チウヤゲレンデの後始末と、コンビニおもてなしの新商品
コンビニおもてなし本店があります辺境都市ガタコンベ。
そこからかなり北方にあります、チウヤという雪山地帯にある宿の中に、コンビニおもてなしの出張所を開店することになりました。この宿も、コンビニおもてなしの傘下企業として加わってもらうことになっています。
その宿の営業は、もともとその宿を経営されていたクマタンゴさん一家にお任せすることにしているのですが……問題が、出張所の方です。
いえね、この出張所なのですが……この宿の食堂も一緒に営業しないといけないんですよ。
元々この宿を経営していたクマタンゴさんによりますと、
「以前、この宿を経営していたときは、息子の嫁さんが、バイトの人と一緒に対応してくれていたクマけど、今は辺境都市でいい仕事につけているクマで、すぐには戻ってこれないクマ」
とのことでしたので、宿を傘下企業に迎え入れることになったコンビニおもてなしの方でどうにかしないといけなかったわけです。
で、
そのことで悩んでいたところ、
「……あの、店長さん、その役目、私に任せてほしいキ」
そう言って手をあげてくれたのは、猿人のチョキナでした。
チョキナは、元々コンビニおもてなし本店で調理作業を手伝ってくれていた店員でして、今は、辺境都市ブラコンベにありますおもてなし食堂エンテン亭で調理人として働いているんです。
猿人四人組と称していましたように、以前は四人一組で、食堂を切り盛りしているテンテンコウ♂の手伝いをしていたみんななのですが、
今は、その1人グー子が、オザリーナ村にある温泉宿で、調理人として頑張っています。
以前は四人一組でないと実力を発揮出来なかった四人ですけど、エンテン亭で働きながら腕を磨いていった結果、グー子は温泉宿でその料理の腕を遺憾なく発揮している次第です。
チョキナも、それに感化されたみたいなんですよね。
で、僕はそんなチョキナのやる気を買いまして、
「じゃあ、よろしく頼むね」
そうお願いしました。
これを受けまして、チョキナも、
「ありがとうございますキ、私、すっごく頑張りますキ」
気合い満々の様子でそう言ってくれました。
食堂スペースをチョキナが担当してしまうと、売店コーナーの対応をする人がいなくなってしまいます。
そのため、チョキナと一緒にチュ木人形も派遣させてもらうことにしています。
本来は、スアが社長を務めています、コンビニおもてなしの傘下企業のおもてなし人材派遣会社から有償で派遣するチュ木人形なのですが、今回はコンビニおもてなしのお店の手伝いですからね。料金は経費と相殺ということにしてもらっている次第です。
そのチュ木人形ですが、クマタンゴさん一家が対応している宿屋の方の手伝いとして2体派遣しています。
この2体も、傘下企業への派遣ですので、経費と相殺ということにしています。
クマタンゴさんの長女のクマンコさんとその一家の引っ越しが済むまでの間を、このチュ木人形でしのぐわけです。
ちなみに、このチウヤの宿ですが、装いも新たに
『おもてなしゲレンデ宿』
と、名前を改名して営業を再開した次第です。
この再開にあわせて、定期魔道船をこのおもてなしゲレンデ宿まで就航させることにしました。
運行スケジュールをあれこれ調整しまして、朝一の便と夕方の最終便の、1日2便だけですが、このおもてなしゲレンデ宿まで周回してもらうことにした次第です。
結構遠方なのですが、そこはさすが定期魔道船ですね。
途中を定期魔道船のフルパワーで疾走すれば、30分くらいで到着出来ちゃうんです。
定期魔道船を接岸させるために、おもてなしゲレンデ宿の屋上に魔導船乗降タワーも設置しています。
スアの魔法で短時間に作成してもらったのは言うまでもありません。
定期魔道船の就航に合わせて、
「冬の遊びはチウヤゲレンデへ! 温泉もあるよ!」
といった宣伝ポスターを作成して、コンビニおもてなしの本支店及び出張所と、各都市の商店街組合にもそのポスターを貼ってもらいました。
ポスターは、宿の前で、笑顔で右手をあげているクマタンゴさんとクリッタちゃんと、そんな2人の間で笑顔で尻尾を振りながらお座りしているモモノ、と、そんな感じの写真をベースにして作成した次第です。
で、
このポスターの影響で、チウヤへ遊びに行く人が少しずつですが増えているみたいです。
あのデラマンモスパオンのせいで、一度は完全に客足が途絶したチウヤゲレンデですけど、これで少しづつでも客足が戻って行ってくれたらな、と、思ってる次第です。
◇◇
そんな中……
コンビニおもてなしでは新メニューが追加されました。
人気の弁当コーナーに投入されたのは、
『デラマンモスパオン弁当』です。
あの、チウヤゲレンデを荒らし回っていたデラマンモスパオンですが、そのお肉はすごく美味しいんです。
先日実際に料理して食べた僕が言うんですから間違いありません。
このお弁当は、かなり厚めにカットしたお肉を焼き、それにご飯を添えているというシンプルな弁当です。
ですが
このデラマンモスパオンのお肉の味を十二分に引き出すために
・お肉は分厚く切って焼く
・味付けはシンプルにして、肉汁の旨みを感じてもらう
とまぁ、こんなことをコンセプトにしている次第です。
実際、このデラマンモスパオンのお肉は本当に美味しいですからね。
下手に小細工するよりも、ドン!と、お肉そのもので勝負しようと思った次第です。
このデラマンモスパオン弁当は、販売を開始してまだ数日しか経っていないにもかかわらず、取り扱っている本支店並びに出張所のすべての店舗で売り切れが続出していまして、急遽増量を検討している次第です。
ただ、このデラマンモスパオンのお肉ですが……正直なところこれからも定期的に仕入れる事が出来るかどうかが未知数です。
そのため、このデラマンモスパオン弁当は「パルマ生誕祭までの間の期間限定販売」にさせてもらっている次第です。
純粋に、再度仕入れる事が困難なデラマンモスパオンのお肉を温存するための措置だったのですが、そのせいで
「今しか食べられないらしいぞ」
「次回はいつ販売再開出来るかわかってないそうだ」
そんな噂話があちこちで聞かれるようになっている次第です。
とりあえず、デラマンモスパオンのお肉の在庫がある間は、販売を継続して行こうと思っています。
◇◇
そんな思わぬ新製品が開発出来て、しかもそれが早速大人気になっていることで、僕も安堵しきりでした。
とはいえ、これで全てが終わったわけではありません。
「……あとは4号店の新店員募集の告知をださないといけないし、デラマンモスパオンのお肉を今後も仕入れる事が出来ないかどうか、スアに調査してもらったり……」
そんな感じで、まだまだあれこれ目白押し状態のコンビニおもてなしです。
まぁでも、そんなことだけ言い続けていても仕方ありません。
僕は、新しく作成したコンビニおもてなし4号店のバイト・正社員の求人チラシを手に、各地の辺境都市をまわっていきました。
一応「4号店の」、とうたってはいますが、実際には本支店で勤務できる新店員の募集も兼ねている今回のこの求人です。
「さてさて、いい人が来てくれるといいんだけど……」
僕は、手元に残っていた最後の求人チラシに向かって頭を下げていきました。
さて、これで今できることはすべてやったわけですし……あとはコンビニおもてなしの営業をいつもの通り頑張らないと、ですね。