バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

デラマンモスパオンを求めて その3

 デラマンモスパオンのお肉を使った『デラマンモスパオンのステーキ弁当』は、今のところ様子見を兼ねて限定販売をしているのですが、コンビニおもてなしの本支店並びに出張所では、真っ先に売りきれるほどの人気ぶりになっています。

 しかも、

「あのデラマンモスパオンの弁当はもうないの?」
「今日も買えなかった……」

 そんな声をあげているお客さんがいるって声があちこちの支店から数多くよせられているんです。

 で

 それを受けまして、
「夕方の弁当販売に合わせて追加でお弁当を作成するか」
 と、僕は昼過ぎの厨房で大きな中華鍋を振るっていきました。

 この時間帯は、コンビニおもてなしの営業時間と重なっていますので魔王ビナスさんに手伝ってもらうわけにはいきませんし、オトの街から助っ人にきてくれているラテスさんとヨーコさんも、オトの街で2人が経営している「ラテスの食堂」の営業がありますので不在なんです。

 そのため、僕1人で作業を行わなければなりません……が

 まぁ、これくらい慣れたものと言いますか……こちらの世界にやってきて以降、魔王ビナスさんが店員として加わるまでの間、僕はずっと1人でこういった調理作業をしていたわけですし……さらに遡れば、この世界にやってくる前、僕が元いた世界でコンビニおもてなしを営業していた頃から、僕は1人でこういった調理作業をこなし続けていたわけですので、まぁ、苦にはなりませんし、それなりの速さで調理出来るだけの技術も備えているわけです、はい。

 ……しかし、あれですね

 あのまま、僕が元いた世界でコンビニおもてなしを経営していたら……他の大手コンビニエンスストアチェーンに押されまくって、コンビニおもてなしは全店閉店し倒産していたことと思います。

 それが、異世界に店ごと転移してきて一生懸命頑張った結果、今では本支店だけで7店舗も展開することが出来ているわけです。

 コンビニおもてなしに集まってくれたみんなの助力のおかげなんですけど……まさかこんなになるなんて、夢にも思っていなかった次第です、はい。

◇◇

 そんなわけで、デラマンモスパオンの弁当を、夕方の便で運んでもらうことにした僕。

 運んでくれるのは、もちろんハニワ馬のヴィヴィランテスです。
「まったく……夕方の定期配送便なんていつ出来たのかしら? そんなの今までたまにしかなかったでしょう?」
 ヴィヴィランテスは、ブツブツ言っているのですが、そう言いながらも僕が準備した各本支店並びに出張所あての弁当などが詰まっている魔法袋を口でくわえては背負っている籠の中へと入れてくれています。

 ヴィヴィランテスってば、口は悪いし、しょっちゅう文句を言っているんですけど……一度として
『行かないわよ』
 と言って、断ったことがないんですよね。

 どんなお願いをしても、
「まったくもう、アタシがいなかったらどうするつもりだったのかしら」
 そんな感じの文句は必ず言いながら、絶対に運搬業務を行ってくれている次第なんですよ。

 しかも、数日前からその行き先にチウヤゲレンデのおもてなしゲレンデ宿が、新たな行き先として加わったのですが、

「まぁた行き先が増えたわけぇ? まったく、何を考えてんのよ」
「ごめんねヴィヴィランテス。迷惑かけて……」
 僕がそう言うと、ヴィヴィランテスは少し首をひねりまして、
「……謝罪なんてしなくていいのよ……むしろまたお店がまた増えてよかったじゃないのさ……おめでとう」
 ボソッとそんな事を言いながら,ヴィヴィランテスは、照れくさそうにそっぽを向いていた次第です。

 なんと言いますか……ホントいいやつなんですよね、ヴィヴィランテスってば。

 最近は、ティーケー海岸でおもてなし商会と出張所を切り盛りしてくれているファニーと同居しながら
「このものぐさ女の性格をたたき直してやるんだから!」
 とか言ってるヴィヴィランテスですけど、そんなヴィヴィランテスをファニーは
「……うん、叩き直してよ……ずっと一緒にいてさ」
 その頬を赤く染めながらそんなことを口にすることが多くなってる次第なんですよ。

 その様子に、ファニーのおばさんにあたるファラさんも気がついたみたいでして、
「まったく……私より先にいい人を見つけるなんてねぇ」
 そう言いながら、苦笑なさっておいででした。

 ファラさんはファラさんで、最近はフク集落のみなしご達と一緒に暮らしながらその面倒をみているんですよね。
 ファラさんはファラさんで、別な意味で充実しているみたいだし、まぁいいんじゃないかな、と思っている次第です、はい。

◇◇

 週末になりました。

 今日は、コンビニおもてなしもお休みです。
 元いた世界では、コンビニ=24時間年中無休営業が当たり前で、コンビニおもてなしもそんな営業を行っていました。

 ……まぁ、最後は人員確保が出来なくなった関係もあって、夜間はお休みしてたんですけどね。

 で、こっちの世界では、コンビニおもてなしは基本的に朝7時開店して、夜6時頃に閉店しています。

 店員が全員木人形で、休憩をあまり必要としないコンビニおもてなし3号店は24時間営業していますし、夜のお仕事をなさっている方々にもご利用頂いているコンビニおもてなし5号店西店は、深夜0時頃まで営業していたりと、若干の例外はありますけど、まぁ、そんな感じで営業しています。

 で

 週に一度の休日は、コンビニおもてなしも基本的にお休みしています。

 僕が元いた世界では考えられない営業スタイルですけど、これでもしっかり利益は出ていますし、僕が元いた世界でも大昔はこんな感じの営業が普通だった時代もあったらしいですしね。

 色々便利になるのはいいことだと思うものの、こうして昔ながらののんびりした営業スタイルも悪くないと思っている今日この頃だったりします。

 そんなわけで……この日を利用しまして僕達は再びチウヤゲレンデへ向かうことにしました。

 パルマ生誕祭ケーキの予約分の作成が忙しかったのですが、ラテスさんとヨーコさんが手伝ってくれたことに加えまして、魔王ビナスさんも手伝ってくださったおかげでここまでの予約分はほぼ出来上がっている次第なんですよ。
 出来上がったケーキは、すべて魔法袋にいれて保存していますので、鮮度も保てていますしね。

 そんなわけで、この休みを利用して再びチウヤゲレンデへ出向くことにしたわけです、はい。

 ここでは、今もイエロ達がデラマンモスパオンを狩りまくっていますので、その陣中見舞いも兼ねています。

 で

 今回はですね、ファラさんとフク集落のピラミをはじめとした子供達も同行しています。

 フク集落の子供達の中で最年長の狐人ピラミは、ファラさんの手伝いとしておもてなし商会ナカンコンベ店で働いているのですが、コンビニおもてなし店内に張り出されていたチウヤゲレンデの宣伝ポスターを見て、
「雪……きれいコン……いつかいってみたいコン……」
 そんなことを呟いたそうなんですが、それを聞きつけたファラさんが僕の元に駆けつけてきてですね、
「店長! 次はいつチウヤゲレンデに行くのかしら? 別に私は行きたいなんてこれっぽっちも思っていないんだけど、ピラミがなんか行きたいみたいだから、私もなんか急に興味を持ったっていうか……」
 そんな事を言ってきたわけなんです。

 これ、ファラさんだけで連れていくと、ピラミが
「私の我が儘で……申し訳ないコン」
 って恐縮しちゃうのが目に見えていますので、それを回避するためのファラさんなりの作戦なわけです、はい。

 ファラさんのこういったところって、どこかヴィヴィランテスと似てる気がしないでもないんですけどね。

 そんなわけで、コンビニおもてなし本店裏には、今日は我が家の子供達に加えて、ファラさんが保護者になっているフク集落の子供達が集合していました。

「……じゃ、行こう」
 そう行って、スアがいつものように転移ドアを召喚してくれました。


 そのドアをくぐって、僕達はチウヤゲレンデへと出向いていきました。

しおり