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110章 お金はどこに?

「ココアさん、ラーメンはもういいかな」

「はい、お腹がいっぱいです」

 ラーメン2杯、トッピングを食べた。一般女性にとっては、満腹になる食事をとれたのではなかろうか。

「会計をするね」

「はい、お願いします」

 ココアは頭を深く下げる。

「今日はありがとうございました」

「どういたしまして」

 アカネは会計を待っていると思われる、女性に声をかける。  

「フタバさん、会計をお願いします」

 アカネが伝票を渡すと、フタバはラーメンの値段を計算する。トッピングが多かったのか、やや時間がかかっていた。

「ラーメン4杯、トッピングで9000ゴールドとなります」

 良心的な値段だったので、心の中で安心することができた。ヨモギラーメンと同じ価格なら、どうしようかなと思っていた。

 お金を支払おうとすると、財布を持っていないことに気づく。3億ゴールドくらいは所持して
いたはずなのに、どこに行ってしまったのだろうか。

 通常の人なら慌てるところだけど、アカネは超能力を所持している。テレポーテーションの能力を使えば、一瞬でお金を調達することができる。

「お金を忘れてしまったので、ここで待っていてくれないかな。5分くらいでお金を準備できるから」

 お金を忘れたことを知り、ココアは不安そうな表情を浮かべていた。彼女の頭の中に、牢獄がよぎっているのかもしれない。

 ラーメン代を取りに行こうとしていると、フタバが助け船を出した。

「アカネさんのおかげで、500万ゴールド以上のお金をもらうことができました。ラーメン代は
無料でいいですよ」

 ラーメン代が無料になることを知り、ココアはそっと胸をなでおろしていた。

「食べたものについては、きっちりとお金を払います。ちょっとだけ待っていてください」

 テレポーテーションの能力をしようとする前に、ミライから声をかけられる。

「アカネさんの代わりに、私がお金を払います」

「ミライさん・・・・・・」

「アカネさんにはいろいろとお世話になっています。これくらいのお金なら、喜んで払いたいと思います」

 ミライはラーメン代を取り出すと、フタバに渡していた。

「フタバねえさん、ラーメン代の9000ゴールドだよ」

「ミライ、そのお金はいいよ」

 ミライはお金を財布にしまおうとしなかった。彼女からは、絶対にラーメン代を払うという意
思を感じられた。

「1億ゴールドをもらってから、もやもやとした気分が続いていました。些細な恩返しをするこ
とで、アカネさんの役に立ちたいです」

 ミライの強い意志を感じたのか、フタバはラーメン代を受け取っていた。アカネはその様子を見て、お金を忘れたことを大いに悔やんだ。

「アカネさん、次回からはラーメン代を無料にさせていただきます」

「大丈夫だよ。次回からはきっちりと払うよ」

 地雷処理などの仕事をすれば、1兆ゴールド、2兆ゴールドくらいは楽々入手できる。そのよう
な女性にとって、9000ゴールドを払えないのは屈辱である。

 お金を忘れたのかなと思っていると、懐の中にお金がたんまりと入っているではないか。先ほどはどうして、気づかなかったのだろうか。

「フタバさん、お金があったよ」

 ラーメン代を払おうとすると、フタバからストップをかけられた。

「アカネさんのおかげで、私たちは救われました。そのような人から、ラーメン代をもらうことはできません」 

「私は何もしていないような・・・・・・・」

 アカネが首をかしげていると、ミライがゆっくりと口を開いた。

「アカネさんには伝えていなかったけど、姉、妹の家族に1000万ゴールドを渡しました。店の運
用資金に手をつけてしまったことを、深くお詫びしたいです」

 1億ゴールドの一部を、自分のきょうだいなどにプレゼントしていたのか。ミライの人柄の良さを感じさせる一面だ。

 フタバは当時の生活について話をする。

「私たちも非常に貧しく、バナナだけの生活を送っていました。子供は好きなものを食べられな
いからか、涙を流すことも少なくありませんでした」

 ココアだけでなく、フタバたちもバナナ生活を送っていたとは。「セカンドライフの街」の生活レベルの低さが、あらためて浮き彫りとなった。

「ミライから話を聞いたとき、救われたような気分になりました。このお金さえあれば、バナナ生活から解放され、子供たちに満足な食事を食べさせることができます」

 子供にお腹いっぱいのご飯を食べさせたいというのは、親としての純粋な思いのようだ。アカネはそのことを知って、少しだけ嬉しい気分になった。

「ゴールドをもらってからは、いろいろな食事を食べさせることができました。本当にありがとうございます」

 フタバの瞳から、大粒の涙が流れる。ココアはその様子を見て、顔をしわくちゃにしていた。彼女も同じようなことを考えているのかな。

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