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大久野島(広島・竹原市)

 
挿絵



畑峠での肝試しを終えた侑斗と吉岡は予約していたビジネスホテルへと向け移動をしていた。車の中で吉岡が侑斗に対し何気なく気になったことを話し始めた。

「饗庭さんぐらいの高学歴で高収入ならばなんでこんな乗っている車がムーヴキャンバスなんですか?もう少し高い車に乗っていても良いんじゃないんですか?ここまであっちこっち各地へ移動していたらホテルの宿泊代だってバカにならないでしょう?ムーブキャンバスでの車中泊をしようとかそういったことって一度も考えたことは無かったんですか?」

吉岡の何気ない質問に侑斗は「俺は車にはこだわりはない。それに前に乗っていたラパンショコラがエンストで動かせられなくなってしまってね。仕方なく今乗っているこのブラウンの中古なんだけどこれしかなかったんだもん。そりゃあ、自慢じゃないけど高級車だって乗れるさ。でも今の生活がいつまでも続く保証はない。堅実的に考えて、今後貧しくなった時のことを考えても意地が出来る範囲内のものにしておかないとただただ見栄を張っているだけに過ぎないからね。それに一回この車で車中泊をしたことがあるんだけど、思いっきり寝違えてね首から下がもうめっちゃくちゃ痛くって痛くって起き上がれなくなってやっぱり高いけどベッドで寝るのが最高だ!という有難さに気付いて車中泊は絶対にしないと決めた。」と答えると、吉岡は「最近車中泊が出来やすいように、色々な車中泊専用のグッズがカーショップなどで売っていますよ。そういったのは見られたんですか?」とさらに突っ込んだ質問をすると、侑斗は「いや、俺はやっぱり高くてもホテル派。ベッドで寝たいもん。そこまで宿泊費用をケチりたくない。」というのだった。

談笑し合っているうちに二人の乗る車がビジネスホテルの駐車場に到着すると、夜の23時過ぎにチェックインの手続きを済ませ、お風呂に入ったりなどをしてそれぞれが明日の大久野島での撮影の準備に取り掛かり始めると、先にお風呂に入っていた吉岡が侑斗に対し「己斐峠より畑峠のほうが、正直やばいような感じがありましたけどね。警官の御霊が出てくるのは予想外でしたし、何よりあの警官の御霊を浄化させた後、峠の出口にまで辿り着くあの道ですら、あれだけ多くの方々のSOSを求める視線を強く感じるなんてのは本当に初めてですよ。道幅が狭くヘアピンカーブが続くあの道じゃ事故が多いというのは頷けるし、道が混雑していなければ間違いなくあの畑峠のほうなんて抜け道の一つにしか過ぎなかった筈だろうから、地元の方達の目に触れる機会もない、だから余計集まりやすい環境が揃っているのかもしれません。侑斗さんは運転されていたから分からなかったのかもしれませんが、僕は本気で嫌な思いをしましたよ。」と語ると、侑斗は「まあ、だろうな。あれだけ道幅も狭く待避所も限られていたら事故も頻繁に起きやすいってことは頷ける場所ではあった。運転しながらでも何名か、崖から誰かがこちらをしたから覗き込んでいるような視線を強く感じることは出来た。己斐峠のほうが有名だから皆そっちに行ってしまうのかもしれないが真の恐怖は畑峠のほうかもしれないね。」と話すと、吉岡が服を着替えドライヤーで髪を乾かしているときに続けて侑斗がお風呂に入ったときには、吉岡が先にベッドに横になって寝てしまっていた。その際に吉岡の枕元にあるものが置かれていた。

お風呂上がりの侑斗が寝間着に着替えた後にドライヤーで髪を乾かした後、隣のベッドで横になって寝ようとした時、そのあるものがポーっという音と共に赤色のランプ照らした状態で言葉を発した。

"苦しかったよ”

侑斗はびっくりした表情で「何!?何が言った!?」と辺りをキョロキョロと見回す中、吉岡の枕元に置かれている白い飾り人形のようなものが赤色のランプを照らしたと同時に苦しかったよと言葉を発していたようだった。初めて見るアイテムに対し侑斗は思わず吉岡を叩き起こすと、吉岡に対して「何なんだよ!この白い飾り人形みたいなやつは!?いきなり喋ってきて驚かさないでくれる!?」と突っ込み始めると、吉岡は寝ぼけた表情で「それ、今巷で話題になっているんですよ。霊界コミュニケーションロボットのばけたんのワラシ。霊体センサーと霊温センサーを備えていて、幽霊を見つけたときには可愛く話しかけてくれるから癒されるんです。饗庭さんもワラシを買ったほうが良いと思いますよ。本当に夜中色んなことに対して発見して喋ってくれるから可愛いんですよ。」というと、再び瞼を閉じて寝てしまった。

吉岡の説明を聞いた侑斗は「霊能力者なのに、霊界とやり取りが出来るコミュニケーションロボットを持っていますって、んなもんなくとも俺は霊能者なんだから、こんな玩具は俺には不要だ!悪いけど俺は吉岡の仲間にならない!」ときっぱりと強い口調で言いながらも、枕元で話しかけてくれた吉岡のワラシをじっと見て侑斗の心の中では「まあ声は可愛かったよな。それにしっかりとちゃんと御霊の気配に対して敏感に御礼状に察知したから実力はあるな。ああ言ってしまったけど気になるし購入してみようかな。」とこんな小道具を使いやがってと思う気持ちを持ちつつも、霊能者としてどれだけ機械の効果を発揮しているのかどうかがやはり気になるというジレンマを抱えつつも、侑斗は「悩んでいたらどうしょうもない。明日がある。」とワラシに対する思いを抱えつつも夜の25時過ぎに就寝することにした。

2026年4月5日 日曜日 AM9時

目覚まし時計のアラームで目を覚ました二人は、すぐに身支度を済ませた朝食を食べ終えたと同時に10時過ぎにホテルをチェックアウトをした。

車の中で侑斗が吉岡に「今から高速を使うから、車は忠海港の無料駐車場に停めた後そこからフェリーに乗って大久野島へと向かう。島内での移動は予めレンタルの自転車を予約しておいたからそれに乗って約2時間の与えられた時間内で心霊検証を行う予定にしようかなと思っている。なので忠海港へは11時過ぎに到着する予定で更にそこからフェリーに乗ってだから、大体12時過ぎには大久野島に到着できる。なのであんまり気になった箇所だからと言ってそこで長居をしてしまうと今度はレンタルサイクルの返却期限が迫って来てしまうので、今迄の心霊検証とは違ってさっと切り上げていかなければいけない。なので今回のメインとしては毒ガスの貯蔵庫から、発電所の跡地、砲台のあった場所とかかな。あと自転車に乗りながらのカメラ撮影は出来ないので、気になった箇所の一つ一つに足を運んだ時にショートフィルムで撮影は行うつもり。吉岡はどう?」と質問をすると、吉岡はうーんと考えた末に「2時間もあればまあ十分なほうじゃないんですかね。それに現存する建物があるとしても、土壌汚染の指定地域になるだとか、或いは建物の崩壊の危険性があるとかで、入れるところが限られていますからね。あっという間に終わると思いますよ。それに調べた限りではホテルに宿泊して寝ていたところを金縛りにあったなどの霊障による報告が寄せられているほかは、ウサギの島として知られているのでそれの情報しかありませんね。饗庭さんも島に上陸するまでに何か買われるんですか?ウサギ用にですよ。」と訊ねると、侑斗は「車の後ろに積んである。一応ラビットフードな。それを持って島に上陸しよう。野生のウサギなんて初めてだから、一般のペットショップで販売されているウサギと違うのは人慣れしていない、だから上陸する際の注意書きにもあったんだけどカラスの餌になるようなものは島内に残さないことと、あと補助犬以外の犬や猫は連れ込まないでくださいとかだったな。カラスも、犬や猫も、ウサギにとっては天敵らしい。」と話すと、吉岡は「意外と調べられているんですね。それにラビットフードって、もう最初から事前に用意するってやっぱり心霊よりもウサギのほうが興味があるってことですよね?」と笑いながら聞かれた侑斗は「ああ。そうだよ。勿論霊視検証は行うけど、同時にウサギを見て癒されるなんてのはなかなかないからね。だから可能な限りウサギに近づいて写真撮りたいなあって思ってる。」と答えると、吉岡は「案外そういうのがお好きだったんですね。初耳でした。」といって反応を示すと、二人の乗る車が忠海港の駐車場に到着し、フェリーに乗るための切符売り場で乗船切符を購入後、フェリーに乗り目的地の大久野島に到着した。

到着と同時にレンタルサイクルが置いてある島の施設へと足を運ぶと、早速自転車に乗って最初の検証地の発電所跡を目指して向かうことにした。

ゆったりと、旧桟橋付近を自転車に乗りながら移動していると道端でのんびりとしている野ウサギを眺めながら吉岡が「本当に至る所に野ウサギがいますね。可愛いですね。」と侑斗に対して話しかけると、侑斗は「怖いというよりも可愛い。今のところ霊視を行ったとしても、微弱ながらかつての毒ガスの製造に携わり命を落とされただろう方の御霊の存在をキャッチすることが出来た。ところで、ここで一体どれだけ多くの方が亡くなりになられているのかって、吉岡リサーチしてきた?」と質問すると、吉岡が自転車をいったん止めて、鞄の中から調べてきたノートを取り出すと解説し始めた。

「実際に毒ガスの製造工場に勤務された方でどれだけの方が命を落とされたかについては正確な記録が残されていないんです。島の歴史を調べてみた限りでは、第一次世界大戦時の際に、大久野島が地理的な条件や秘匿の容易さなどから化学兵器の生産拠点に選んだそうです。化学兵器は1925年のジュネーブ議定書において戦争での使用は禁止されていたが、開発保有は合法だったらしいです。陸軍造兵廠火工廠忠海兵器製造所として開所、後の東京第二陸軍造兵廠忠海兵器製造所となり、生産施設としては島内北西部の長浦工場地帯と三軒屋工場地帯の2か所のほかは、発電所、材料・製品倉庫等の関連施設があったようです。毒ガス工場の存在は機密性から秘匿されており、陸軍から発行した一般の方向けの地図においても大久野島一帯が空白地域として扱われたことにより、地図から消された島と呼ばれるようになったそうです。大久野島で生産されていた毒ガスの総量は分かっている限りでは6,616トンで、主に生産されていた毒ガスは4種類ありますね。イペリットガスとルイサイトガスがびらん剤の一つで(皮膚・気道、眼球等を爛れさせる効果を持つ)、その他がクシャミガス(呼吸困難)、催涙ガスですね。終戦後に島内に残っているイペリットガス1,451トン、ルイサイトガス824トン、クシャミガス958トン、催涙ガス7トンを周辺の海域への海洋投棄や火炎放射器による焼却、島内での地中処分といった方法で行われ、除毒措置も施されたようですけど、ただそれだけでは毒ガスの処分が十分ではなかったようで未だなお島内地下4~5メートルの土壌で高濃度のヒ素が検出されるなどの負の遺産を引き継いでいるのは事実で、大久野島で働いていた職員の方々にも健康被害があったようです。1950年に元従業者から咽頭がんが初めて確認され、また激しい咳や膿性のタンや原因不明の頭痛に悩まされる方が相次いだそうです。毒ガス後遺症の特性としても知られている肺炎や慢性気管支炎、呼吸器系の癌を発症し数多くの職員の方々がお亡くなりになられたそうです。毒ガス関係者の癌発生頻度は全国平均の15倍とも報告されていますので、当時大久野島で働いていた大よそ6600人の内、入退院をされたのが約4200人にも上るとも言われています。そのために、現在は二度とこのような過ちを犯さない目的で大久野島毒ガス資料館というのが開館されたそうですよ。ちらっと触れたことにもなりますが、今もなお危険な土壌汚染地域や建物の倒壊の危険性がある場所もあるので、立入が出来ない場所も存在しています。まあこんな戦争の悲惨さを伝える遺構の一つですから、言われている心霊現象としては、毒ガス製造時の職員達が毒ガスの犠牲となり苦しみながら数多くの方がお亡くなりになられた背景もあるので”大苦の島”とも呼ばれた過去があったそうです。そのためにお亡くなりになれたであろう方の霊の目撃談や、はっきりと写真に写り込む心霊写真の報告が寄せられていますね。廃墟辺りを写真撮影すると霊が写るとか、そういう情報のほかには毒ガスの関連施設を撮ろうとした際にシャッターが切れなくなるとか、調べてみたら色々と出てきましたね。」

吉岡の報告を、侑斗もいったん自転車を止めてまたがった状態で聞いているうちに気になったのか吉岡に「昨日吉岡の枕元に置いてあった、勝手に喋ったあの白い飾り物はどうなの?」と切り出すと、吉岡は「自転車の籠に乗せてしまうと落ちてしまう可能性があるので、鞄の中からわらしが自動で検知しやすいようにしましょうか。」といって鞄からわらしを取り出したと同時に、わらしが”ポーン”という音と共に赤い点滅で言葉を話した。

”お墓は近くにあるの?”

その言葉を聞いた侑斗は「発電所跡って地図で見るとあと少しの距離だったな?」と確認のために聞くと、吉岡は「あ、はいそうですね。慰霊碑も大久野神社の敷地内にありますので、僕達がいるところからは距離がありますからね。わらしの発したお墓何でしょうね?」と苦笑いをしながら答えると、侑斗は苦笑いをしながら「その何?ロボットって言ってたっけ?お墓の概念間違えてるじゃん。一体何を基準に近くにお墓があるのかと聞いて居るのか、教えてくれ。霊能者の俺らにはわからん。」と語ると、吉岡は「ロボットで話すパターンも何万通りもありますから、その場その場で考えたことをパターン通りの内容を話しているだけに過ぎませんからね。赤い点滅が出るってことは間違いなく御霊の存在を確認できたという事です。」と釈明すると、侑斗は「本当に大丈夫なのか?でもまあ確かに気配は感じ取れたし、わらしがどれだけのポテンシャルを持っているのかの確認のためにも暫くは鞄から落とさぬように、またわらしが検知しやすい環境の状態で検証しようか。」と提案すると、吉岡は「そうですね。正確に判断するのは間違いないと思いますので暫くの間わらしの自動検知モードなどを頼りに調べましょうか。」と理解を示し、二人は発電所の跡地に入ることが出来るトンネルを抜け、やっと発電所の跡地と書かれた案内板のところへと辿り着くと早速吉岡がわらしを持った状態でリポーターとなり、侑斗がカメラを持って発電所跡地の撮影を行うことにした。

カメラを前に吉岡は「ニコニコ動画並びにYouTubeの慰霊の旅路をご覧の皆さん、お憑かれ様です。今回はカメラマンを務める饗庭さんに代わって、今巷で流行りのばけたんWARASHIを使ってですね、大久野島での心霊検証を行いたいと思いますので宜しくお願いします。今回は自転車を用いての異動ってことになるので自転車の走行中はさすがに撮影は出来ませんけども、党内に残された遺構などをメインに今回は心霊検証を行いたいと思いますので、内容的にショート動画にはなってしまうのですが、見ごたえのある映像が撮れたらいいなとは思っていますので紹介する動画の全てを見て頂けたら嬉しいです。宜しくお願い致します。」と一言挨拶をしてから発電所跡地の建物をバックに、大久野島に纏わる怪談話をし始めた。

「大久野島は地図から消された島としても知られ、第二次世界大戦の最中では毒ガスの製造拠点として使われた島です。今のところ分かっている情報としては、1967年までに毒ガスの製造事業に携わった300名程の方がお亡くなりになられたそうです。そのため、噂では廃墟を写真撮影をすると霊が写るとも言われています。そこで今回僕達、今背後にある発電所跡から、北部砲台跡、長浦毒ガス貯蔵庫跡、毒ガス工場トイレ跡、大久野島毒ガス貯蔵庫跡、三軒家毒ガス貯蔵庫跡、南部照明所跡、検査工室跡、大久野島研究所跡、自動交換機室跡、幹部用防空壕跡、大久野島毒ガス障害死没者慰霊碑、大久野神社、医務室跡、夕日の丘、最後に大久野島灯台と行って大久野島での心霊検証を終えたいと思います。一応、医務室跡ですが跡地という案内図だけで建物自体は残っていませんが、そこでわらしが反応するか、霊能者である僕達が御霊の存在を捉えることが出来るかも含め今回の心霊検証の候補地として選びました。内容としては非常に短めの内容にはなってしまいますが、是非僕達が撮影したすべての動画の心霊検証の結果を見てほしいです。」

吉岡が懇願するように挨拶をし終えたところで最初の発電所跡・ポンプ室跡の心霊検証をスタートした。

「柵を乗り越えなくとも、現存する発電所の跡地に御霊の有無を確認することはできますので、ウサギに気を付けながら霊視検証を始めます。うわ~。早速ウサギの集団に餌を求められたので、饗庭さんラビットフードの袋を頂けませんか?」

吉岡が侑斗にそう頼み込むと、侑斗からラビットフードの袋を預かると、吉岡は「有難うございます!」というと早速集まりだしたウサギの集団に餌付けを行い始めた。

吉岡が「よっぽどお腹が空いていたのかな。こんなにも沢山のウサギに囲まれるなんて正直思ってもいなかった。」と独り言をつぶやいたその時に、誰もいない廃墟の2階の窓から誰かに覗き込まれるような視線を強く感じ、吉岡のみならず侑斗もその視線を強く感じ、感じた方向へと目を向けるとそこに作業着姿の若い男性だろうか、何をしているのだろうかという感じで見つめられているのを見て、吉岡は「噂の作業員の御霊かもしれませんね。写真を念のために撮りましょう。」と言ってデジタル一眼レフカメラを取り出し写真を撮影しようとしたがシャッターが急に押せなくなった。

吉岡が「あれ?おかしい。どうして動かせられない?」と四苦八苦している中、侑斗が吉岡に「どうした?何かあったのか?」と駆け寄って説明をしていると今度は侑斗が持っているカメラも撮影した当初はバッテリーが満タンだったはずなのに急激にバッテリーが減ってしまって、バッテリー切れを起こしてしまった。

侑斗が「どうして?さっきまでバッテリーは満タンだったのに、そっちだってさっきのウサギの餌付けの写真は撮れたのにあの視線を感じた方向の写真が撮れなくなるのはおかしい。」と話しているうちに、吉岡が「諦めずにもう一度写真が撮れるまで粘り続けます。」と言ってもう一度写真を撮ろうとしたが、やはりシャッターは切れずに撮影をすることは出来なかった。

侑斗が「撮れないなら仕方ない。試しに海水タンク跡へと行こうか。」と切り出し、二人は発電所跡とポンプ室跡をとりあえず霊視検証をするだけにしておき、付近にある海水タンク跡でカメラの機能が戻っているか確認のために訪れてみるも事態は何も変わっていなかった。

吉岡が「廃墟じゃないのに、どうしてですか。饗庭さんの持っているカメラだって替えのバッテリーがあれば撮影できるんじゃないんですか?」と質問すると侑斗は「替えのバッテリーなんてない。充電は満タンにしていたのにじっと見つめられたときにバッテリーがあっという間に減ってしまった。電気系統のアイテムに異常が生じるということは、わらしもどうなっている?」と訊ねると吉岡は「あっ、そうですね。わらしは単四電池ですから。」と言って鞄からわらしを取り出し手動検知モードでボタンを押して検知し始めると、赤い点滅で”この辺お化けが出るんでしょ!?”と言われるのだった。わらしだけは健在と見た侑斗は吉岡に「撮影はどうしようもない。シャッターも切れない。俺のカメラもバッテリー切れ、わらしを頼りに探索するしかないな。何かあれば携帯のカメラを使おう。」と打診して吉岡も理解を示したところで、
わらしを片手に大久野島山頂展望台から北部砲台跡、長浦毒ガス貯蔵庫跡、毒ガス工場トイレ跡、大久野島毒ガス貯蔵庫跡、日本庭園跡、三軒家毒ガス貯蔵庫跡、南部照明所跡、検査工室跡、大久野島研究所跡、自動交換機室跡と見た後に幹部用防空壕跡と足を運んだ時にわらしの自動検知モードが反応を示した。

ポーンという音と同時に赤い点滅で”この辺お化けがいるよ”と言うと、侑斗が「幹部のお化けがいるっていうのか。まあいい。」と切り出すと、侑斗と吉岡が確認のため霊視検証を実施した。

吉岡が侑斗に「何名かいらっしゃいますね。あの奥の部屋のほうからちらっと見る視線を感じることが出来ますね。実戦で使われたことがないとしても、考えられるとしたら毒ガスの製造工場で危険作業に従事した作業員の方が緊急事態を伝えるために責任者がいるであろうこの地に足を運んだ時に力尽きてという可能性もありえるかもしれませんね。」と見立てを立てると、侑斗は「恐らくそうだろうな。戦時中なら幹部がこの地に逃げ込んで作業をしてもおかしくなかっただろう。作業時に何かしらのトラブルが発生したときに駆けつけるのは恐らくここしかなかった筈。辿り着くまでに力尽きて死後”お国のために”という認識ではありつつも危険作業だという認識がないためにこの仕事に従事したことに命を落としてから改めて己の亡骸を宙に浮いた状態で見たときに我に返り怒りを感じている御霊がいるのだろう。それがカメラに異常をきたした要因だろう。カメラを向けられたことに対し憤慨させたのかもしれない。」と話し、吉岡も「そうかもしれませんね。これ以上御霊の怒りを買ってはまずいですから、大久野島毒ガス障害死没者慰霊碑と大久野神社へと向かいましょう。」と話し二人はその場を後にすると、次に向かった大久野島毒ガス障害死没者慰霊碑を前に二人が両手を合わせ深々と頭を下げ追悼の意をささげた後、今にも崩壊しかねない大久野神社の現状を見た吉岡は「聖域なはずなのに、崩壊しかねない祠をあのまんま放ったらかしにしておくのはどうか。」と言い出すと、侑斗は「豪雨による被害の影響もあったから、修復工事をしなければいけないのは何もあの大久野神社だけじゃない。莫大な費用が掛かってくる。」といって答えると、続けて医務室跡、夕日の丘、大久野島灯台と見終えた後、時間に余裕が出来たので大久野島海水浴場から眺める海岸沿いをじっと見つめているうちに再びわらしの自動検知モードでポーンという音と共に青い点滅になると”エンジェルがいっぱいいるよ!”と言うのだった。

それを見た侑斗は吉岡に「青い点滅になったけど、今迄赤い点滅しか見てこなかったけど、青ってどういうこと?」と質問すると、吉岡は「わらし的ジャッジとしては赤はお化けで青は神様をキャッチしたってことですかね。恐らくですが、禍を齎さない良い霊を見たってことですよ。」と言って釈明すると、侑斗は笑いながら「俺達の周りにいるのがエンジェルかどうかわからないけど、亡くなられた方々の無念がいつか晴れてほしい。今の俺達が出来るのは、手を合わせ供養の気持ちを捧げること。」といって立ち上がると水平線をまっすぐに見て再び両手を合わせ「南無阿弥陀仏。」と呟き始めると、吉岡も続けて立ち上がり同様に水平線をじっと見つめ両手を合わせた後に「南無阿弥陀仏。」と唱えた。

そして2時間のレンタルサイクルを返してから、大久野島毒ガス資料館へと足を運び歴史を改めて学習した後、陶磁器製毒ガス製造器具展示場へと向かい、改めて戦争の悲惨さと平和である世の中の有難さを実感させられたところでカフェで遅い時間の昼食を食べ終えた後にうさぎ耳集音器へと行って聞こえる音を楽しんだところで侑斗が「カメラは散々な結果になってしまったけど、でもここには写真や映像には映してはいけない、従事された方々の悲痛な訴えや叫びが今もなおあるからこそ、俺達の守護霊が危険だと伝えるためにもカメラを通して異常だということを教えてくれたのかもしれない。それが分かれば、亡くなられた方々の心の傷が癒えることを祈り願い続けるしかない。心霊検証は出来なかったけどでも佐賀に今日中に戻るためには今の時間があと少しで18時になりそうだからそろそろフェリーに乗るか。」と話すと、吉岡も「そうですね。もうそろそろお家に帰りますか。」と行って、二人は大久野島第ニ桟橋から出る忠海港行きのフェリーに乗って、大久野島を後にすることにした。

そして明くる日 2026年4月6日 月曜日の事だった。

仕事終わりに侑斗が慰霊の旅路で大久野島での体験談のリポート記事を書き終えて投稿したと同時に、明るい肝試しのメンバーの甲州と斧落からメールフォームで問い合わせが入ってきた。

「饗庭さん、侑斗さん、御無沙汰しています。北海道での明るい時間帯での肝試しでは本当にお世話になりました。甲州と斧落で行っている明るい肝試し 女子部の心霊ロケで次回四国で実施しようと思っています。今のところ予定としてはゴールデンウィークの期間中に心霊ライブ配信を行う予定で段取りを組んでいるのですが、御都合はいかがでしょうか。もし予定の都合が合えば、女子部とコラボをしませんか。一緒に帯同してもらえたら嬉しいです。宜しくお願いします。」

問い合わせの内容を見た侑斗は「休みが取れるかどうかなんだよなあ。」と呟きながらも、うーんと両腕を組んで考え始めるのだった。

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