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第10話 ウォンの策(3)

〈ガン!〉

「うっ」

〈ドン!〉

「ぐわぁっ!」と。

 何とも言い難いと、いうか? 物々しく荒々しい音と、男戦士達の悲痛な声が聞こえてきたのだ。

 だけど、男戦士達の声は未だ終わらないようだ。

 だって直ぐに、己の持つ、鋼の鋭い刃と槍の先を括りつけた。今迄は此の国にはなかった武器である戟を振るい上げ、振り下ろし、ある男を駆除、殺し。骸にしてやろうと残りの数人が、逃亡を企てる漢、ウォンへと襲いかかるからね。

 でも、流石にオーク種族最強の男戦士だと世に謳われ、称えられたウォンを持ってしても、全部が鋼でできた戟の攻撃を受けきり避けるのは至難な技のようだ。

 だって他種族ならいざ知らず。相手は同じオーク種族の男達だ。それも、わざわざ健太がミライへと命令、下知──。武、腕の立つ者達を数名用意して、鋼の特注品の重量がある戟を所持させて、ウォンを投獄している牢屋を包囲した状態で、彼の生死確認するようにとの命令だから。

 ウォンがこの場、牢屋から逃亡、逃げようとするならば。ミライが選んだ腕の立つ者達……。


 そう、ウォン自身の部下だった。女王アイカの近衛隊達数名を倒す。退けないと彼のある目的を決行──達成できなくなる。

 でも、ウォンの様子を遠目、傍から凝視してもわかる通りだ。

 彼は、自身を襲ってくる元部下達を素手で対処しないといけないのと。やはりこれと言って食事も水分の方も余り採取、食べていない状態のウォンだから。

 やはり彼の身体は衰弱しているし。今迄暗い。陽も入らないような、漆黒の闇に覆われた部屋に束縛状態で監視されていたウォンだからね。いざ明るい場所──。陽の当たる明るい場所へと出ると、己の目、瞳が、外気の明るさに慣れずに視界を衰え、衰退させた状態だから。尚更ウォンは、自身を処分しにきた元部下達の、己の命をかけた戦いに対して、後手、後手へと回ってしまうようになる。

 だって敵が振るい下ろす戟をウォンが柄の部分を二の腕や素手で受け止めても、彼の腕や掌、甲に激痛が。

 どう、自身の骨が砕けたのではないか? 思えるぐらいの激痛が走るので、敵の武器を腕などでガード、とめる度に、ウォンの顔は、激痛の余り顔が歪む、強張るのであった。

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