたいな物が拘束していきまして、そのまま口まで覆われてしまったガウリーナは一言も話すことが出来なくなってしまったといいますか……

 え~……結局スアってば、本当のところ何歳なんだろうって思いが少し脳裏によぎったものの、そのことに燗しては、あえてそれ以上考えないことにした僕でした。
 
 女性の年齢を追求するのは野暮ってもんですしね。

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