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雪山で雪遊び その1

 僕とスア、それにパラナミオら子供達はコンビニおもてなし本店があります辺境都市ガタコンベで暮らしています。

 ここは、この世界の中心にあります王都からずいぶん東にいったところにあるド田舎です。
 それでも、その近隣にあります辺境都市ブラコンベが、ド田舎にある辺境都市にしては規模が大きいものですから、その影響もあってそれなりに多くの人々が住んでいます。

 この世界にも一応四季はありまして、今は冬のガタコンベも少し肌寒く感じることが多くなっています。

 もっとも、このあたりはこれ以上寒くなることはないそうなんです。
 比較的南に位置しているというのがその一番の理由みたいですね。
 雪も、ほとんど降ったことがないそうです。

 ただ、少し北にあります、辺境都市ルシクコンベがある煙突山……あ、これは僕が勝手に言い始めただけなんですけど、その山を中心にして東西に山脈が延びているのですが、その山脈を越えると一気に寒さが厳しくなりまして、そっから北は毎年結構な量の雪がふるそうなんですよ。

 そんな中、そんな山脈を越えてやってきたらしいお客さんがですね
「あの山脈の向こうはもう雪が降ってるよ。山はもうまっ白だね」
 そう教えてくれたんです。

 で

 それをですね、学校の冬休みを利用して、コンビニおもてなし本店の手伝いをしてくれているパラナミオが聞いていたようなのですが、
「雪ですか……いつか見てみたいです」
 そう言いながら、笑っていました。
「パラナミオは雪が好きなのかい?」
「はい! 魔法使い戦隊キュアキュア5のみんなが雪玉で悪者を倒していたんです!」
 僕の言葉に、パラナミオは満面の笑みでそう答えてくれました。

 そういえば、キュアキュア5の絵本の最新刊が先日届いていましたので、それを読んだパラナミオが早速影響されたといった感じなんでしょうね。

 僕もしばらく雪は見ていないですね。
 僕が元いた世界ですが……僕が住んでいたあたりはあまり雪が降るような土地ではなかったんです。

 それでも何度かはつもったことがありますけど、その頃の僕は傾きまくったコンビニおもてなしの経営をなんとか立て直そうと文字通り朝早くから夜遅くまで仕事をしまくっていたもんですから、店のすぐ前で雪がふっていても、正直それどころじゃなかったっていうのが本当のところです。

 ですが……動機はともかくとして、せっかくこうしてパラナミオが雪に興味をもっているわけですし……なんとかその夢を叶えてあげたいなと思ったりしたのですが……

 それをスアに相談したところ。
「……転移魔法か、魔法の絨毯で行けるわ」
 そう言ってくれました。

 で

 その日の夕飯の時に、
「……どうかな? みんなで次のお休みの日に北の雪山に遊びにいってみようか?」
 そう言ってみました。
 
 すると

「はいはいはい! パラナミオ行きたいです!」
 まず、真っ先にパラナミオが右手をあげました。
 次いで
「リョータも行きたいです!」
「アルトもでございますわ」
「ムツキもにゃしいぃ!」
「リョータ様がいくなら、アルカも行くアル」
 と、他の子供達もそう言って同意してくれました。

 そんなわけで……
 僕達はこの週末のお休みの日を利用して、スアの力を借りて北へ雪遊びに行くことにしました。

 で、それが決定するなり、パラナミオを中心にした子供達は
「雪玉遊びしましょうね!」
「キュアキュア5みたいに、悪者を退治したいですわ」
「にゃは、あれは物語りだよ……でも、確かにそれが出来たら楽しいにゃし」
 そんな会話を、楽しそうにしていた次第です。

 そうなんですよ……

 我が家の子供達は全員、魔法使い戦隊キュアキュア5の大ファンなんですよ。
 そのため、こんな感じでキュアキュア5の話題で盛り上がることが少なくないんです。

 ちなみに……

 この魔法使い戦隊キュアキュア5のファンはですね、我が家の子供達だけではなく、辺境都市の子供達の間でも大人気なんです。
 その人気のおかげで、コンビニおもてなし3号店の2階にあります体感型屋内遊戯施設キュアキュア5ランドは連日多くのお客さんで賑わっているんですよね。

 それを受けまして……

 コンビニおもてなしの各本支店ならびに出張所では、このキュアキュア5の絵本を常に常備しているんです。

 先日新刊が出たばかりですので、その売り上げはかなりのものになっていたんです。

 こんなにたくさんの絵本を仕入れることが出来ているのもですね、キュアキュア5の絵本を発売しているのが魔女魔法出版だからというのがとても大きく影響しているんです。

 この魔女魔法出版の書籍はパルマ国土全体で大人気ですので、もっと王都近辺にある辺境都市に優先的に配布されていたのですが……

 最近は、僕達コンビニおもてなしへ回してもらえる魔女魔法出版の量がすっごく増えていまして、それを求めて多くのお客さんや魔法使いの方々が各地のコンビニおもてなし本支店ならびに出張所に殺到なさっている次第なんです。

 まぁ、それもこれも魔女魔法出版の社長がスアのお母さんことリテールさんだからこそ、というのもあるわけです。
 昔色々あって親子げんかした後に家を出たスアは、その後独学で魔法を極めて、いまでは王都の魔法局が認定する唯一無二の伝説級の魔法使いにまでなっているわけですが、こうして魔女魔法出版の本を僕が経営しているコンビニおもてなし本支店ならびに出張所に優先的に回してくれているのを受けて
「……旦那様の役になってくれてるし」
 と、最近ではスアが親子げんかした相手のリテールさんへの態度を軟化させてくれている次第なんですよ。

◇◇

 そして迎えた北へ向かう今日……

 雪遊びに向かう僕達のグループの中にはリテールさんの姿もありました。

「ステルちゃん、なつかしいわねぇ、こうして一緒に雪遊びなんて。ママ、とってもはりきっちゃうわ」
 そう言いながら腕を回しているリテールさん。

 いえね

 最初は呼んでなかったんです。 
 ですが、スアの元に新しい本の原稿を取りに来た、魔女魔法出版のスアの担当ダンダリンダさんがですね
「ステル様のお子様達がはしゃいでおいででした……なんでも次の休みに雪遊びに行くとかで」

 と、そのことをリテールさんに報告し、それを受けたリテールさんが

「私もステルちゃんと、子供達と一緒に雪合戦したいわぁ」
 
 そう言い出した結果……気がついたら僕達のグループにしれっと混じっていた次第なんですよ。

 で

「……呼んでないし」
 と、当初憤っていたスアなのですが、子供達がですね

「おばあちゃん! いつも絵本をありがとうございます」
 そう言いながらリテールさんに抱きついていったパラナミオを筆頭に、リョータ達我が家の子供達が笑顔でリテールさんさんを囲んでいたわけです。

 その様子を見たスアも
「……むぅ……子供達を味方につけるなんて」
 そう言いながら頬を膨らませていたのですが、
「まぁまぁ、せっかく遊びにいくんだし、1人でも多い方が楽しいじゃないか」
 僕が笑顔で間を取り持ったおかげで、ようやく参加者全員は笑顔になれた次第です。

 さぁ、では早速雪山にむかって出発しないといけませんね。

 ちなみに、この日のために僕も、魔法使い戦隊キュアキュア5の最新刊を熟読していますので、パラナミオ達の話題にもしっかりついていけるはずです。

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