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スア製太陽光発電パネル再び その1

 コンビニおもてなしで販売している医療医薬品の大半はスア製です。

 疲労回復薬や、怪我の治療薬に始まり、数日間寝なくても大丈夫な薬や、死者蘇生の薬なんかもあったりします。

 ただし、効果がすごい薬になればなるほど使用後の副作用や、使用時の注意事項が深刻というか難しくなっていたりします。

 たとえば、数日間寝なくても大丈夫な薬は効果が切れると猛烈な疲労感に襲われてしまいますし、死者蘇生の薬は死後何日以内に使用しないと駄目とかいった制約があったりします。

 僕の世界で例えれば、薬剤師さんの指導を受けてからでないと販売出来ない薬とでもいいますか……

 で、コンビニおもてなしでもその薬剤師さん制度を採用していまして、効果・効能が強力な薬に関してはおもてなし薬局のテリブルアの指導を受けてからでないと購入出来ない決まりにしているんです。
 いくら説明書でしっかり注意喚起していても、読まずに使用しちゃう人ってどうしてもいますからね。

 ……って、偉そうに言っていますが、その使用上の注意をよく読まずに使用してぶっ倒れた張本人がこんなことを言っていても説得力がいまいちなんですけど……

 と、まぁ、そんなわけで、スアの作った薬がコンビニおもてなしに並んでいるわけです。
 そしてそれがどの店でも飛ぶように売れているわけです、はい。

 ちなみに、スアは、そういった魔法薬だけではなく、

 魔石コンロや魔石冷蔵庫、魔法灯といった魔法道具
 魔石コンロや魔法灯に使用する火属性魔石や、魔石冷蔵庫に使用する冷属性魔石などの魔石
 速度向上や力上昇などの付加魔法を付与されているネックレスや指輪

 そういった、いわゆる魔法雑貨全般も製造してくれています。
 この商品はコンビニおもてなしでも大人気商品になっていまして、毎日どの店でもほぼ完売しています。
 売れ残っているのは、たいがい高額商品だけっていう感じですね。
 
 で

 スアはコンビニおもてなしの営業時間中はいつも本店の裏にあります、僕達の巨木の家の三階、スアの研究室に籠もって魔法薬や魔法雑貨を製造し続けているのですが……まぁ、半日もあればコンビニおもてなしで販売する2,3日分の在庫を製造してしまうそうなんです。

 で、残りの時間はもっぱら研究にあてているそうなんです。

 スアは、すでにこの世界最高の魔法使いと言われているのですが、今でも立ち止まることなくあれこれ研究を続けているんです。

 で

 その研究の中で、以前大発明だけど大失敗だった物があったんです。

 それが、スア製太陽光発電パネルでした。
 
 これは、コンビニおもてなし本店の屋根の上に設置されています太陽光発電パネルを参考にしてスアが研究に研究を重ねて開発した製品でした。

 「今、屋根の上に設置している太陽光発電パネルが壊れたり、寿命が来たらコンビニおもてなしで使用しいている電気製品は全部使用出来なくなるんだよなぁ」
 って、僕が何気なく呟いたのを聞いたスアが
「……まかせて!」
 そう言って、調査・研究・開発に取り組んでくれたんですよ。

 で、製品は無事完成したのですが……これがなぜ大失敗だったかと言いますと……パネル1枚から生み出される電力量があまりにも膨大過ぎたんです。
 何しろ、手のひらサイズのパネル1枚で、コンビニおもてなしの屋根の上に設置されている全太陽光発電パネルの10000倍近い電力をうみだすという超高性能製品だったわけです、はい。

 これでは、コンビニおもてなしの電気製品に直結しましたら充電器は一瞬で一杯になり、下手をしたら過電流でショートしかねません。

 ……もしこの太陽光発電パネルを、このまま僕が元いた世界に持って行くことが出来たら……ひょっとしたらエネルギー問題がすべて解決出来てしまうんじゃないかって思えてしまうんですけどね。
 例え、そこまで出来なかったとしても、スア製太陽光発電パネルが生み出す電力を売電するだけで相当な額が儲かるのではないかと思ったりもした物ですが……

 そんなわけで、この製品は一時お蔵入りになっていたのですが……

 実はこのスア製太陽光発電パネルなんですが、今、その用途を変えて復活しているんです。

 スアが取り組んだのは、このスア製太陽光発電パネルが産みだしたエネルギーを保存する手段の構築でした。
 ただ、電気として貯蔵するだけでは、すごくもったいないわけです。
 なにしろ、コンビニおもてなしの中で電気を必要としているのは本店だけですからね

 そこでまず、スアは太陽光発電パネルで発電されるエネルギーを電気から魔力に変換しました。
 スア曰く
「……結構ロスが出たけど……うまくいったよ」
 とのことでした。

 で、エネルギーが電気じゃなくて魔力になってしまえば、その貯蔵方法は1つ。
 魔石に、そのエネルギーを注ぎ込めばいいわけです。
 
 ……え~、仕組みがよくわかっていない僕がいとも簡単にそう言っていますが……実際はこれも単純ではないんですよね。

 と、いうのもですね……

 魔石の中に魔力をためる事が出来る量は、その大きさに比例しているそうなんです。
 つまり、魔石が大きければ大きいほど、大量の魔力をためることが出来るわけです。

 ただ……そんな大きな魔石がですね、そんなにほいほいあるわけではないんですよ。

 と、いいますのも、そんな大きな魔石ともなりますと、みんなが探し求めるわけです。
 何しろ、魔石は大きければ大きいほど高値で取引されますからね。
 そんなわけで、魔石の鉱脈は、すでに大陸中掘りまくられていまして、あらかた枯渇気味なんだとか。
 それでも、魔石の鉱脈はゆっくり再生していきますので、何十年・何百年後に、枯れたと思われていた魔石鉱脈から再び採掘出来るようになることも無きにしも非ずなんだとか……

 と、まぁ、普通の魔石を使用しようとしますと、いろいろ問題が起きるわけです。

 そこでスアが利用したのは、人工魔石でした。

 この人工魔石は骨人間(スケルトン)の骨から精製出来るそうなんです。
 骨人間は、スアが召喚出来る最低ランクの魔獣です。
 その魔獣達は日の光に当たらなければ骨が風化するまで働き続けることが出来るんです。
 で、日の光に当たってしまうと、砂になってしまうんですよね。

 で

 スアは、骨人間を召喚して魔法で粉々にし、また召喚しては粉々にし……その作業を繰り返してですね、その粉を魔法で圧縮して人工魔石を精製したんです。
 日に当たって砂化したものを使用してもいいそうなのですが、この方法の方がちょっとだけ質がよくなるそうなんです。
 
 で、スアによりますと
「……骨人間1万体で、特大人工魔石2,3個分かな」
 とのことでした。

 なお、この骨人間精製作業には、パラナミオも毎日協力しいてくれています。
 パラナミオはサラマンダーの龍人でして、骨人間を召喚出来るんです。
 地道に練習を重ねていたおかげで、今では日に2千体は召喚出来るまでになっているんです。
 で、その骨人間をスアに提供してくれているんですよ。
 ただ、出来のいい骨人間が召喚出来てしまうと
「……あの、この子は置いておいてもいいでしょうか?」
 と、パラナミオが言うものですから、そういった骨人間達はもっぱらコンビニおもてなしの地下で作業にあたってくれていたりします。

 ちなみに、この特大人工魔石1個で、スア製太陽光発電パネル1枚が晴れの日1日で生産する魔力を貯めることが出来るんだそうです。

 この人工魔石ってスア以外の魔法使いでも精製することは出来るそうなのですが……人工魔石を作っても、そこに魔力をためないとお金にならないそうなんです。
 その労力がまた大変なそうなんですが、そうまでして魔力を貯めたとしても人工魔石は天然物よりかなり売買価格が安いそうでして……そのため、まず誰も作成しようとしないらしいんです。

 そんな中、スアが精製し、スア製太陽光発電パネルで魔力を充電した人工魔石でですね、まずはコンビニおもてなしの各本支店で使用している魔力をまかなうことにしてみました。

 コンビニおもてなし各支店では

 店内を照らしている魔法灯
 魔導レジ
 店内の温度調整魔石

 とまぁ、こんな感じの魔石商品を常時使用しているわけなんですけど、これをこの人工魔石の魔力でまかなうようにシステムを変更してみたわけです。

 今まで、魔石をセットすることで電気をともしたり、お金を精算したり、温度調整をしていたシステムを、店の地下に設置した人工魔石から魔力を直接供給するシステムに、スアの魔法で切り替えてもらったところ、今のところ全支店で問題なく機能しているようなんです。

「どうやら、次の段階に進めそうだね」
 支店からの報告を聞いた僕は、スアと顔を見合わせながら頷きあっていました。

 えぇ、コンビニおもてなし各支店の魔力を人工魔石で補ったのはあくまでも試験だったんです。
 本番はこれからなんですよね。

「ところでスア……今日のお昼頃どっかに行ってなかった? 魔法の絨毯で出かけてたような……」
……うん、ドンタコスゥコに頼まれて、呪いを解きにいってた、の」
「そっか……で、無事出来たのかい?」
「……うん、ばっちり……ついでに怪我人も治して来た、よ」
「そっか、さすがスアだね」
「……えへへ」
 僕の言葉に、スアは嬉しそうに微笑みました。

 そんなスアと一緒に、僕は次の計画を話し合っていきました。

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