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104章 ラーメン店を尋ねる

 ラーメン店を訪ねようとすると、店は既に閉まっていた。深夜時間帯の営業はやっていないみたいだ。

「閉店しているみたいだね」

 ココアはショックが大きいのか、肩をがっくりと落としていた。

「すみません。店の情報を調べていませんでした」

 責任を感じている女性の肩に、掌をそっと乗せた。

「閉店しているのであればしょうがないよ。他は何が食べたい?」

「・・・・・・」

 ココアは返事をしなかった。ラーメン以外を食べるつもりはないのかなと思える。

 店が閉まっているのであれば、長居をする必要はない。ココアに声をかけることにした。

「別のところに行こう」

「はい」

 ラーメンへの未練が強いのか、ココアは足を動かそうとしなかった。アカネは彼女の気が済むまで、そっとすることにした。

 ラーメン店をあとにしようとすると、女性から声をかけられる。

「どうかしましたか・・・・・・?」

「ラーメンはもう終わりですか?」

「はい、今日は終了しています。翌日以降にお越しください」

「わかりました・・・・・・」

 アカネの肩に、やや冷たい感触を感じられた。隣を見ると、ココアが掌を乗せていた。

「アカネさん、他の店に行きましょう」

「うん。いこう」

 ココアは決心がついたのか、店から離れようとしていた。アカネもそうしようとしていると、
女性から声をかけられた。

「アカネさんですか・・・・・・」

「はい、そうですけど・・・・・」

「アカネさんのために店を開けます。どうぞ、入ってください」

「そこまでやってもらわなくてもいいですよ」

「アカネさんのおかげで、店を開けるようになりました。恩人をないがしろにするわけにはいきません」

「私のおかげ?」

 ラーメン店に何をしたのかな。そのように思っていると、女性は口を開いた。

「妹のミライの絵の稼ぎによって、ラーメン店はオープンしました」

 ミライの姉によって、ラーメン店は経営されていたのか。不思議な縁を感じずにはいられなかった。

「絵の展示会に参加させていただいたことについては、心から感謝しています。あのことが転機
となって、私たちの生活はよくなりました」

「私は何もしていないよ・・・・・・」 

「アカネさんと知り合いでなかったら、絵を飾ることはできなかったと思います」

「私がきっかけを作ったとしても、上手な絵を描いたのはミライさんだよ」

 きっかけがあったとしても、いかせなければ意味はない。ミライ自身で道を切り開いたからこそ、絵描きとしてやっていけるようになった。

「病気を治していただいたことも、深く感謝しています。アカネさんと出会っていなければ、顔に火傷を負ったまま、一生を終えるところでした」

 火傷の治療については、回復魔法の力が大きい。他の人がどんなに頑張っても、火傷を治療するのは不可能だ。

「自己紹介が遅れました。私はフタバといいます」

「フタバさん、はじめまして」 

「店に入ってください」

 フタバの手招きによって、二人は店内に入っていく。

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